リスナーから届いた「サンプル数1」の実体験
今回のお便りコーナーでは、コルトマルティスさんから熱量のある長文の質問が届きました。
内容は、自身の体験をもとにした乳糖不耐症についての考察です。
乳糖不耐症は治りにくい、完治しないらしいと聞きました。そこで私の経験はサンプル数イコール1ですが、経験と考察を書きます。
コルトマルティスさんは、学校給食では牛乳を飲まなかったと振り返ります。当時は牛乳や油の多い食事でお腹が緩くなっていたそうです。
その後、腸内環境を整えることを意識し、乳酸菌の餌になる食品も取るようにしたところ、牛乳を飲んでもお腹が緩くなることはなくなったと言います。
ただし、空腹時に急にゴクゴク飲むと今でも緩くなるそうです。
さらに、温かい牛乳なら少し飲める、チーズやヨーグルトは食べられるという人は、少しずつ飲む環境や腸内環境を整えることでできることがあるのではないか、と自身の体験から考察していました。
結論は「治った」ではなく「軽くなった」
この体験談を受けて、川上さんはまず結論から答えます。
科学的にも十分あり得る話だとしつつ、大事な言い換えを添えました。
乳糖不耐症とは、牛乳に含まれる乳糖を分解する酵素ラクターゼ乳糖(ラクトース)をブドウ糖とガラクトースに分解する消化酵素。乳児期に多く、成長とともに減っていく人が多いとされる。が少ない状態のことです。
乳糖が分解されないまま大腸へ届くと、腸内細菌が発酵させてガスが発生し、お腹がゴロゴロしたり下痢になったりします。
川上さんによれば、大人になってもラクターゼを十分持っている人はむしろ少数派だそうです。
日本人を含む東アジアでは、成人の多くが乳糖を分解しにくい体質だと言われています。牛乳でお腹が緩くなる人がいるのは、決して珍しいことではありません。
腸内環境が変わると飲めるようになる理由
では、なぜ以前はダメだったのに今は飲めるようになったのか。川上さんはここが面白いところだと話します。
近年の研究では、腸内フローラ腸内に住む多種多様な細菌の集まり。食生活などによって構成が変化し、消化や体調に影響するとされる。が乳糖の利用に関わっていることが分かっているそうです。
例えばヨーグルトや発酵食品を続けて取る人では、乳糖を利用できる細菌が増えることがあります。
また、乳酸菌の餌になる食物繊維やオリゴ糖を取ることで腸内環境が変わり、以前より症状が出にくくなる場合もあります。
つまり「腸内環境を整えたら飲めるようになった」という感覚は、十分に説明できるということです。
ただし川上さんは、ここで大事なポイントを補足します。
それは、ラクターゼ酵素そのものが増えたとは限らないということです。
乳糖不耐症の体質そのものは遺伝的な要素が強いため、「完全に治った」より「腸内環境や飲み方で症状が軽くなった」という表現が正確だと考えられます。
お腹に響かせないための飲み方の工夫
お便りにもあった「空腹時に冷たい牛乳を一気飲みするとお腹が緩くなる」という現象は、非常によくある話だと川上さんは言います。
逆に、症状を軽くする飲み方もあります。
チーズやヨーグルトが大丈夫な人がいる理由もあります。発酵の過程で乳糖が減っているからです。
特に硬いチーズは乳糖が非常に少ないため、乳糖不耐症の方でも食べられる場合があります。
川上さんは、牛乳が苦手でも「牛乳が悪い」わけではないと強調します。
例えばエビアレルギーの人がいても、エビそのものが悪いわけではありません。乳糖不耐症も同じで、体質と相性の問題なんですよね。
酪農家として無理に飲んでとは言えないとしつつ、昔飲めなかったから今も無理と思っている人には、少量から試す価値はあるかもしれない、と川上さんは話しました。
イライラと栄養、そして自分に合う牛乳選び
お便りにあった「イライラしやすい人は微量栄養素が足りていないのかもしれない」という考察についても、川上さんは面白い視点だと受け止めます。
人間の体はカロリーだけで動いているわけではなく、鉄、亜鉛、マグネシウム、ビタミンB群などの栄養素が神経や脳の働きに関わっています。
ただし、イライラの原因を栄養不足だけで説明することはできません。ストレスや睡眠不足も大きな要因です。
それでも、食事が心や体に影響するのは間違いないと考えられます。
最後に川上さんは、具体的な牛乳選びの手順を案内します。
同じ牛乳でも、乳業メーカーや商品によってお腹の反応が違うこともあると言います。
牛乳は毎日、牛の体から出てくるもので、中身は常に少しずつ違います。だからこそ、自分の体に合った牛乳や乳製品を見つけて楽しんでほしい、と川上さんは締めくくりました。
まとめ
乳糖不耐症は遺伝的な体質の影響が強く「完全に治る」とは言い切れませんが、腸内環境や飲み方によって症状が軽くなることはあり得ます。自分の体に合う商品や飲み方を少しずつ探すことが、無理なく牛乳を楽しむ近道になりそうです。
- 乳糖不耐症は「治った」より「症状が軽くなった」と考えるのが正確
- 日本人を含む東アジアでは、成人の多くが乳糖を分解しにくい体質
- 腸内フローラの変化で乳糖を利用しやすくなることがあるが、ラクターゼ自体が増えるとは限らない
- 空腹時の冷たい一気飲みは避け、食事と一緒・少量・温めて・発酵食品からが工夫のポイント
- 乳糖を減らした商品から試し、自分の体に合う牛乳や乳製品を見つけるのがおすすめ
