遊びが仕事になる時代の入り口
この回のきっかけは、関口さんがThreadsに書いた投稿でした。テーマは「AI時代の街づくり」です。
種市さんが特に気になったのが、あるタイトルだったと話します。
これいいんですよ、タイトルが。遊びが仕事になる時代がいよいよ本格的にやってくる。
関口さんは、この投稿は種市さんを想像して書いたと明かします。コロナ禍以降の最適化の流れの先で、AIが仕事を担うとき、人間に残されるのは好奇心や偏愛、そして体を動かして何かを楽しむことだ、という内容でした。
まだね、その会社によって、人によってちょっとわかんないけど、リアルに多分やることなくなるなっていう気がするよね。
AIが置き換える仕事、環境音楽の例から
関口さんは、身近な例として飲食店の音楽を挙げます。いい雰囲気を作りたくても、著作権の問題で流せる曲は限られてしまうという悩みです。
以前は、店の雰囲気に合ったコンピレーションを作ろうとするとお金がかかりました。今は著作権フリーの楽曲をオリジナルで生成する人に頼んでいるといいます。
さらに関口さん自身も、最近はAIで楽曲を作ることにハマっていると話します。
著作権フリーとは、音楽などの著作物を、権利者の許可なく一定の条件で自由に使える状態のことです。有線放送や商用利用のトラブルを避けるために使われます。
AIで作った曲は、その曲を作った人に著作権が帰属するという扱いになるそうです。種市さんは、その曲がとても良く、SNSで流したほどだったと振り返ります。
ここで関口さんは、環境音楽を作る仕事もAIで代替されうる、と話を戻します。
そういうのもさっき言ったみたいに、じゃあその環境音楽を作る人っていう、その仕事が、じゃあもうAIでいいじゃんっていう。ことになっていっちゃったり、いろんなことがさ、置き換わっていくじゃない。
種市さんも、自分のようにその類のものに興味がなかった人間でもChatGPTやGeminiを便利に使えている、この短期間の変化を思うと自分の仕事もどうなるのかと感じると語ります。
農業革命、工業革命、そして知的産業革命
関口さんは、コロナ禍でリモートワークが一気に一般化した経験を振り返ります。ビデオミーティングが失礼だとされた価値観が、今では当たり前になったという変化です。
このレベルの多分変わり方じゃない気がするんだよね。その、このAIがもっともっと仕事においても、生活においても置き換わっていくものっていうのがある。
そのうえで、不動産や住まい方、オフィスの形がどう変わるかを問います。コロナのときですら、渋谷の大きなビルでも出社率が1割という状況があったと例を挙げます。
関口さんは、歴史の大変革を調べたと話します。最初が農業革命、次が工業革命、そして今は知的産業革命と言われるほどだといいます。
知的産業革命とは、AIによって知的労働が自動化・代替されていく変化を指す言葉として使われています。農業革命、工業革命に続く大きな転換とみなす見方です。
人間が考えてきたことや作ってきたこと自体が変わると、やらなくていい人が増える、その人たちは遊びに行くのではないか、というのが関口さんの見立てです。
ここで関口さんは、賛否があるとしつつホリエモンの発言を紹介します。大谷翔平は社会的貢献をしていないという趣旨の発言です。
批判は出るだろうとしながらも、関口さんはその根底にある論理には一理あると考えます。かつて農業や高度経済成長で忙しかった時代には余暇がなく、時間が余ったことで余興が産業になっていった、という文脈です。
ホワイトカラーの仕事はどこまで代替されるか
小畑さんは、自分たちがITでソフトウェアを作る立場から、今起きていることの大きさを語ります。
もう今コード書いてないんですよ。昔は手で書いてた。マジで書いてないです。もうほぼ書いてない。で、それはもうAIが書いてる。
書く内容を指示し、出てきたものをレビューする形に変わり、さらにエンジニアがいなくても作れる方向に進んでいるといいます。ビジネス側の人でも、こういうものを作ってほしいと伝えればすぐできてしまう状況です。
SaaSとは、Software as a Serviceの略で、会計や人事、チャットなどのソフトを、買い切りではなく月額などで利用するサービス形態です。
小畑さんは、グローバルの株価で「◯◯ is dead」という言葉が語られていると紹介します。例えば「SaaS is dead」です。今まで外部から月額で買っていたようなソフトも、すぐ作れるようになりつつあると説明します。
その結果、ソフトウェア系の会社の株価が暴落しているといいます。コンサル会社も同様で、調べて戦略を描くような仕事は代替されうると話します。
要らねえじゃんみたいな。特にその何かを調べるとか、調べた上で戦略を描くとか、そういうコンサルティングファームってものすごいお金取って今までやってたんですけど、そんなもん全部できちゃう。
小畑さんは、ホワイトカラーの仕事の多くがAIで代替されるという関口さんの見立てに強く同意します。やることがなくなった人が新しい遊びを見つけ、それが産業になってきたのが歴史の流れだと語ります。
一方で、飲食のような仕事は最後まで代替できないだろうと小畑さんは付け加えます。何かを運ぶロボットは出ても、ご飯を作ることはAIには置き換わりにくいという見方です。
世界から見ると東京はまだ安い
話は街や不動産へ移ります。種市さんは、東京の地価も賃料も上がり続けている現状を挙げ、地方でもどこでも働ける時代のはずなのに都心は高いままなのはなぜかと問います。
関口さんは、高いか安いかは何と比較するかによると答えます。人口や都市別GDPで同規模の都市と比べると、東京はまだ安いという見方です。
だってニューヨークとかさ、パリとかさ。人口とか、その都市別のGDPとかいうところで、同じような、その規模感で比較していくとまだまだ安い。
情報の移動が瞬時にできる今、東京にいてもニューヨークにいても得られる情報レベルは大きく変わらない、と関口さんは言います。場所の均衡化が進むなかで、比較すると東京は安く、投資と投機の両方のお金が入ってきているため少しずつ上がっているという分析です。
続けて関口さんは、数字だけでは測れない感覚的な話として観光客数を挙げます。日本の観光客数はようやく四千万人ですが、都市別GDPで世界一の経済活動を考えると少ないという指摘です。
比較として、パリは八千万人、ニューヨークやシンガポールはもっと多いといいます。東京のほうがコンテンツも多く、一度や二度では飽き足らないはずだと関口さんは話します。
オーバーツーリズムと言われるものの、グローバルに見れば数としてはまだ少ない、というのが二人の見方です。京都や大阪への局所的な集中が問題視されているだけで、多拠点化して平坦化すればまだ伸びると関口さんは語ります。
気づいていない価値と、雪や雑居ビルという資産
関口さんは、世界がようやく日本を知り始めた段階だと考えています。安倍政権前は観光客が二千万人にも届かず、街で外国人を見ることも珍しかったと振り返ります。
先週訪れた白馬や志賀高原のレストランでは、気づくと九割が外国人だったといいます。種市さんも、外国の方がほとんどだった場面が多かったと同意します。
関口さんは、価値は初めて体験して比較できたときに生まれると説明します。ハワイやニューヨークも、行ったことで初めて良さがわかるという例です。アドレスホッパーが増え、国境を越えて比較する人が増えるほど、日本の良さに気づく人も増えると話します。
アドレスホッパーとは、定住する家を持たず、各地を移動しながら暮らす人のことです。国境を越えて拠点を変える働き方・生き方が広がっています。
小畑さんは、自分たちが自分の価値に気づいていない点に注目します。外の人の評価と自分たちの評価がずれていて、気づいたら土地が買われている、という構図です。
ないものが欲しいっていうのが多分欲求の本質だと思うんだよね。ないから欲しいわけでね。あればいらないわけだよね。だからないものが日本にはたくさんあるっていう、そういう逆説的な、その視点に気づけるかどうか。
その象徴が雪だと関口さんは言います。雪のない国の人にとっては、スキーが目的でなくても雪の中にいるだけで体感価値が高いのです。白馬の岩岳では、ハイヒールでリフトに乗り、雪景色を見ながらコーヒーを飲むために片道何十万もかけて来る人がいると話します。
小畑さんは、ケニアでゾウを見て感動した自分の体験を挙げます。しかしケニアの人にとっては毎日見る当たり前の光景です。価値は住む場所によって逆転するという話に、二人は納得します。
関口さんは、コンビニのおにぎりやラーメン、電車が綺麗なことや財布が返ってくることなど、目に見えない付加価値も外国人には魅力に映ると語ります。円安による貨幣価値のギャップも、その体験を後押ししていると付け加えます。
リゾートの価値化は、ニセコから白馬、湯沢、妙高へと広がっていると関口さんは言います。海側ではハワイやバリ島が例で、バリのチャングーは何もなかった場所が数年で大きく変わったといいます。
ニセコ
ジャパウとして雪の価値が最初に顕在化
白馬・湯沢・妙高
雪の価値が飛び火して各地へ拡大
海側リゾート
ハワイ、バリ島のチャングーなどで同様の変化が進行
そして関口さんが最近面白いと感じているのが、都市の中の雑居ビルです。新築ビルの稼働率が高い一方で、築年数の経った小中規模のビルは稼働率が落ちているといいます。
東京は面積が狭く、建築規制がヨーロッパの許可制と違って申請制で緩いため、戦後にビルがどんどん建てられました。その結果、Googleマップで見ると道が狭く入り組んだカオスな街になっている、と関口さんは説明します。
市街化区域とは、都市計画法で市街化を進めるとされた区域のことです。建物を建てる際は許可ではなく建築確認申請で足り、比較的建てやすいのが特徴です。
しかし関口さんは、そのカオスさこそ面白さだと捉えます。東京の雑居ビルは細く上に伸び、横にも上にも広がる街は世界的に珍しいと都市大学の教授から聞いたといいます。
わかっちゃうことのつまんなさってあるじゃん。どこに何がありますよって言われた瞬間、どこか便利なんだけど、どこかつまんないというか。
外国人の友人からも、東京の猥雑さや迷路感、分かりづらさが面白いという声を聞くそうです。関口さんは、雑居ビルという一つのピースを自分たちなりに作っていくことが、これからの東京の魅力づくりとして面白いと語ります。ビジネス的にもギャップが効くという見立てです。
まとめ
AIがホワイトカラーの仕事を次々と代替していくなかで、人間に残るのは好奇心や体を動かす楽しみだという見立てが語られました。そして世界から見れば東京はまだ安く、雪や雑居ビルの雑多さといった、自分たちが気づいていない価値に光が当たろうとしています。
- AIはコードやコンサル、環境音楽の制作まで代替しつつあり、ホワイトカラーの仕事が大きく変わっている
- 農業革命、工業革命に続く知的産業革命で、やることが減った人は遊びに向かい、それが産業になると予測される
- 都市別GDPや他都市との比較では、東京の不動産や観光の価値はまだ安く、伸びしろがあると考えられる
- 雪のない国の人にとっての雪のように、価値は当たり前の日常に隠れており、外からの視点で気づける
- 入り組んで上下に伸びる東京の雑多さや雑居ビルは、便利さとは別の「探す楽しみ」として資産になりうる
