価格軸で決まるホテルのカテゴリー
この回はGREENINGの関口正人さんを迎えたゲスト回の3本目です。名古屋にできた「BASE LAYER HOTEL」の話から始まります。
種市さんはよく旅先でビジネスホテルに泊まると話します。温泉やサウナのあるドーミーインなどに泊まる中で、ベースレイヤーホテルに新しい風を感じたそうです。
小畑さんが「ベースレイヤーホテルってビジネスホテルなんですか?」と質問すると、関口さんは業界的なカテゴリーの話を説明します。
これは業界的な話でいくと、カテゴリーの設定の仕方、呼び方がある程度決まってるんですよ。価格帯でバジェット、ビジネス、シティ、ラグジュアリーみたいに、その価格帯でこのカテゴリーねっていうのは決まってます。
この分類でいくと、ベースレイヤーはビジネスホテルカテゴリー、マスタードはビジネスとシティの中間ぐらいだと関口さんは話します。
ただしこれはあくまで価格という一つの目線で縦割りに切られたものだと言います。
部屋が主に小さめで価格帯は下。ビジネスカテゴリー
部屋が少し広く価格帯が上。ビジネスとシティの中間
「街を楽しむカルチャーホテル」という横軸
関口さんが考えたのは、価格で分ける縦軸だけでなく、価値観や感覚で分ける横軸のカテゴリーがあってもいいのではないか、ということです。
和風、静かなホテルといった感覚的な軸のなかに、「その街を楽しむカルチャーホテル」という捉え方を置きたいと話します。
俺とか種さんも別にビジネスホテルにビジネスとして使ってるわけじゃないわけ。ってことはビジネスホテルじゃないじゃんと。その価値観にもうちょっと寄せたカテゴリーブランドを意識して作ってみようっていうのが、マスタードだったりベースレイヤーだったり。
ここでいうカルチャーとは、いい感じの音があるとか、コーヒーがおいしいといったニュアンスの部分です。
関口さんはビジネスホテルの朝ごはんも好きだと断りつつ、ただそこで友達と待ち合わせて一杯飲もうという価格帯にはならないと言います。
一方でカルチャーホテルなら、食事に行く前にロビーで一杯飲むといった過ごし方ができる。それは街を楽しむ出発点や帰着点、中間点になり得ると話します。
種市さんは、それを「スタイルを作るホテル」だと受け止めます。
昔はこの服だけ買って、実は家で食ってるのはカップラーメンとか。でも大人になっていくと、今日この格好でこのバランスの時って、じゃあ街のコーヒー屋さんで買おうとか。その中でホテルも、ちょっと居難いなみたいな時に、こういうホテルがあると成立するというか。
ホテルが売っているのは「時間と空気感」
種市さんは、ベースレイヤーで見たレストランや、地元の若手と組んだ仕掛け、スピーカーのつながりに触れ、「ありそうでできない絶妙なライン」だと話します。
これに対して関口さんは、測れたらいいと思う指標として「空気感」を挙げます。
ホテルって何を売ってるのかって言った時に、時間と空気なんだよね。食べるものでもないし、持って帰るものでもないし、結果的にはそこで滞在する時間と空間、空気感じゃん。
関口さんは焼き鳥屋を例に出します。同じ鶏を同じ炭で焼き、同じタレをつけても、老舗のピシッとした店とダラッとした店とでは体感の満足度が違う、それも空気感だと語ります。
カルチャーホテルで言うカルチャーも、デジタルのパキッとした音より、アナログのいい音が流れる空気感の違いだと言います。
その空気感の違いって表せづらいじゃない。体感値としてわかってる人は絶対そっちの方がいいなと言えるけれども、これをプロモーション的に伝えるのってちょっと難しかったりするじゃん。でもそういうのが測れたりしたらね、分かりやすいなと思うんだけど。
ベースレイヤーの狙いと客層
小畑さんが今後の展開を尋ねると、関口さんはベースレイヤーがビジネスカテゴリーであることを説明します。日本全国でビジネスホテルはボリュームが大きく、ニーズも大きいため、機会があれば拠点を増やしていくと話します。
客層についてはエリアによると前置きしつつ、名古屋の状況を語ります。名古屋は一般にインバウンドが少ないと言われますが、実際には多いそうです。
韓国や台湾など、情報感度が高くカルチャーへの興味が強い層や、近県の若い層が使うケースが多いと言います。名古屋の他のビジネスホテルの主要ターゲットとは、いい意味で違う層だと話します。
種市さんは初期のエースホテルを引き合いに出します。ニューヨークで同じ価格帯のホテルがあっても、みんなエースに行きたがったと振り返ります。
意外と不便だったりするんだよ。部屋はそんなに快適性があるわけでもないし、廊下とかも暗かったりして。でもあの空気、まさに空気をちょっと浴びたいというか、出張した時にそこにいて出るのがいいみたいな。
一方で関口さんは、エースは好きだが2回目は行かないという感覚もあると打ち明けます。
俺もエースは好きなんだけど、でも2回目行かないなっていう感じもあるわけ。なんかうるさいし、そもそも。俺、眠りにセンシティブだから、寝れない。本当に寝れない。
ロビーやレストランに常に人が入り、廊下を歩く人の声も大きい。バイブスの強さと居住性や快適性は相反する部分があると関口さんは整理します。
「肌着」としてのベースレイヤー
関口さんは、洒落ているから不便でもいい、という割り切りも一つの選択だと認めつつ、ベースレイヤーはその名の通り「肌着」だと説明します。
ベースレイヤーって言ってるのは、いわゆるレイヤリングの肌着だからさ。肌着がしょぼいと山登る時は大変なことになっちゃうわけじゃん。街を楽しもうと思った時に、そのベースがしょぼいと楽しめないじゃんっていうコンセプトになるわけ。
つまり街を楽しむための基本性能です。ちゃんと眠れる、荷物が快適にパッキングできるといったユーザビリティを、一方でしっかり押さえるという考え方です。
洒落ているから多少不便でもいい、としてしまうとターゲットも絞られてしまう。だからこそ寝る、過ごす、少し仕事をするといった品質を押さえたうえで、個性とのバランスを取っていくと語ります。
ホテルが混み合う時代の収益構造
小畑さんが、ビジネスホテルの中で似た切り口の競合は多いのかと尋ねます。関口さんは個別には知らないと前置きしつつ、業界全体の状況を説明します。
コロナ後、観光客数が年間四千万人を超え、日本の観光産業は新しいステージに入っていると言います。不動産投資の行き先としてホテルにニーズが集まり、プレーヤーが増えているそうです。
多くが「成功法を取るならどのカテゴリーか」と考え、まずビジネスカテゴリーは硬いとなる。その結果カオスマップが形成され、似た切り口はいっぱいいると話します。
関口さんはもう一つ、収益構造の話をします。ホテルの収益の中で比率が大きいのがOTA手数料です。楽天トラベルやBooking.com経由の予約で、部屋代に対して10〜25%程度かかると言います。
だからブランドマーケティングでベースレイヤーを好きになってもらう右脳的な取り組みと同時に、OTAに頼らず使ってもらう左脳的な取り組みも重要になると語ります。
例としてアパの「アパ直」を挙げ、ポイント還元率が高く現金でキャッシュバックされる仕組みがモチベーションになると説明します。こうしたCRM的な施策は店舗数が多いほどやりやすいため、拠点を増やしながら考えていくと話します。
OTA is deadとAIエージェント時代の宿選び
小畑さんは、以前の回で触れたAIの話につなげます。今後は「OTA is dead」と言われ、これまでのように予約サイトで日付を入れて探すやり方が変わるかもしれないと指摘します。
これからはChatGPTのようなAIに宿選びを任せる場面が増える。すると、どこへ行くのか、いくらぐらいか、誰と行くのかを聞かれ、その答えに応じてホテルのラインナップが提示されるという流れです。
やっぱ結局、人と違うことをやんないとラインナップ出てこないわけですよ。安けりゃいいっていうのは込み入ってますと。ちょっと違う感じにしないとやっぱり出てこない。
種市さんも、「おしゃれで」といったプロンプトを入れた時にグッと来る個性が重要になると応じます。混み合っていない領域で個性を出すことが、AIに選ばれる条件につながるという話です。
ちょっとこれからね、ビジネスホテルが面白くなっていくという。いろいろチェックしてみようと思います。
まとめ
この回では、ホテルを価格の縦軸だけでなく「街を楽しむカルチャー」という横軸で捉える発想が語られました。ホテルが売るのは時間と空気感であり、AIエージェント時代には人と違う個性こそが選ばれる条件になっていく、という見立てが示されました。
- ホテルは価格帯でバジェット・ビジネス・シティ・ラグジュアリーに分類される縦軸のカテゴリーがある
- マスタードやベースレイヤーは、価値観で捉える「カルチャーホテル」という横軸を意識して作られている
- ベースレイヤーは「街を楽しむための肌着」として、基本性能とカルチャー感を両立させる
- ホテル収益ではOTA手数料の比率が大きく、直予約やCRMをどう設計するかが課題になる
- AIが宿を提案する時代には、混み合っていない領域で個性を出せるかが選ばれる分かれ目になる
