日曜のコメント返しと今日の川上牧場
今日は12月14日の日曜日。天気は曇りのち雨、最高気温10度と、ぐっと冬らしい寒さになった日の配信です。
この日は2週間に一度の酪農ヘルパーを頼んでいる日で、川上さんはゆっくり休む予定。午前中に仕事を片付けて、所属するメタグリ研究所のゲノム編集セミナーに参加し、その後は子どもとお出かけする計画だそうです。
日曜恒例の「まったりゆったりコメント返し」の日ということで、寒くて出かけられない人はホットミルクを片手に、というやわらかい呼びかけから始まります。
ライブ配信で名前がついた子牛と、同業者の愚痴
まず紹介されたのは、YouTubeネーム・メイプルさんからのコメント。「あと2時間寝れるのに朝3時に起きなくちゃっていうお気持ちわかります」と、酪農家の朝の早さに共感が寄せられました。
TikTokライブで子牛が生まれた際、投げ銭をくれた人の中から名前をつけてもらう配信をしていて、「ミニポテトちゃん」という名前がついたそうです。
川上さんは、こうしたライブ配信が子牛の成長を通じてリスナーとつながるきっかけになると話します。
紆余曲折、その子のストーリーがリスナーの皆さんと繋がれるきっかけになるんじゃないかなと思います。
コメントにあった「同業者同士の愚痴も共有しましょう」という話題については、川上さん自身はあまり愚痴を言わないものの、酪農仲間の愚痴なら喜んで聞くとのこと。
愚痴で話すのが一番面白いじゃないですか。盛り上がるじゃないですか。
ありのままの酪農を見せることの価値
noteネーム・羊飼いの丸岡さんからは、ウェルビーイングとリトリートについての配信への感想が届きました。
農業体験や酪農体験として何か企画しなきゃと考えがちでしたが、呼吸を整えるという視点で見たら、ありのままにこそ価値があるんだなと気づかされました。
これを受けて川上さんは、酪農のSNSはどうしても「いいところ」を見せがちだと語ります。
きれいな牛や素敵な職業という面だけを見て興味を持って現場に入ると、実際はそれだけではない、というのが正直なところ。生き物を飼っている以上、生まれることもあれば亡くなることもあります。
牛が死んでしまう場面をSNSに上げるのは違うとしつつも、きついところや厳しいところも、ありのままに見せるのが大事なんじゃないか、と話します。
それでも、興味を持ってくれる人や応援してくれる人が一人でも増えてほしい、という思いがにじみます。
飼料添加剤ネッカリッチと、川上牧場の飼い方
TikTokのショート動画には「ネッカリッチ知ってますか?」という質問が届きました。酪農ヘルパーとしていろんな牧場を回る川上さんは、この商品を知っていると答えます。
ただ、川上さん自身は今はあまり飼料添加剤を使っていないそうです。コロナ禍で飼料代が高くなったこともあり、なるべく使わない経営を目指しているとのこと。
今与えているのはビタミン剤とミネラルくらい。牛がしっかり食べられる環境づくりや飼養管理、技術のほうに力を入れているそうです。
添加剤を避ける理由には、国際情勢に振り回されたくないという思いもあります。
戦争が起こってしまったりとか、為替の影響で原料が入ってこなくなったりとかすると、同じ商品名でも中身の原料が変わって効果が変わったりする。それで牛の調子も変わってしまう。
Instagramの出雲農園さんからは、堆肥を使ってくれているお礼のコメントも紹介されました。寒い冬の時期に堆肥の注文が来るのは嬉しい、と川上さん。
「牛乳が気持ち悪い」への丁寧な回答
ここからがこの回の中心。TikTokライブに届いた、名前を伏せての率直なコメントです。
牛の映像を見るだけで気分が悪くなります。子牛が飲むものを人が飲んで気持ち悪いです。人間は愚かな動物だと思います。
かなり強い言葉ですが、川上さんはまず「こう感じること自体は間違いでも異常でもありません」と受け止めます。そのうえで、事実を感情論ではなく冷静に整理していきます。
一つ目は、人間は自分が属していない生態系の行為を見ると、嫌悪感や不快感を感じやすい動物だということ。血液や内臓、体液に距離を取ろうとする本能は心理学的にも知られていて、気持ち悪いと感じるのはとても人間的だと話します。
二つ目は、人間が牛乳を飲み始めた理由。それは愚かだったからではなく、生き延びるための順応でした。
寒冷地で作物が育たない、水が汚染されている、栄養源が限られている。そんな環境で、高カロリー・高タンパクで保存加工もできる牛乳は、とても効率のいい食料だったのです。
三つ目は「子牛の飲むものを奪っている」という誤解について。現代の酪農では、子牛には初乳や育成用のミルクが与えられ、人が飲む牛乳は人用に管理・処理されたものだと説明します。
そもそも乳牛は、人と共生する中で搾乳されることを前提に品種改良されてきた動物で、自然界の牛とは全く違う存在。これは善悪ではなく、人間と家畜の関係性の結果だと川上さんは言います。
「人間は愚かか」という問いと、酪農家の葛藤
コメントの核心である「人間は愚かな動物か」という問いにも、川上さんは正直に向き合います。
正直に言うと、人間は賢くもあり、愚かでもある動物です。自然を壊し、動物を利用し、同時に守ろうともします。
酪農家である川上さん自身も、牛を大切にしながら、最終的には人の食に関わる仕事をしています。そこに葛藤がゼロな人間はいない、と言い切ります。
そのうえで、今の酪農はただ搾って儲ける時代ではないと話します。動物福祉、環境負荷、子牛の健康、牛の寿命、消費者の違和感——それら全てと向き合いながら、少しでもマシな形を模索し続けている産業だ、と。
最後に川上さんは、こう伝えます。牛乳を飲まなくてもいい、酪農を好きにならなくてもいい、映像を見て気分が悪くなるなら見なくてもいい。
それでも、なぜ今こうなっているのか、現場では何が起こっているのかを知った上で、距離を取るかどうかを選んでほしい。それが音声配信をしている理由だと語ります。
どんなコメントも受け止める姿勢
配信の終盤には「キモキモ」「めっちゃ気持ち悪い」といったリアルタイムコメントも。川上さんは「全然気持ち悪くないです」と受け流しつつ、こうした人にも牛乳を飲んでもらえるようになれば最高だと前を向きます。
一方で、軽い苦言も。わざわざコメントしなくてもいいこともあるのでは、とやわらかくツッコミつつ、それでも「好きにコメントしてください」というスタンスは崩しません。
どんどん、もう「うんこしたいです」も全然大丈夫ですよ。お答えしていきますから。
これでまた酪農の幅が広がったと思うと、私は楽しいなと思いますよ。
最後は、日曜の朝にお仕事や学校へ向かう人たちへ「いってらっしゃい。みんな牛乳飲んでね」という明るい挨拶で締めくくられました。
まとめ
強い言葉のコメントも頭ごなしに否定せず、感覚・歴史・産業の3つの視点から冷静に受け止める——酪農家の川上さんの姿勢がよく表れた回でした。違和感すらも業界を変えるきっかけになる、という言葉が印象的です。
- 「牛乳が気持ち悪い」と感じる感覚自体は人間的で自然なもの、とまず肯定している
- 人が牛乳を飲むのは愚かさではなく、生き延びるための順応と歴史の結果
- 現代の酪農は子牛から奪う構造ではなく、子牛には初乳や育成用ミルクが与えられている
- 酪農は動物福祉や環境負荷など多くの矛盾と向き合い続ける産業だと語られた
- どんなコメントも受け止め、知った上で距離を取るかを選んでほしいという姿勢が示された
