「WE THINK ABOUT Us」6つの言葉の種明かし
番組ではまず、小畑さんがGREENINGのホームページで見つけた「WE THINK ABOUT Us」という6つの言葉に感銘を受けたところから話が始まります。
この6つは、会社のバリューにあたるような言葉です。「真逆と思えることが、実はつながっている」「都心だから、ローカルだから、ではなくて」「食を大事にする人こそセンスがいい理由」「ビジネスと環境をいかにバランスさせるか」「自分の芝生も青いかもしれない」「つくれないからこそ価値がある」の6つが並びます。
小畑さんは、この言葉がGREENINGの実際の事業を的確に言語化していると感じたと話します。中でも1番目と6番目が特に響いたそうです。
ところが関口さんは、この言葉が自分の口から出たものそのものではないと明かします。
先に種明かしするね。いろんな取材を受ける場面ってあるじゃない。そういう時に自分の中で、その都度都度言葉にするものが、メディアだったりタイミングだったりで違うわけ。これはちょっとまとめたいなと、ずっと思ってたの。
そこで関口さんは、マガジンハウスの山村さんという編集者に相談します。ブルータスやポパイなどカルチャーの文脈もわかり、文章に長けた知り合いだったといいます。
三、四時間、五時間ぐらい話したかもしれないね。「関口さんの会社ってどんな会社なんですか」とか、雑談的にバーッと話して、それを結果的に六個にまとめてもらった。
つまり、最初から6つ言いたいことがあったわけではなく、雑談の中から抽出された言葉だといいます。作られたのは5年ほど前のことだそうです。
だから元のアイデンティティは僕なんです。文章にしてもらった。
小畑さんも種市さんも、ビジネス出版に頼むとビジネス文章になりがちなところを、関口さん自身の言葉のまま綺麗にまとめている点を評価します。
都心が高いのは真逆?地価をめぐる価値観の変化
最初の言葉「真逆と思えることが、実はつながっている」について、関口さんは不動産を例に語ります。
関口さんが持ち出したのは「地価公示価格」の話です。
バブルの頃は、銀座・鳩居堂前の地価がニューヨークを超えるとして、年に一度ニュースになっていました。しかし今では、地価公示価格を気にする人はほとんどいないといいます。
関口さんが注目するのは、日本では地価が最も高いのが銀座や麻布、京都など都心だという点です。一方、海や山の素晴らしい景色が広がる場所は、田舎という括りで安くなります。
一番分かりやすいのはロサンゼルスなんだけど、ダウンタウンと言われてる都心よりも、素晴らしいロングビーチとかマリブとかの方が高い。なんでだろう。真逆なんだよ。
この違いを関口さんは、物質的な成長から文化的な成長へと社会が成熟してきたことと結びつけます。
物質的な豊かさを望んでいた時代は、都会に住んで働き遊ぶことがよいとされました。しかし成熟してくると、自然の豊かさを求める人が増えます。
自然は限られています。限られたものにニーズが集まれば、値段は上がります。真逆に見えた「田舎は安い」という常識が、世界の流れとつながっていると関口さんは考えます。
小畑さんは、昔は価値観が多様化しておらず便利な都心が高かったが、今はサーフィンをする人にとっての海辺のように、人それぞれの価値が生まれていると受け止めます。
遊びと仕事がつながる嗅覚と、あえてサブカル側に立つ姿勢
種市さんは、関口さんの目の付け所や潮目を読む早さに触れます。地方をキャンピングカーで一緒に回ると、その感覚がリアルにわかるといいます。
いろんなとこの空き地の値段とか、テナントの状況とかを見て、パパパパッとね。遊んでるように見えて、酒飲みながら、ここの客単価がどうだとか、さらさらっとぼそぼそ言ってんの。
種市さんは、それが後でビジネスにつながっていると話します。仕事と遊びがつながっていて、右脳と左脳の使い方が独特で面白いといいます。
小畑さんも、盛岡へスノーボードに行った際の体験を挙げます。キャンピングカーでスキー場へ向かう途中、関口さんが「ここの土地いいな」と言い始めたそうです。
ただの山が見えるところですけど、「いやでもここから見た景色良くない?」とか言ってて。素人からすると、そこに建物が建つ想像があんまりできなくて。今の話を聞くとすごい腹落ちしました。
関口さんは、メインストリームとサブカルチャーの関係にも触れます。大手のホテルチェーンがマーケットを取れば取るほど、その反対側のポジションが空いてくるといいます。
メインがでかくなればなるほど、反対側のアンチポジション、サブカルチャーのここが空いてくるんだよね。うちの思想的なところでいくと、メインストリームをやろうとはあんまり思わない。
この姿勢を、種市さんはカウンターカルチャーだと表現します。小畑さんはルイ・ヴィトンとシュプリームのコラボに似ているか尋ね、関口さんはその次の段階の話だと補足しつつ、基本は同じだと答えます。
一方で関口さんは、会社自体は大きくしたいとも話します。もっと面白い仕事をしたい、仲間と豊かになりたいという理由からです。
会社はでかいけど、やってることはこの会社がやってることすらわかんないみたいな。そういう気持ち感はあるね。
種市さんは、この感覚がBEAMSにも似ていると振り返ります。世の中にない面白いものを見つけたいという出発点から大きくなりながらも、アングラな部分を持ち続けている点が共通すると話します。
下北沢RELOADに見る、効率とこだわりのバランス
小畑さんは、GREENINGが手がける下北沢のRELOADを例に挙げます。
小畑さんは、大手ならコーヒー屋にスターバックスを入れればいいと考えるかもしれないが、関口さんは絶対にそうしないと感じています。
そこにはイケてるコーヒー屋さんが入って、イケてる飲食店が入ってて、「どこで見つけてきたんですか」と聞くと「千葉のどこどこのカレー屋さんが」とか。効率を求めて儲ける話と、こだわりを持ってやる話のバランスをすごく考えてやられてるんだなと。
効率だけでは面白さが出ないため、こだわりとのバランスを取る。小畑さんはそこに学びがあったと話します。
作れないからこそ価値がある、経年美化という視点
続いて話題は、小畑さんが最も刺さったという「つくれないからこそ価値がある」に移ります。関口さんは日本の新築至上主義から説き起こします。
戦争に負けて貧しくなり、住むための家を物質的に求めた時代がありました。団地や公団ができ、やがてマイホームや新しい家を持つことが働く目的になりました。その感覚は今も脈々と続いていると関口さんは言います。
新しいものは技術的にも進化するため、決して悪いわけではありません。ただ、街が機械的でつまらなくなっていく側面もあると関口さんは感じています。火事に強く安いサイディングの外壁ばかりになれば、味気がなくなるといいます。
不動産って一回作るとそう簡単に壊せないんだよ。この景色とか情景が似ちゃうんだよね。街がつまんなくなってるっていう感じも、直に不動産業をやってると感じるわけ。
一方でヨーロッパは、そもそも壊してはいけない仕組みだといいます。建て替えもいじることもできません。
アメリカの古いホテルは、床がギコギコして暑いし寒いし、居住性は微妙です。それでも街並みとしては好きだと関口さんは話します。個人のものでありながら、社会性を帯びて社会の価値になっているといいます。
古いものは作れません。当時の素材が手に入らない、当時の職人がもういないといった理由からです。関口さんは、残した方がいい価値と、作り替えてもいい部分を考えて事業に取り入れたいと語ります。
そのうえで関口さんは、京都・西陣で織物を続ける友人の言葉を紹介します。
その人は「経年美化」なんでね。経年劣化じゃなく経年美化。これは素晴らしいなって。
関口さんは、古い洋服や時計、車が好きなこととも通じると話します。当時なぜそのデザインだったのかという理由も含め、古いものに当時の文化やデザインのよさがあると考えています。
この視点は、実際にはコストもかかります。関口さんは沼津倶楽部や鎌倉のガーデンハウスを例に挙げます。
築50年ほどのガーデンハウスは、軽い気持ちで残そうとしたところ、建物を持ち上げて構造計算をやり直したら、店ができる前の構造補強だけで5000万円かかると告げられたそうです。
当時はまだ会社の年商でも三億とか五億ぐらいしかなかった時代に、基礎工事で五千万ですかって心折れそうになる。でも、やっぱ残した方がいいなみたいな。
新しいものを技術的にも追い求める。便利だが、街が機械的で似た情景になりやすい
古いものを劣化ではなく味わいと捉える。手間やコストはかかるが、社会的な価値になる
テクノロジーとリアルはどうつながるか
関口さんの話を受けて、小畑さんは自身のIT事業と対比します。小畑さんの会社は基本的にソフトウェアを作っています。
最近はAIの登場で、プロトタイプなら一日ほどで作れてしまうといいます。とても便利で恩恵も大きい一方、経年美化とは真逆の世界にいると小畑さんは感じています。
新しいものが売れるという感じじゃない、古くからあることによる魅力とか、積み重なってきた味が人の琴線に触れて売れるところは結構ある気がしてて。会社としても個人としても考えていきたいなと。
種市さんは、小畑さんの会社がシステムを作る会社だからこそ、関口さんのような会社とつながる意義があると話します。
僕らみたいな人たちがコネクトできるような構造やシステムを作って、建物やホテルの価値に気づいて広げることができたらいいんじゃないの。
小畑さんは、まさにリアルな世界とテクノロジーが結びついてほしいと応じます。余計なものを作らず、既にある価値を活かす方向性で話は締めくくられます。
まとめ
「WE THINK ABOUT Us」の6つの言葉を入り口に、真逆に見えるものがつながる視点と、作れないものこそ価値になるという哲学が語られました。地価をめぐる価値観の変化から経年美化という概念まで、新しさだけが正義ではない時代の価値基準が見えてきます。
- 「WE THINK ABOUT Us」は関口さん自身の雑談を、マガジンハウスの編集者が6つに言語化したもの
- 都心が高く自然が安いという常識は、物質的成長から文化的成長への移行とつながっている
- 大手のメインストリームが大きくなるほど、あえてサブカル側のポジションに立つ
- 古いものは作れないからこそ価値がある、劣化ではなく「経年美化」として捉える
- 既にあるリアルな価値と、テクノロジーを結びつけることがこれからの方向性
