ポスターとXの投稿に惹かれて映画館へ
武井佑吏監督の映画『本当にあった話(の話)』を観てきました。監督は脚本と編集も手がけています。
観る前から、ポスターやチラシのビジュアルがめっちゃ強烈だったんです。タイトルも「なんだこれ」となる感じで、ずっと気になっていました。
そんなときに、Xで「この映画はなんだ」「こんな体験初めてだ」という投稿を見かけたんです。
なんだそれ、めっちゃ気になるやん、と。これはもう映画館に行かないと、ということで観てきた訳です。
豪華なキャストと、知らなかった主演
チラシの時点で、キャストがめっちゃ豪華だなと思っていました。佐々木蔵之介さん、小池栄子さん、黒木華さんなどが出られています。
皆さん演技がお上手なので、出てきた瞬間に「あっ」となりつつ、ちゃんとその役にしか見えないんです。佐々木蔵之介さんについては、僕は若干思うところがあるんですけど、、まあそれはいいことにします。
主人公を演じているのは水上恒司さん。調べてみると、ドラマの『怪物』や『MIU404』、映画の『死刑にいたる病』などに出られているそうです。
ただ、僕は正直あまり知らなかったんです。それを狙ったキャスティングなのかはわかりませんが、知らなかったことがまさに功を奏したと思っています。
「なんだこりゃ」と思わされる映画体験
観終わって、確かに「なんだこりゃ」と思いました。タイトルの通り、本当にあった話の話なんです。
もうタイトル通り変なんですよ。変でした。
しかもそれが、監督の狙った通りに描かれている。うわっ、やるやんけ、こんなことを映画でやってくるのか、と。まんまとしてやられました。
こういう表現もできるのかと、面白かったです。この企画がいい、脚本が面白い、ということで、これだけ豪華なキャストが集まったんじゃないかと思います。
そして、これは劇場で観ることに意味がある映画です。ぜひ映画館で体験してほしいんです。
誰と観に行くかでいうと、ちょっとややこしい映画なので、できれば一人で行くのをおすすめします。映画好きな方には特に。
あまり映画が好きじゃない友達やパートナーと行くと、内容的にちょっと危険かなと思います。お子さんと一緒に観る映画でもないので、やめておいた方がいいです。
映画好きが一人で観に行って、「うわぁ、そういうことか」となる映画なんですよね。
監督は以前に賞を取られているそうですが、過去作は全然知らなくて。ドキュメンタリーやテレビのディレクターをされていた方で、本作がたぶんメジャーデビュー作のようです。
個人的にはこういうの大好きなので、いいぞ、もっとやれ、と思っています。そのためにも、本作がもっと話題になってもいいのになあと思いつつ観ていました。
ここからネタバレあり:すべてはラストシーンのために
ここから先はネタバレありで書きます。まだ観ていない方は、ぜひ映画館で観たあとに読んでくださいね。
何よりラストシーンです。この映画は、ラストシーンのためにある構成、作り、演出、ストーリーでした。最高でしたね。
多田くんも最高でした。そして、スケープゴートでしたね。
そもそもこの映画自体が、いろんなことへのカウンターパンチになっているんです。
権威だったり、やれコンプライアンスだ、男尊女卑だ、と自分の思い込んだ意見を通したい人のややこしさだったり。社会風刺映画なんだな、と思わせておいて、です。
もちろんそれもメッセージではあるんですけど、それを全部明るめに出していく。そもそもキャッチコピーが「化けの皮剥がれちゃってますよ」ですからね。なんて意地悪な、クレバーな作品なんだと。
結局、一番クレバーで、一番いい立ち回りをしていたのは、黒木華さん演じるメラさんだった。あのオチです。
最後のメラさんの笑顔の攻撃力の高さ。ああ、なるほどなぁと震え上がりました。
もう快感すら覚えて、拍手、スタンディングオベーションです。こんな豪華なキャストが集結するのも納得で、ニヤニヤが止まりませんでした。
何重にも書き換えられる「本当の話」
作り自体も面白いんです。タイトルから複雑な話なんだろうなと思っていたら、やっぱり構造も複雑でした。
フィクションである映画の中で、実際に起きた事件をもとに、作家さんが描きたいように描く。そこからして「本当の話じゃない話」になっているメタファーなんだと思います。
それをさらに舞台化して、演出家がまた描きたいように描くという思惑が重なる。キャスティングされた素人は、自分に都合のいい事実を信じ込んで、どんどん狂っていくんです。
そこには『キングオブコメディ』や『ジョーカー』のオマージュも入っていて、いいんですよね。出てくる人が狂っていき、周りが困惑していく、あの構図です。
でもその構図さえも利用して、最後のメラさんの笑顔に集約していく。本当のクレイジークレバーは誰だったのか、という気持ちよさです。
迷惑系YouTuberや暴露系YouTuberが、いろんな権威をめくっていく今の時代。それを表したメタファーでもあると思います。
かなりトリッキーで戦略的な、超ブラックユーモアコメディ映画です。すげえ人が出てきたなと嬉しくなっちゃいました。
ちょっとメタ的でややこしいので、監督のメッセージとして受け取れるかどうかで、観たあとの会話が「これ何が伝えたかったん?」になりかねません。一緒に行く人を選んだ方がいいと書いたのは、そういう理由です。デートで観る映画じゃないですね。
エンディングのノリノリの曲や、打ち込みの音楽の使い方も良かったです。
最近観た別の映画とも、描き方は違うのに根本のメッセージが近いと感じました。どの作品かはネタバレになるので言わないですが、社会にメッセージを発したい人たちが、偶然同じような手法に行き着いているのかなと。
そこが時代を象徴しているようで、すごく刺激的でした。僕もそのメッセージには共感しますし、問題視もしています。とはいえ、療養中のおじさんで専業主夫の僕には、個人では何もできなかったりするんですけどね。
観た方とめっちゃ喋りたいです。皆さんはどうでしたか?
時間が経ってからでも、サブスクで観てからでも全然いいので、感想を送ってもらえたら嬉しいです。Xのハッシュタグやリプライだとネタバレになっちゃうので、DM、Eメール、マシュマロなどでお願いします。
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まとめ
『本当にあった話(の話)』は、何重にも書き換えられる「本当の話」と、社会風刺に見せかけた構造そのものを使って、ラストシーンに全部を集約させる映画でした。僕はまんまとしてやられて、快感すら覚えました。
- ややこしい作りなので、映画好きが一人で映画館で観るのがおすすめ
- ラストのメラさんの笑顔に、すべてのカウンターパンチが集約されている
- 『キングオブコメディ』や『ジョーカー』の構図さえも利用した、超ブラックユーモアコメディ
- 知らなかった主演・水上恒司さんのキャスティングが功を奏していた







