リスナーから届いた素朴な疑問
この日の配信で取り上げられたのは、YouTubeのコメントで届いた質問でした。牛は薄い緑の干し草を食べているのに、どうして牛乳は緑色にならないのか、という疑問です。
牛さんは薄い緑の干し草を食べていますが、なぜミルクは緑色にならないのでしょうか?真っ白い牛乳はどこの工程で作られるのですか?糞が緑ですよね。尿も緑なのでしょうか?
川上さんは「とても面白い質問」「いい観察をしている」と受け止めつつ、牛乳の白さ・草の緑・糞・尿・牛乳ができる場所という順番で、ひとつずつ答えていきます。
牛乳が白いのは「光の乱反射」だから
まず川上さんは、牛乳の白さは草の色とは関係がないと話します。白さの主な原因は、カゼインというタンパク質と、乳の中の脂肪の粒(脂肪球)です。
これらが光を乱反射させることで、牛乳は白く見えるのだそうです。川上さんは、鏡で太陽光を地面に反射させると光が白っぽく見えるのと同じ物理現象だとたとえます。
草の緑はどこへ消えるのか
では、あの緑色はどこへいくのでしょうか。草が緑なのはクロロフィルという色素のためですが、牛はこれをそのまま体に取り込むわけではありません。
牛は反芻動物なので、食べた草をまず第一胃のルーメンで微生物が分解・発酵させ、栄養に変換します。クロロフィルはこの消化過程で分解され、そのまま牛乳に移ることは基本的にないそうです。
つまり、草の色は消化の段階で失われてしまう、というわけですね。
糞や尿は緑になるの?
質問にあった「糞が緑」という観察について、川上さんは未消化の植物色素と胆汁色素(消化液の色)が混ざるためだと説明します。
完全にクロロフィルがそのまま出ているわけではないものの、植物由来の成分が残るので、緑から黄緑色に見えることがあるそうです。ただ、乳牛ではほとんど見られず、黒毛和牛でやや緑っぽく見える場合があるとのこと。
尿については、通常は透明から薄い黄色。人と同じくウロビリンなどの色素による黄色で、健康な牛の尿が常に緑ということはないと話します。
牛乳は「乳腺」で作られる再構成された栄養
最後に、白い牛乳がどこで作られるのかという疑問です。牛乳は乳腺(お乳の中)で作られます。
血液中の栄養素を材料にして、乳糖・乳脂肪・乳タンパクが合成されていきます。草がそのまま出ているのではなく、牛の体内で組み立て直された栄養の塊だと川上さんは表現します。
草を微生物が発酵させて栄養に変え、それが血液を通って乳腺へ運ばれ、そこで牛乳が合成される。とても複雑なプロセスを経ているからこそ、ミルクは白いんですね。
草を食べる
緑色のもとはクロロフィルという色素
第一胃で発酵
微生物が草を分解し栄養に変換。色素も分解される
血液へ
栄養素が血液に取り込まれる
乳腺で合成
乳糖・乳脂肪・乳タンパクが作られる
白い牛乳
カゼインと脂肪球が光を乱反射して白く見える
酪農家が好むのは「青々とした草」ではない
最後に川上さんは、酪農家ならではの余談を添えます。人はほうれん草などが青々としていると美味しそうに見えますが、牛の餌はそうとは限らないそうです。
青々とした緑の草には硝酸態窒素が多く、牛が食べると中毒症状が起こることがあるといいます。そのため、少し色が抜けて黄色がかった草のほうが栄養価が高く、酪農家としては好ましいのだとか。
まとめ
牛乳が白いのは、草の緑がそのまま出ているからではありません。色素は消化で分解され、牛乳は牛の体の中で作り直された栄養なんですね。素朴な疑問から、牛の体のしくみが見えてくる回でした。
- 牛乳の白さは、カゼインと脂肪球が光を乱反射することによるもの
- 草の緑(クロロフィル)は消化の過程で分解され、そのまま乳には移らない
- 糞が緑っぽく見えるのは植物成分と胆汁の色、尿は通常は薄い黄色
- 牛乳は乳腺で、血液中の栄養素から合成される
- 酪農家は栄養価の面から、青々とした草より少し色の抜けた草を好む
