168万ビューを超えた投稿とコメント返しの方針
この日の配信は、出張前にXへ投稿したものが大きく伸びたことから始まりました。表示回数は168万、引用リポストは1200件超、いいねは6000件を超えていたそうです。
投稿のもとになったのは、研修生との配信をnoteの記事にし、その内容をAIでX向けの文章にしたもの。ホルスタインのオスの話から、培養肉やゲノム編集で牛の価値が変わっていくという内容でした。
たくさん来たコメントに、川上さんはあえてXで直接リプライを返しません。その理由をこう説明します。
バックグラウンド、その人の立ち位置とか意思とか、どういう考え方なのかっていうのが、その文字列だけじゃ伝わらない。自分の言葉も伝わらない。だからポッドキャストの方で返信させていただいています
Xはあくまで看板やポスターのようなもの、という考え方だそうです。
Xは音声配信とかを文字で読みやすくしたり、noteの記事やポッドキャストを上げてますよってお知らせする機能。ポスターとか看板だと思ってください
培養肉は本物の牛肉に取って代わるのか
コメントには、培養肉が普及しても本物の牛肉はブランド化して残るのでは、という声が多く寄せられました。ミズグチさんは、ブランド米のように富裕層向けの天然牛肉の需要はなくならないと書いています。
一方で、需要の変化で採算が合わず離農する農家は出るだろうという指摘もありました。川上さんも、こうした冷静な見方に共感を示します。
酪農業の方たちが廃業とかで困ってるってなってますけど、そこから生まれる産業みたいなのもあるよっていうことですね
川上さん自身は、培養肉は「いつでもどこでも誰でも食べられる」消費財の方向に向かうのでは、と見ています。
日本で食が豊かだから言えることなんですよね。消費財の考え方になってくると、美味しいお肉がいつでもどこでも誰でも食べられるっていうのがあるので、培養肉はそっち側に向かっていく
味の再現性が高く、規格に合わせやすい。安く安定して届けられる消費財に向かうという見方
個体差や生産者の顔、育てた時間が価値になり、ブランド肉・高級品として残るという見方
同じ牛から何度も、宇宙でも。広がる牛の未来像
コメントの中には、SF的な発想を膨らませたものも多くありました。培養肉は宇宙旅行で重宝するかもしれない、という壮大な視点もそのひとつです。
川上さんは、全国共進会で一番になった牛のお肉をずっと味わえる未来も考えられる、と面白がります。
一頭五百キロぐらいの牛肉しかできなかったのが、技術が開発すればもっと取れるようになるかもしれません。何々ちゃんのお肉が何年も食べられるっていうのも、可能性の一つじゃないかな
観光牧場や体験型牧場としてテーマパーク化が進む、というコメントには強く共感していました。牛の価値は時代とともに変わってきたからです。
歴史をたどると、荷物を運んだり、牛乳が薬として飲まれていたり、トラクターの代わりに作業機械を引っ張らせたり。牛の価値って変わってきたんで、観光牧場や体験牧場の方がもう価値あるよねみたいなのも出てくる
馬を例に、経済動物の価値が変わった先例だと指摘したコメントにも「そういうことです」と応じています。
培養肉が広がっても、牛や酪農は残るのか
「本物の牛はいらない」というまっすぐな消費者の声もありました。感情や知能のある牛の苦しみをなくすべきで、培養肉や代替肉を畜産農家が極めてほしい、という内容です。
川上さんは、牛がいなくなることで生じる二次的な問題は過去の配信でも話していると伝えつつ、大豆の話にも触れます。
国産の大豆で作ったものを消費者が選んでくれてないというところが問題にあったり。どっちがいいとかそういう話じゃなくて、そういう現状になっている
一方で、生乳は工業的に作るのが難しく酪農は残る、農業は地域社会の保全に欠かせない、という丁寧なコメントもありました。川上さんはその価値を認めつつ、伝えたいことを改めて言葉にします。
大切なことは、地域にね、わかるんです。ですけど、その価値がちょっとずつ少なくなってくるよ、他のものが出てくるよっていうことですね。私が伝えたいのは
血統や品種の維持、培養用の細胞や血清も牛から取るという指摘には、牛が全くなくならないだろうという点で同意していました。
培養の現場は、もうすぐそこまで来ている
培養肉の生産施設について、畜産農家に工場を作る余力があるのか、という現実的な質問も寄せられました。川上さんは、海外の動きを紹介します。
ドイツのスタートアップは、培養の施設をコンテナみたいな感じで牧場の横に簡単に作れる。培養施設自体は本当にあと数年で誰でもどこでもできるようになる
日本では規制が強いものの、自分で食べる分を自作して実際に食べている高校生の話も聞いたことがあるそうです。
シンガポールでは培養肉の使用割合を表示した商品がすでに販売されているといい、「近い将来の話」だと語ります。
日本で作る培養肉は、エネルギーや血清などの資材を輸入に頼るため、コストを下げにくく、まず嗜好品に近い形で出てくる可能性があると見ています。
バズっても、伝えたい場所に人は来ない
最後に川上さんは、大きくバズった投稿の「その後」を率直に語りました。168万人が見た投稿から、noteに来た人は177名ほど、YouTubeのチャンネル登録者の増加率はゼロだったといいます。
Xはやはり看板であって、店の中には入ってこない、という実感がにじみます。
みんな看板見て、うわ美味しそうだな、これいいねって思いながら次のお店に行っちゃうんですね。店の中に入ってこないの
そして、「AI臭い文章」というコメントについても、隠さず受け止めていました。
AIっぽい文章だみたいなコメント、もうクソコメがいっぱい来てましたけど、あなたが読んでるやつ、ほとんどもうAIで作ってますからね
新しい技術を怖がるのではなく、こうなったら面白いよね、と一緒に話したい。川上さんのスタンスがよく表れた回でした。
まとめ
バズったX投稿へのコメント返しを通して、培養肉やゲノム編集が広がる未来で牛や酪農の価値がどう変わるかを、酪農家の視点でゆるやかに語った回でした。技術を怖がるより「こうなったら面白いよね」と一緒に考えたい、という姿勢が印象的です。
- 168万ビューの投稿は、研修生との配信をnote化しAIでX向けに文章化したもの
- 培養肉は消費財の方向へ、本物の牛肉は生産者の顔や育てた時間が価値になるという見方が語られた
- 牛の役割は荷役や薬から搾乳へと変わってきており、観光・体験牧場など新しい価値も生まれうる
- 培養施設はあと数年で身近になる可能性がある一方、日本ではコストや規制の課題が残る
- バズってもnoteやYouTubeへの流入はごくわずかで、まずPodcastやnoteでコンテンツを見てほしいと呼びかけた
