リスナーからの質問「生乳使用は本当なの?」
今回のお便りは、YouTubeのコミュニティ機能に届いたものです。日々の配信を聴きこんでくれているリスナーからの、鋭い疑問でした。
デザートなどに「生乳使用」と書いてありますが、これは牛乳使用と思っていいでしょうか。配信を聞いて勉強している限り、生乳=搾りたて・冷却していない・ホモジナイズしていないと認識しています。さすがに大手でも牧場から直に製造ラインに流していないので、PR的な拡大解釈だと思うのです。この辺はグレーゾーンなのでしょうか?
川上さんは、この質問を「めちゃめちゃグッとくる」と受け止めます。普段はスーパーで「生乳100%、おいしそう」くらいの感覚で終わりがちなところを、一歩踏み込んで考えた点をとても評価していました。
これは食品表示を理解する上でとても大切なポイントです。今日は生乳という言葉の意味と、「生乳使用」という表示が何を伝えているのかを整理してお話していきます。
そもそも生乳とは何か
まず結論として、川上さんは「生乳使用という表示は法律上問題のない表示」と伝えます。ただし、多くの人がイメージする「搾りたてそのまま」という意味ではない、という点が誤解されやすいところだと言います。
日本では、生乳とは牛から搾ったままのお乳を指します。この段階では殺菌もホモジナイズもされていません。ここで重要なのは、酪農家は搾った乳をそのまま放置するわけではない、という点です。品質を保つため、できるだけ早くバルククーラー搾った生乳を貯めて急速に冷やす、牧場に設置された大型の冷却タンク。約4度以下まで下げて品質を守る。という機械で約4度以下まで冷却し、集乳車(タンクローリー)で乳業メーカーへ運びます。
「生乳使用」のヨーグルトやプリンは何を意味するのか
では、「生乳使用」と書かれたヨーグルトやプリンはどうでしょうか。これらも原料として生乳を使っています。しかし、そのまま商品になるわけではありません。法律で定められた条件に従って殺菌を行い、必要に応じて均質化(ホモジナイズ)を行い、さらに発酵や加熱など、それぞれの商品に必要な加工を経て完成します。
つまり、原料は生乳ですが、製品は生乳そのものではない、という点が大きな違いです。ヨーグルト、チーズ、アイスクリーム、プリンなどは、生乳を原料として作られることがありますが、完成品はすでに加工された食品なのです。
生乳(搾ったままのお乳)
殺菌・均質化・発酵などを経た加工食品(ヨーグルト、プリンなど)。もはや生乳そのものではない。
だから「生乳使用」と表示していても、搾りたての状態を意味しているわけではないんですね。
小麦やお米で考える「〇〇使用」の理屈
川上さんは、少し視点を変えて身近な例で説明します。「北海道産小麦使用」や「国産米使用」と書かれた商品を見たことがある人は多いはずです。パンは小麦を使っていますが、小麦粉そのものではありません。おせんべいもお米を使っていますが、お米そのものではありません。
つまり「〇〇使用」という表示は、「原料として使っています」という意味なのです。生乳使用も、これとまったく同じ考え方だと言います。
| 表示 | 原料 | 完成品 |
|---|---|---|
| 北海道産小麦使用 | 小麦 | パン(小麦そのものではない) |
| 国産米使用 | お米 | おせんべい(お米そのものではない) |
| 生乳使用 | 生乳 | ヨーグルト・プリンなど(生乳そのものではない) |
配信の後半でも、川上さんはこの例えを繰り返しました。小麦は生えていても、買っても、倉庫に置いても、袋に詰めても小麦のまま。それと同じで、生乳は冷たくても温かくても生乳だ、という整理です。
この表示は法律的に問題ないのか
では、これは消費者の誤解を招く表示なのでしょうか。川上さんは、食品表示法食品の表示について定めた日本の法律。原材料名や栄養成分などの表示ルールを定めている。や景品表示法商品やサービスについて、実際より著しく優れているかのように見せる不当な表示を規制する法律。の考え方を挙げて説明します。
現時点のルールでは、原料として実際に生乳を使用していれば、「生乳使用」と表示すること自体は認められています。事実として生乳を原料に使っているのであれば、それは適切な表示だということです。
川上さんは酪農家として、「生乳使用」という表示そのものに違和感はないと言いつつ、本音も漏らしました。
「生乳使用」と「生乳100%使用」の違い
配信の終盤で、川上さんは表示の細かなルールにも触れました。裏面には「生乳使用」と書かれたものと、「生乳100%使用」と書かれたものがあります。この違いには、使用割合のルールが関係しているようです。
川上さんの説明によると、生乳が50%以上使われているものには「生乳使用」と書いてよく、49%など50%を下回るものは「使用」としか書けない、といったルールがあるとのことです。詳しくはJミルク牛乳・乳製品に関する情報提供や普及活動を行う一般社団法人。生乳や表示のルールなどをホームページで解説している。のサイトに、生乳や表示についてまとめられていると案内していました。
また、リスナーから「アイスの『牧場搾り』も生乳使用と書いてある」というコメントも寄せられました。川上さんによると、その商品はアイスミルク乳固形分・乳脂肪分の量によって分類されるアイスの一種。乳脂肪分の多い順にアイスクリーム>アイスミルク>ラクトアイスとなる。にあたるとのこと。アイスクリームは乳脂肪を加える必要があるため、生クリームやバターが使われることもあると補足していました。
「生乳」と書いてあると、むちゃむちゃ惹かれますよね。だからこそ誇大広告になっていないか、消費者を騙していないか、というところがちょっとデリケートなんです。
まとめ
「生乳使用」という言葉ひとつの背後にも、法律や品質管理、そして酪農の現場がつながっています。その背景まで知ると、ヨーグルトやアイスの選び方も少し楽しくなる——今回の質問は、そんな気づきを与えてくれるものでした。
川上さんは、スーパーへ行ったらぜひパッケージ裏の表示を見比べて、商品を選んでみてほしいと締めくくりました。言葉の意味を知るだけで、普段のお買い物が少し違って見えてくるはずです。
- 生乳とは、牛から搾ったままのお乳のこと。殺菌やホモジナイズをしていない状態を指す。
- 生乳は品質保持のため搾乳後すぐに冷却されるが、冷えても生乳のまま。「生乳=冷えていない牛乳」ではない。
- 「生乳使用」は、原料として生乳を使っているという意味。ヨーグルトやプリンは加工食品であり、生乳そのものではない。
- 実際に生乳を原料として使っていれば、「生乳使用」の表示は法律上問題ない。ただし誇大な広告は景品表示法の問題になり得る。
- 使用割合によって表示ルールが異なり、詳細はJミルクのサイトで確認できる。
