リスナーからの質問「牛の角は必ず切るの?」
今回の配信は、リスナーから届いた質問に答える回です。
川上牧場はメタグリ研究所と一緒に、未来のミルク画像投稿キャンペーンを行っています。
その画像生成AIで牛のイラストを描いてもらうと、なぜか角が生えていることが多いのだそうです。
そこから「角は切るんですか?」という質問につながったと話されています。
画像生成AIとかで牛の写真とか牛のイラストとか描いてもらうと、なんか角生えてないですか。で、素朴な疑問でですね、リスナーさんから「角は切るんですか」という質問が来ております。
質問はTikTokのリスナー「あえいういさん」から届いたものです。
絵本の牛には角、でも牧場の牛にはない
牧場体験に来た子どもが牛の絵を描いてくれると、いないはずの角が生えていることがあるそうです。
うちの牛、角生えてないはずなんだけど、角が生えてたりとかね。集合写真で牛のポーズやってってやる時、みんなが指を上にして角のポーズやって。「え、みんな見て、牛に角生えてないよ」みたいなことを言って、先生がなんかやりにくそうにしてましたけどね。
絵本でもアニメでも、牛には角があるのが当たり前のイメージです。
けれど実際に酪農の牧場へ行くと、角のない牛が多いことに気づく人が多いといいます。
日本の乳牛は、角がない牛のほうが多いのではないかと川上さんは話します。
除角の理由は「牛の怪我防止」と「人の安全」
まず結論として、現在の日本の酪農では、多くの牧場が子牛のうちに角を生えなくする「除角」という作業を行っています。
ただし、法律で必ず切らなければならないわけではなく、牧場ごとの判断だと説明されています。
除角する一番大きな理由は、牛同士の怪我防止です。
牛は群れで暮らす動物で、餌場や水飲み場、寝床でどうしても順位争いが起きます。
全頭に立派な角があると、押し合った時に相手の目や顔、乳房、脇腹を傷つけることがあります。
海外の角付きの牛群では、失明や乳房損傷の事例も報告されているそうです。
2つ目の理由は、人の安全です。
酪農家は毎日、搾乳や治療、移動などで牛のすぐ横で作業します。
牛はおとなしい動物ですが、体重は600〜700キロ、大きい牛だと800キロを超えます。
もし角がある状態で頭を振れば、人間はひとたまりもないと川上さんは話しています。
順位争いでの押し合いで目や顔、乳房、脇腹を傷つけるのを防ぐ
600〜800キロの牛が角のまま頭を振ると重大事故につながる
どうやって除角する?負担を減らす工夫
除角の多くは、生後数週間から2ヶ月ほどの子牛の時期に行われます。
この時期はまだ角そのものではなく、親指の先のような「角芽」が生えてきた状態です。
その角芽を、除角器と呼ばれる機械で処理すると、そこから角が伸びなくなります。
除角器には電気ヒーターのようなものもあれば、昔ながらの焼きゴテを使うところもあり、牧場によって様々だと話されています。
最近はアニマルウェルフェアの観点から、牛の負担をなるべく減らす流れになっています。
そのため、鎮痛剤や局所麻酔を併用して除角する牧場も増えており、これは世界的に推奨されていることだそうです。
角が生えない牛「ポールド」という選択肢
世界には、もともと角が生えない牛がいます。
近年はゲノム検査で、乳量や体型、繁殖性などを牛の遺伝子から調べられるようになってきました。
その中で、もともと角が生えない「無角遺伝子」を持つ牛の存在が分かってきました。
この牛をホルスタインと交配させることで、角の生えない牛を生み出す品種改良が進められています。
この無角の性質は「ポールド」と呼ばれます。
優性遺伝のため、簡単に角の生えない子牛を産ませることができ、種牛のカタログでも増えてきているそうです。
将来的には除角そのものが不要になるかもしれません。牛も痛くないですし、人も安全、そんな方向に進んでいるということですね。技術革新は本当にありがたいです。
ただし、角があること自体が悪いわけではないと川上さんは付け加えます。
和牛の共進会や海外の放牧牛では、立派な角が魅力の一つになっています。
角が役立つ場面と、川上牧場でのやり方
川上牧場では、生まれてすぐ1週間も経たないうちに除角ペーストというものを使っているそうです。
これは海外で使われているもので、歯磨き粉のようなペーストを頭に少しつけるだけで角が生えてこなくなると説明されています。
一方で、角があったほうが便利な場面もあると話されています。
和牛や家畜市場では、角の大きさで牛の発育を確認したり、角にロープを引っ掛けて捕まえたりします。
肥育の牛では、太って起き上がれない時に角を起点にして体を起こすこともあるそうです。
そのため、除角する場合でも先を丸くして尖らせないように残す飼い方もあります。
海外には、体と同じくらい大きな角を持つ牛もいるといいます。
世界一角が大きい牛は、体と同じぐらいの角の大きさがある牛がいるんで、この角を使って暑さを防いでるそうです。表面積を増やして熱を逃がすような進化をした牛もいたりする。
角ひとつを見ても、牛の生態を知ることができるという話でした。
最後には、こんなコメントも紹介されました。
川上さんのおかげで最近牛乳の消費量が増えています。策略にまんまとハマっている、ということで。策略という言い方をしてもらうとちょっとあれですけども、熱意が伝わっているということで、ありがとうございます。
ただし飲み過ぎは良くないので、無理のない程度で美味しく楽しく飲んでほしいというのが川上さんの気持ちだそうです。
まとめ
絵本の牛には角がありますが、実際の酪農牧場では角のない牛が多数派です。その背景には、牛同士の怪我防止と人の安全という2つの理由がありました。今は無角品種の広がりや負担を減らす工夫も進み、あと5〜10年で無角が当たり前になるかもしれないと話されています。
- 多くの牧場が子牛のうちに除角を行うが、法律上の義務ではなく牧場ごとの判断
- 除角の主な理由は、牛同士の怪我防止と、人の安全確保の2つ
- 除角は角芽の段階で行われ、鎮痛剤や局所麻酔で負担を減らす流れが世界的に進んでいる
- もともと角が生えない「ポールド」品種の広がりで、除角そのものが不要になる可能性がある
- 和牛や家畜市場、肥育や暑さ対策など、角が役立つ場面もある
