改めて、川上牧場ってどんな牧場?
川上牧場があるのは、島根県出雲市。出雲大社から車で10分か15分ほどの距離にあります。
近くには住宅地やショッピングモールもあって、いわゆる「都市近郊酪農」でやっているそうです。
広い放牧地で牛が牧歌的に歩く、というイメージを持つ人も多いですが、川上牧場はすぐそばに民家があるという、ちょっと酪農がやりにくい環境なんですね。
そんな条件のなか、牧場の現場を開いて小学校や中学校、保育園、一般の消費者を受け入れ、酪農や農業の魅力を伝える食育活動にも取り組んでいます。
川上牧場も、この酪農教育ファーム認証牧場として登録されています。
三代目として就農17年、経営者として10年
川上さんはもともと氷ノ丘の出身で、結婚を機に出雲へ来て、川上牧場に就農したそうです。
2026年で就農から17年目、絶賛三代目としてやっているとのこと。
30歳のときに経営移譲を受けて経営者になり、こちらは今年でちょうど10年。区切りの年になります。
コロナ禍やロシアのウクライナ侵攻の影響で、餌代や燃料費が上がるなかでも、なんとかやってきたと振り返っています。
餌代がシビアな都市近郊酪農の工夫
都市近郊酪農は、他の地域より生産性がシビアになりやすいそうです。理由は餌代です。
酪農でかかる出費のほとんどは餌代。都市近郊は土地の値段が高く、牧草地を持ちにくいので、自分で餌を作る自給飼料がなかなかできません。
餌代が高いのが都市近郊酪農なので、それをより効率的に、生産性を上げるために、牛の品種改良にかなり力を入れています
その工夫のひとつが、近くの食品工場から出る食品残渣の活用です。人間が食べられなくなったものを引き取り、牛の餌にしています。
それが牛乳やお肉に変わっていく。世の中では「サステナブル」と呼ばれる仕組みですが、川上さんは特に意識してきたわけではないと言います。
音声配信から書籍まで、酪農のハードルを下げる活動
コロナ禍で酪農体験の受け入れが難しくなったことをきっかけに、オンラインでできることを、と始めたのが音声配信でした。今年で4年目になるそうです。
各種ポッドキャストやSpotify、stand.fm、さらに昨年からはYouTubeでも音声配信を毎日あげています。
その音声をAIで文字起こしし、noteにまとめ、それをKindle書籍にする、という流れもつくっています。
狙いは、これから酪農を目指す人や興味がある人が入りやすいように、酪農という難しい職業のハードルを下げることです。
活動の傍らでは、農業とWeb3・AIを組み合わせるメタグリ研究所や、バイオテクノロジーの社会実装に取り組むJBCNなどのコミュニティにも参加。酪農教育ファーム全国団体の役員や、島根県の指導農業士なども務めています。
品種改良と受精卵移植という牧場の特色
川上牧場の特色として、川上さんは牛の品種改良への注力を挙げます。
いち早く牛のゲノム、つまり遺伝子情報を調べ、その情報を使って品種改良を進めているそうです。
成績があまり良くない牛には、黒毛和牛の受精卵を移植する「代理母出産」を行っています。
黒毛和牛をホルスタインを使って産ませることによって大量生産するみたいな、そんな取り組みも活動を広げてたりする牧場でございます
さらに音声配信を通じてつながったアーティストやイラストレーター、デザイナーとコラボした作品を、グッズ販売サイトのSUZURIで出したりもしています。
牛乳月間には「#牛乳で歌おう」という企画を3年前から実施。ミュージシャンとコラボした「牛乳で乾杯」という曲は、各種サブスクで聴けるそうです。
新しい技術好き、そして人を受け入れる牧場
川上さん個人としては、新しいものや最新技術が大好きなんだそう。
海外のフードテック、培養肉や代替肉、代用乳といった情報を調べるのが好きで、それを音声配信で紹介しています。ChatGPTが出てからずっとAIを触り続け、酪農業界に活かしているとのこと。
高校生や中学生、研修生を受け入れて、酪農を目指す人を増やす取り組みもしています。川上牧場で研修した人が他の牧場や職業へ進むことで、酪農の関係人口を増やす狙いです。
昨年からはスキマバイトの「タイミー」の受け入れも始めていて、昨年は300人を超え、400人近くの人が働きに来てくれたそうです。
赤字でもやりたい、AIで業界を変える2026年
2026年にやってみたいこととして、川上さんはAIを使った酪農業界の課題解決を、もっと多くの人に広げることを挙げます。
3月には、酪農教育ファームの若手や乳業会社、飼料会社の若手を集めて、AIがどういうものかを伝えるセミナーを開く予定だそうです。
それを足がかりに、全国のAIに取り組んでみたい酪農家や、課題を解決したい人にアドバイスできる活動をしていきたいとのこと。
今年一年はちょっとね、赤字でもいいので、ちょっとそういう活動を少しでもできたらいいなと思っております
背景にあるのは、危機感です。人口減少やインフレ、円安の影響で、酪農業界はどんどん厳しくなっていくと川上さんは見ています。
一方で、年配の方が多い業界なので変化しにくい。数年待っていたら本当にやばいことになる、という思いがあるそうです。
もちろん、自分の牧場の経営が傾いては元も子もありません。そのバランスを取りながら活動を進めたい、というのが2026年の目標です。
質問はポッドキャストで、が川上流
リスナーからの質問やコメントは、どしどし寄せてほしいと川上さん。毎日ひとつずつ丁寧に答える配信をしているそうです。
質問でなくても、毎週日曜日にはコメント返しのコーナーがあります。
ただし、XやInstagram、TikTok、Threadsなどのリプ欄でお返事することは、ほぼないとのこと。
文章でやると誤解が生まれるっていうのと、一対一で話をしているのに、誰か知らない横から来た人が難癖つけてきたりして、不毛だと思っているからです
だからこそ、ホームグラウンドであるポッドキャストで答える形にしている、というわけです。
YouTubeのコミュニティ機能なら、リスナーが写真を上げて質問することもできるので、そちらも使いやすいと紹介していました。
まとめ
新年一発目は、川上牧場の自己紹介と2026年の抱負でした。都市近郊酪農ならではの工夫から、音声配信やAIを使った業界改善まで、活動の幅広さが伝わる回でしたね。
- 川上牧場は出雲大社近くの都市近郊酪農で、酪農教育ファーム認証牧場として食育活動もしている
- 川上さんは三代目として就農17年、経営者としては10年の区切りの年
- 餌代がシビアな環境を、食品残渣の活用や品種改良で工夫している
- 音声配信・note・Kindleで、酪農のハードルを下げる発信を続けている
- 2026年は「赤字でもいい」とAIで酪農業界の課題解決を全国に広げるのが目標
