日曜恒例、1週間分のコメント返し
この日は3月15日の日曜日。先週の出張で仕事が溜まっているなか、堆肥の配達や種付け、子牛のケアなどをこなす合間の配信です。
内容は毎週日曜恒例の「コメント返しのコーナー」。前日にXへ上げた投稿がプチバズした影響で、各SNSにたくさんの質問が届いているそう。
今日も10分15分では終わらないでしょう。週末ですので、皆さんゆっくり牛乳を飲みながら聞いていただけたら嬉しいなと思います。
ガソリン代の高騰にも触れつつ、本当は牛を導入したいけれど、餌代が急に上がった時に備えて手元の現金を残しておきたい、という悩みも打ち明けています。
反すうとけつあご、子牛の胃袋の話
最初の質問は、牛の反すうや「けつあご」についてのコメントから。川上さんいわく、牛は共進会に出るような美しい牛も含めて全部けつあごで、そこがチャーミングなのだそう。
反すうにも個性があり、体全体に餌を浴びながら食べる牛や、口の横からバリバリ落とす牛、隣の牛の餌を食べてから自分の餌を食べる牛までいるとか。
子牛の頃にミルクを飲んでいる時も反すうしているのでしょうか。
子牛は反すうしません。牛の胃袋は4つありますが、子牛の頃は一番大きくなる第1胃がまだ未発達で、ミルクは第4胃へ運ばれます。第4胃は人間の胃に近く、消化酵素でミルクを固めて吸収するため、反すうは起きないのです。
子牛はミルクで大きくなり、落ちている草や親牛の餌をむしゃむしゃ食べ始めると、そこから反すうがスタート。目安はだいたい生後1ヶ月くらいだそうです。
牛乳診断と、乳業会社ごとの掲載の違い
続いては、牛乳の産地診断「牛乳診断」をめぐるコメント。実際に診断しながら聞いてくれるリスナーが多く、川上さんはそこをとても喜んでいます。
ふんふん、そうそうでも終わらずに、ちゃんとインターネットで検索したり、実際にアクションしていただけると本当にありがたいですね。
一方で「いつも飲んでいる牛乳が診断に載っていない」という声も。川上さんによれば、全国の酪農団体に入っていて、なおかつ牛乳診断に協力した乳業さんが掲載される仕組みで、組合に入っていない乳業の商品は載っていないとのこと。
よつ葉乳業には独自の牛乳診断があり、そこからオンラインショップで買えるという導線も紹介されました。川上さんは「なぜジェイミルクができなかった」と悔しがりつつ、意見はぜひ本家へ伝えてほしいと呼びかけます。
私から言うと、本当にうるせえ川上って言われちゃうんで、皆さんはジェイミルクの公式Xやインスタで、なんでないんですか、みたいなのをコメントしていただけたら嬉しいなと思います。
耳標や、牛が泳げるかという素朴な疑問
TikTokのショート動画に寄せられた質問も次々に。まずは牛の耳標について。
最期を迎えた牛さんの耳標はどこに返すのでしょうか。
牛が亡くなった場合、食肉処理場や、廃用時に検査する家畜保健衛生所などへ送られ、そこで耳標も処分されます。酪農家のところで耳標をなくすことはありません。
続いて「牛は泳げるのか」という疑問。川上さんは、牛と水牛はもう別の生き物だと説明します。
牛と水牛は、霊長類でいうとチンパンジーとゴリラみたいな近い種なんですけど、全然違うっていう形になっていて。
川を渡るヌーは水牛の仲間なので泳げますが、ホルスタインは「ウシ科」で、水かきや鼻の形が泳ぎ向きにできていないため泳ぐのは苦手なのだそうです。
なぜ調整した牛乳の方が安いのか
「手間がかかっているのに、なぜ成分無調整より加工した牛乳の方が安いのか」という質問には、牛乳の販売価格の仕組みから答えています。
酪農家が牛乳を売る時には、飲用向けの価格と加工向けの価格があります。飲用向けが成分無調整牛乳、加工向けはバターや脱脂粉乳、調整乳などになるもの。
加工向けの場合、メーカーが加工する手間賃を酪農家側が負担するため、飲用向けより安くメーカーに販売することになります。だからメーカーは安く仕入れられ、加工乳が売れるほど利益が上がる構図に。
皆さんが牛乳をあまり飲まないほど酪農家の手取りがどんどん減っていって、加工乳を買うと酪農家の手取りが少なくなり、メーカーは利益が上がっていくという構図になっております。
成分無調整牛乳として販売。酪農家の手取りが比較的多い
バターや脱脂粉乳、調整乳などに。加工賃を酪農家が負担し安く販売される
繁殖とホルスタインのオスをめぐる課題
質問は繁殖の話へ。「メス牛が子牛を産まないと乳が出ない」ことを、酪農家に嫁いで初めて知ったというコメントに、川上さんは深く共感します。
酪農体験に来る大人でも「乳牛はオスでも牛乳が出る」「赤ちゃんを産まなくても大きくなれば出る」と思っている人は本当に多いそう。牧場の牛が全部メスだと伝えると驚かれるといいます。
発情のポイントはデータ化してますか。
川上牧場ではポイント制のデータ化はしていません。研修生には、乗ったり乗られたりする様子や粘液、発情周期などをポイントで加算し、合計が一定を超えたら種付けする方法をわかりやすい例として教えているだけ。実際は繁殖を薬剤で同期化してコントロールしているため、発情の強さはあまり関係しないそうです。
ホルスタインのオスをどうするかも大きな課題。判別精液でオスが生まれにくくなっているぶん、オスの肥育はかえって難しくなってきていると話します。
技術革新しても全然生活が楽にならないの何でですかね。やれどもやれども本当に厳しくなるばかり、という感じでございます。
農薬や食の規格をどう考えるか
最後は、農薬や抗生物質についてのコメント。広島で代々自作農をしているという方から、農薬より虫の食害でできる天然物質やカビ毒の方がよほど危険だ、という意見が届きました。
川上さんは、少しでもカビや傷があると消費者がすぐ返品を求めるからこそ、それを防ぐために農薬などを使っていると説明。綺麗でまっすぐな、同じ規格の野菜が求められる裏側を語ります。
リアルタイムでは「無農薬にこだわらないし、消費者も細分化してきている」という声も。川上さんはそれに理解を示しつつ、流通の現実にも触れます。
同じ規格で同じ形で同じものを出すのが流通しやすいんですよね。牛乳パックも一緒で、いろんな規格を作ると物流のコストが上がってしまう。
これから法人化した大きな農家への一極集中が進むと、規格の統一はさらに強まる見込み。バイヤーも1年間同じ品質を同じ量で取りたがるため、小さな農家はやりにくさを感じるかもしれない、と締めくくります。
まとめ
バズ投稿後に届いた質問へ、牛の生態から牛乳の流通、繁殖、食の規格まで幅広く答えた日曜のコメント返し。素朴な疑問の一つひとつに、酪農の現場ならではの背景が見えてきます。
- 子牛は第4胃でミルクを消化するため反すうせず、反すうが始まるのは生後1ヶ月ほどから
- 牛乳診断に載る乳業は、酪農団体に入り診断に協力した会社。載っていない商品への要望はジェイミルクへ
- 加工向けの牛乳は加工賃を酪農家が負担するため安く、加工乳が売れるほどメーカーが儲かる構図
- メス牛は子牛を産まないと乳が出ず、ホルスタインのオスの扱いは今も大きな課題
- 同じ規格で流通させるコストが、農薬の使用や小さな農家のやりにくさの背景にある
