リスナーから届いた「牛乳パックのくぼみ」の質問
今回のお便りコーナーには、配信アプリ「ポポポ」からポポポネーム勘心さんの質問が届きました。
成分無調整牛乳のパックの凹みはなぜ作られたのでしょうか。いつからですか。世界の牛乳パックにも違いがあるのでしょうか。
スーパーやコンビニの牛乳売り場には、似たような紙パックがたくさん並んでいます。
お買い得だと思って手に取ったら乳飲料や加工乳だった、という経験を持つ人も多いのではないでしょうか。
川上さんは、そうした種類の違いを見分けるヒントのひとつが、パック上部の小さなくぼみだと話します。
くぼみの正体は「切り欠き」
この小さなくぼみには名前があり、「切り欠き」と呼ばれています。
ただのデザインではなく、はっきりとした役割を持った工夫です。
切り欠きの目的は大きく2つあります。ひとつは、目の不自由な方や文字が読みづらい方が、触っただけで牛乳だとわかるようにすること。
もうひとつは、切り欠きがある側の反対側が開け口になっている、という目印としての役割です。
これ子供とかでありますよね。開け方がわからないって言って、ガシャガシャってなって、ビリってなって、あーってなる。切り欠きがあることによって、その反対側が開け口になってるそうです。
つまり触るだけで牛乳だと分かり、どちら側から開ければいいかもわかる仕組みになっているのです。
目の不自由な方や文字が読みづらい方が、触るだけで牛乳だとわかる
切り欠きの反対側が開け口だと、触ってわかる
切り欠きがつくのは「牛乳」だけ
ここで大事なのは、切り欠きがつく対象です。
よく成分無調整牛乳につくと言われますが、正確には種類別表示で「牛乳」に分類されるものにつけられます。
川上さんによれば、牛乳と成分無調整牛乳はほぼ同じもので、会社によって書き方が違うだけだそうです。
一方で、成分調整牛乳や低脂肪牛乳、無脂肪牛乳、加工乳、乳飲料には基本的に切り欠きはつけません。
理由は、触った人が牛乳と間違えないようにするためです。
似た商品すべてにくぼみをつけてしまうと、区別するための印ではなくなってしまうからです。
切り欠きが生まれた背景と2001年という節目
切り欠きがつけられるようになったのは2001年からです。
背景には、農林水産省が平成5年度から7年度、つまり1993年から1995年にかけて行った、視覚障害者の商品へのアクセス改善に関する調査があります。
その調査では、紙パック飲料の中身がわからず不便を感じる声が多く、特に牛乳と他の飲み物を区別したいという声が高かったそうです。
その声を受けて、行政や業界、団体、関係者が検討を重ね、2001年から牛乳パックに切り欠きがつけられるようになりました。
ただし、切り欠きは任意表示です。種類別が牛乳でも、すべてのメーカーが必ずつけているわけではありません。
くぼみがあれば牛乳と判断する目安にはなりますが、くぼみがないからといって牛乳ではない、とは限らないのです。
世界の牛乳パックはこんなに違う
質問のもうひとつのテーマ、世界の牛乳パックの違いについても、答えは「ある」です。
日本では、冷蔵で売られる屋根型の紙パック牛乳が一般的です。
しかしヨーロッパやアジアの一部では、超高温殺菌して無菌容器に詰めた、常温保存できる牛乳が多く流通しているそうです。
日本人の感覚だと牛乳は冷蔵庫にあるものですが、国によっては常温の棚に並んでいることもあります。
この違いは、冷蔵物流がどこまで整っているか、家庭でどのくらい買い置きするか、賞味期限への考え方や味の好みなどが表れたものだといいます。
アメリカでは「ジャグ」と呼ばれる大きなプラスチック容器の牛乳がよく見られます。
カナダの一部地域では、袋に入った「バッグミルク」もあるそうです。
袋の牛乳を専用のピッチャーに入れて、角を切って注いでいく。日本人から見ると、え、袋からどうやって牛乳飲む?と思うかもしれませんが、その地域ではそれが普通だったりします。
つまり牛乳パックを見るだけでも、その国の流通や家庭の冷蔵庫、環境意識、消費習慣まで見えてくるということです。
| 地域 | 容器の特徴 | 保存方法 |
|---|---|---|
| 日本 | 屋根型の紙パック | 冷蔵 |
| 欧州・アジアの一部 | 無菌容器 | 常温保存が可能 |
| アメリカ | ジャグ(大型プラスチック容器) | 冷蔵 |
| カナダの一部 | バッグミルク(袋) | 専用ピッチャーで注ぐ |
小さなくぼみに宿る、たくさんの人の手
日本の切り欠きは、その中でもとても日本らしい工夫だと川上さんは話します。
大きく目立つデザインではなくても、必要な人にはちゃんと伝わる。言葉が読めなくても、目で見えなくても、手で触れればわかる仕組みです。
酪農家は牧場で牛を飼い、生乳を搾ります。でも牛乳は搾ったところで終わりではありません。
工場で殺菌され、容器に詰められ、お店に並び、家庭に届き、誰かが冷蔵庫から取り出して飲んでくれます。
その最後の瞬間にまで、いろんな人の工夫が入っているのです。
この質問の奥には、「食品は誰のために設計されているのか」という大きなテーマがあると川上さんは指摘します。
見える人だけ、若い人だけ、健康な人だけが使いやすければいいわけではありません。
毎日飲むものだからこそ、誰でも選びやすく、開けやすく、安心して手に取れることが大事だと話されています。
まとめ
牛乳パックの小さなくぼみ「切り欠き」は、困っている人の声から生まれた社会の工夫でした。世界の牛乳容器と見比べると、日々の牛乳がぐっと面白く見えてきます。
- パック上部のくぼみは「切り欠き」と呼ばれ、触るだけで牛乳とわかり、反対側が開け口だと示す役割がある
- 切り欠きは種類別「牛乳」につけられ、成分調整牛乳や加工乳、乳飲料には基本的につけない
- 視覚障害者の調査を背景に、2001年から導入された任意表示である
- 世界では常温保存の牛乳、アメリカのジャグ、カナダのバッグミルクなど容器は多様
- 牛乳は搾る人から飲む人まで、多くの人の手と工夫を通じて届いている
