学生さんからの質問「牛も乳腺炎になる?」
今回の質問は、配信アプリSPOONのカノさんから届いたものです。乳腺炎の勉強をしたことがきっかけだったそうです。
最近、乳腺炎の勉強をしました。牛さんも乳腺炎になるんでしょうか。人間は熱が出たりしますが、牛さんも熱が出たりするんでしょうか?
川上さんは、こうした学生さんが現場の酪農家に直接質問できる環境を歓迎していました。
授業で習ったことを現場の酪農家に聞いて、また授業でも習ってってやったら、もうスペシャリストですよ。あっという間にベテランの酪農家を追い抜いていく、そんな学生さんになると思います。
乳腺炎は酪農では乳房炎とも呼ばれ、川上さんいわく「切っても切り離せない職業病」だそうです。乳房炎乳房の中に細菌が入り込んで炎症を起こす病気。牛でも人でも起こり、牛乳の質や量に大きく影響します。
牛の乳房炎はどんな病気?
結論から言うと、牛も乳房炎になります。むしろ酪農ではとても一般的に知られている病気なんですね。
乳房炎は、乳房の中に細菌が入って炎症を起こす病気です。人間でも授乳中に起こることがありますが、牛でも同じような仕組みで起こります。
原因となる菌には、黄色ブドウ球菌や大腸菌、連鎖球菌などが知られています。ほかにもいろいろな菌があるそうです。
乳房炎になると出てくる症状
牛が乳房炎になると、まず変化が出るのは牛乳です。お乳が水っぽくなったり、分離してうまくお乳にならなかったりします。
さらに、塊が出ることもあります。業界用語では「ブツ」と呼ばれるそうです。色が変わることもあります。
乳房そのものにも変化が出ます。腫れたり、熱を持ったり、痛みが出るといった症状が見られます。
牛も熱が出るの?
もうひとつの質問、「牛も熱が出るの?」についてです。結論から言うと、重い乳房炎では牛も発熱します。
特に大腸菌性の乳房炎などでは、体温が上がり、元気がなくなって食欲も低下する、といった全身症状が出ることがあります。
牛の平熱は約38度から39度なので、それより高くなると発熱と判断していきます。
牧場での対処と川上牧場の取り組み
乳房炎は、酪農家が一番気をつけている病気です。牛の体調にも、牛乳の品質にも、生産量にも関わってくるからなんですね。
そのため牧場では、搾乳前後の消毒や牛舎の清潔管理、牛の健康チェックを毎日行っています。プレディッピング・ポストディッピング搾乳の前後に乳頭を消毒すること。菌が乳房に入り込むのを防ぎ、乳房炎の予防につながります。
川上牧場では、抗生剤を使った治療はほとんどしていないそうです。ビタミン剤を飲ませたり、別搾りして数日置いたりする方法で、たいてい治るとのこと。
薬に頼らず対処できる背景には、いくつかのデータ活用があります。まず牛のゲノムを調べていて、乳房炎になりやすい体質かどうかがわかるそうです。
さらに牛群検定で毎月の変化を追えること、島根県はバルク乳の検査が多く定期的に結果が返ってくることも役立っているそうです。牛群検定牛ごとの乳量や乳質、健康状態などを定期的に測定・記録する仕組み。個体の変化を把握して飼養管理に生かします。
加えて乳房炎のワクチンも使っていて、外部から入ってくる菌が発症しにくくなっているとのこと。それでも季節の変わり目やストレスで、発症する牛はパターンとして決まってくるそうです。
乳房炎がなくなる未来と牛乳のおいしさ
川上さんは「乳房炎がなくなればいいな」と話しつつ、乳房炎になりにくい牛を作る品種改良やゲノム編集の技術が進んでいることにも触れました。
ただ、病気に強い牛ができても、それだけでは十分ではないと考えているようです。
なくなったからといって、それが牛乳の品質にどうなのか、美味しい牛乳を出すかどうかというところが問題なので、そこが伴わないといけないなと思ったりします。
乳房炎は、酪農家をかなり悩ませる病気でもある、というのが今回のお話でした。
まとめ
牛も乳房炎になり、牛乳の変化や乳房の腫れ、重い場合は発熱まで、人間と似た症状が出ます。川上牧場ではゲノムや検定、ワクチンなどのデータと予防を組み合わせて、薬にできるだけ頼らず対処しているそうです。
- 牛も乳房炎になり、原因の多くは細菌感染。牛乳の変化や乳房の腫れが起きる
- 重い乳房炎では牛も発熱する。牛の平熱は約38〜39度が目安
- 搾乳前後の消毒や牛舎の清潔管理、健康チェックが日々の予防になる
- 川上牧場はゲノム・牛群検定・バルク乳検査・ワクチンを活用し、抗生剤はほとんど使わずに対処している
- 病気に強い牛を作る技術は進むが、牛乳のおいしさが伴うことが大切だと川上さんは話す
