牛乳は「データの塊」から始まる話
今回のテーマは、リスナーのヒデさんからTikTokに届いた質問です。
牛乳の検査項目を詳しく教えてください。
川上さんはまず、牛乳が農産物のなかでもかなり検査項目が多い食品だと話します。
野菜やお肉と同じ農産物のひとつですが、検査の種類も回数も多く、その筆頭ではないかと語られています。
その理由は、牛乳が単なる白い液体ではないからだと言います。
この牛乳はですね、牛の健康状態とか、あとは餌とか、繁殖、胃袋の状態、ストレス、全部が入ったデータの塊になってます。牛乳はですね、牛の血液からできていますんで、血液検査をするようなぐらい、牛乳を調べることでそれがわかります。
ここから紹介されるのは、島根県での検査項目です。地域や乳業会社、農協によって項目は違うため、あくまで一例として語られています。
乳脂肪と脂肪の種類でわかること
最初に挙げられたのは、牛乳パックの裏にも書いてある乳脂肪です。今回の川上牧場の数値は4.61でした。
市販の牛乳パックには3.5や3.8と書かれていることが多いなか、これはかなり高い数字だと話されています。
ただし酪農家にとっては、高ければ良かったで終わらないと言います。大事なのは「どんな脂肪で作られているか」だそうです。
乳脂肪は、脂肪酸組成という観点でさらに細かく見られます。
デノボ脂肪が落ちると、餌の食い込みやルーメン発酵、暑さの影響を疑うそうです。
一方でプレフォーム脂肪が極端に高いと、体脂肪を削っている証拠になり、餌が食べられているか、分娩後の牛が不調でないかを見る手がかりになると言います。
成分値から読み取る牛の状態
続いて紹介されたのが、脂肪以外の栄養成分を示す数字です。
無脂乳固形分は今回9.22%。タンパク質や乳糖、ミネラルなどが含まれ、牛乳らしい濃さを見る数字だと言います。
これが下がると、暑熱ストレスやエネルギー不足、水が飲めていない、餌のバランスの乱れなどを疑うそうです。
乳タンパクは3.7%。チーズやヨーグルト作りに大事で、酪農家目線では牛がちゃんとエネルギーを取れているかを見る数字だと話されています。
乳糖は4.64。あまり変動しない成分ですが、乳量と関係が深く、乳房炎やストレス、食い込み不足、体調不良で下がると言います。
体細胞数と一歩踏み込んだ数値
次に語られたのは、乳房炎の有無を見る重要な指標、体細胞数です。今回は28万で、川上さんは「ちょっと高め」と話します。
乳成分は好調な数字なのに体細胞が上がっている点から、気候の変化で牛が無理をし始めたのではないかと見ているそうです。
酪農家はこれを見ると、どの牛を重点的に見るかとか、搾乳機に問題はないかとか、あとは牛のベッドが汚れてるんじゃないかなとか、そういうのを考えます。牛乳工場に届く前からものすごく細かく見ているということですね。
ここからはさらに専門的な数字が続きます。
そして近年増えてきたのが脂肪酸組成で、トランス脂肪酸やデノボ・ミックス・プレフォーム脂肪まで見られるようになったと言います。
昔は乳脂肪四パーセントとかで終わっていたんですけど、今は違っていて、どんな脂肪かまで見る時代です。牛の胃袋が元気なのか、繊維足りているのか、暑さでやられてないか、牛が体を削って乳を出していないか、ここまで見ています。
検査項目はなぜ増えたのか
体細胞数の話に関連して、川上さんは数字を下げすぎることの弊害にも触れます。
30万を超えると引き取り価格が下がるペナルティがある一方、一桁台まで下げすぎると感染症や伝染病に弱くなるという情報も最近出てきたと話されています。
さらに、脂肪の種類まで検査されるようになった背景も語られました。
かつて学校給食で「牛乳の味が違う」と感じた子どもがいたり、飲んでお腹が痛いという騒ぎが起きたりしたことがあったそうです。
当時いろいろ検査をしても原因がわからず、調査の結果、牛乳に含まれる乳脂肪の違いが「いつもと違う牛乳だ」と感じさせていたのではないか、という調査が出たと言います。
それから、酪農家さんがちゃんと牛に適切な飼養管理をして、健康な牛から育ったものですよっていうのを、酪農家を守るためにこの検査項目が増えたっていうのが流れであります。
つまり検査項目の充実は、問題が起きたときに生産現場・乳業会社・配達のどこで起きたのかを切り分け、酪農家を守るための仕組みでもあるという話です。
川上さんは、消費者が些細なことでクレームを入れるほど検査項目が増え、生産現場が厳しくなり、結果的に価格にも跳ね返ると語りました。
高い数字の裏にある努力
配信中には、リスナーからのコメントも紹介されました。
「我が家の牛乳は3.5%以上でした」というコメントに、川上さんは年間で3.5%を切らない数字だと応じます。
川上牧場は夏の暑い時期でも4.6%台を搾っていますが、他の牧場の牛乳と混ざるため、パックの表示は3.5%になることもあると説明されました。
皆さんの普段飲んでいる牛乳、いつも美味しく飲んでくださってると思います。その裏には、こんな検査項目の努力があるっていうのを知っていただいて、牛乳を飲んでいただけたら嬉しいなと思います。
高い数値は遺伝改良や日々の管理の積み重ねであり、その努力を知ってもらえたら嬉しいと締めくくられました。
まとめ
牛乳の検査項目は、美味しさを保つためだけでなく、言葉を話せない牛の健康状態や酪農家の管理を映す通信簿でもあります。パックの裏に載らない数字の背景を知ると、いつもの一杯の見え方が少し変わるかもしれません。
- 牛乳は牛の血液から作られ、健康・餌・胃袋・ストレスまで映す「データの塊」として検査されている。
- 乳脂肪は高さだけでなく、デノボ・ミックス・プレフォームという脂肪の種類まで見られ、胃袋の状態がわかる。
- 体細胞数やMUN、BHB、FFAなど、牛乳工場に届く前から多くの項目で牛の状態がチェックされている。
- 体細胞数は下げすぎても病気に弱くなるという弊害があり、単純に低ければ良いわけではない。
- 検査項目が増えた背景には、問題の原因を切り分け酪農家を守るという狙いもある。
