餡に潜むアルコールの3つの仕事
まず小野寺さんが指摘するのは、餃子の中にはすでにアルコールが入っていることが多い、という点です。
1つ目の仕事は臭み消しです。豚肉の獣臭さの正体は、脂が酸化してできた成分や硫黄を含んだ成分で、これらはアルコールに溶けやすいといいます。
茹でたり焼いたりして温度が上がると、アルコールは水より低い温度で蒸発します。そのとき臭み成分も一緒に飛んでいくのだと説明されます。
2つ目の仕事は香り付けです。料理酒や紹興酒はお米を発酵させたお酒で、アミノ酸がたっぷり溶け込んでいます。
肉を加熱すると、このアミノ酸が肉の糖分や脂と反応し、香ばしい香りが生まれるといいます。ただし香りが強すぎると酒臭くなるため、加減のバランスが難しいと話されています。
3つ目の仕事はマスキングです。どうしても取り切れない臭みを、お酒の香りで上から覆い隠す手法です。
例として挙げられるのが大豆タンパクです。肉よりタンパク質を多く入れやすい一方で豆臭さがあり、それを抑えるためにアルコールで処理することがあるといいます。
臭み消し
獣臭さの成分をアルコールに溶かし、加熱時に一緒に飛ばす(共蒸発)
香り付け
紹興酒などのアミノ酸が肉の糖分や脂と反応し、香ばしさを生む
マスキング
取り切れない臭みを、お酒の香りで上から覆い隠す
今週のお取り寄せ:赤坂璃宮の餃子
ここで紹介されるのが、マルハニチロから社名が変わったウミオスが出す「赤坂璃宮の餃子」です。
赤坂璃宮は菅彦昭さんがオーナーシェフを務めるお店で、その監修による餃子だといいます。実際の店に焼き餃子はないため、赤坂璃宮の焼き餃子はこの商品でしか味わえないと語られます。
水も油もなしで焼けるタイプで、同種の商品の中ではやや高めです。ただしその分、高級感のある味付けになっているといいます。
その隠し味が紹興酒で、前半で紹介されたように肉の臭み消しや香り付けにほのかに効いていると話されています。
その隠し味っていうのが紹興酒でございまして、肉の臭み消しや香り付けにほのかに効いているんですね。中華料理の技術が使われている部分かなと思います。
餃子の皮を守るエタノールの役割
続いて話題は餃子の皮に移ります。ただし、すべての皮にアルコールが使われているわけではないと補足されます。
スーパーに並ぶような、作ってから時間が経って使われるタイプの皮に、添加物としてアルコールが使われています。成分表には「酒精」の2文字で記載されているといいます。
目的は日持ちです。エタノールには菌の繁殖や発酵を抑える効果があり、皮を練って放っておくと発酵してしまうのを防ぎます。
さらに重要なのが焼き目です。焼き目はメイラード反応によるもので、その成分は糖分です。発酵すると糖分が減り、焼き目の色がつきにくく、パリパリしにくくなるといいます。
つまり、家庭で焼いた餃子の焼き目がパリッと仕上がるのは、アルコールのおかげでもあった、というわけです。
皆さんがお家で餃子を包んで焼き目がパリッと仕上がる、これは実はアルコールのおかげだったってことですよ。
一方で、自分で小麦粉から皮を作る人はアルコールを入れる必要はないと話されます。入れる量はごく微量のため品質はそれほど落ちず、焼くときに飛ぶので皮が酒臭くなることもないといいます。
なぜ餃子を食べるとお酒が欲しくなるのか
いよいよ本題の、餃子を食べると無性にお酒が欲しくなるのはなぜか、という話です。
根拠として紹介されるのが、アメリカのインディアナ大学のアイラーさんたちが肥満の専門誌『Obesity』に2015年に発表した研究です。
この研究では、お酒を点滴で血管に直接入れ、口や胃を使わずに脳だけにアルコールを効かせた状態を作りました。そのうえで、食欲がどう変わるかを調べたといいます。
結果、食べ物の匂いを嗅いだとき、脳の反応がより強かったのはお酒が血液に入っている方でした。その後に食べた量も、お酒が入っている方が多かったといいます。
食べ物の匂いへの脳の反応がより強く、その後に食べる量も多かった
食べ物の匂いへの反応は相対的に弱かった
これはアルコールに、食べ物をいつもより魅力的に感じさせる力があることを意味すると解釈されます。
焼き餃子はアペリティフ効果で最強か
ここから小野寺さんは、焼き餃子はこのアペリティフ効果で最強なのではないか、という持論を展開します。理由は、焼き餃子が香りの複雑な料理だからです。
焼きたての餃子から立ち上る香りが、鼻からふーっと入ってくる。これをオルソネーザルと呼びます。
そして口に入れて噛んだ瞬間、肉や小麦粉の香りが鼻の奥に抜けていく。これをレトロネーザルと呼びます。
しかもその香りは重層的だと語られます。餡の紹興酒、生姜やニンニク、皮の小麦粉、そして焼き目のメイラード反応が生む香ばしさが、何層も折り重なっています。
段階的に、かつ重層的に香りを感じられるため、アルコールで匂いに敏感になった脳が強く反応するのではないか、というのが小野寺さんの見立てです。
なお番組では、この「焼き餃子がアペリティフ効果を最大化する」という説は小野寺さん自身の持論であり、特定の研究に基づくものではないと位置づけられています。
餃子中毒とパブロフの犬
アルコールを飲むと餃子が欲しくなり、餃子を見るとアルコールが欲しくなる。この繰り返しが「餃子中毒」を生むと語られます。
最高の組み合わせを何百回も繰り返すと、脳が学習します。焼ける匂いや音、熱々の餃子をお酒で流し込む喜びが、ワンセットで脳に刻まれていくといいます。
これはパブロフの犬と同じ仕組みだと説明されます。餃子の焼ける音を聞くだけで、餃子とお酒が欲しくなるというわけです。
小野寺力おすすめのドラゴンハイボール
最後に、小野寺さんおすすめのアルコールドリンクが紹介されます。それがドラゴンハイボール、紹興酒を炭酸で割ったものです。
紹興酒はお米を発酵させたお酒で、アミノ酸を多く含みます。餡と同じ紹興酒の香りと旨味をお酒側でも合わせると、旨味をより感じやすくなるといいます。
さらに炭酸で割ることで口当たりが軽くなり、炭酸には油を細かくする効果もあるため、餃子がどんどん進むと語られます。
私はね、餃子が美味しいなと思ってきたら、ドラゴンハイボールが欲しくなってきたなっていう風に感じちゃう方の餃子中毒でございます。
まとめ
餃子とアルコールは、餡・皮・そして脳という3つの層でつながっていると小野寺さんは解説します。臭み消しや香り付けから、パリッとした焼き目、さらにお酒が欲しくなる心理まで、餃子の魅力の裏側にはアルコールの働きが隠れていました。
- 餡のアルコールには、臭み消し・香り付け・マスキングという3つの仕事がある
- 市販の皮の酒精(エタノール)は、日持ちとパリッとした焼き目のために使われる
- アルコールは食べ物の匂いへの脳の反応を強める(アペリティフ効果)と、2015年の研究が示している
- 餃子とお酒の結びつきは、繰り返しによる学習(パブロフの犬)として説明される
- 小野寺さんのおすすめは、紹興酒を炭酸で割ったドラゴンハイボール
