休みは仕組みで作る、というテーマ
今回のテーマは「休みは仕組みで作る」です。丸亀製麺が全店一斉休業を行ったニュースをきっかけに、休める会社の作り方を掘り下げていきます。
経営をしていると、従業員をもっと休ませてあげたいと思っている社長さんは多いと話されています。長く働いてほしい、家族やプライベートの時間も大切にしてほしい、という思いです。
ただ現実は、人手不足でシフトはギリギリ。誰かが休めば誰かにしわ寄せがいってしまいます。
今月は忙しいから来月に、もう少し余裕ができたら休みを増やそう。そう考えているうちに、なかなか休んでもらえず時間だけが過ぎていく、ということが起きがちだといいます。
丸亀製麺の全店一斉休業という決断
そんな中で起きたのが、丸亀製麺による全店舗一斉休業です。7月29日に「丸亀ファミリーホリデー」として実施されました。
全国870店舗のうち、ショッピングセンターなどのテナント店舗を除いて終日休業。飲食店にとって夏休みは書き入れ時ですが、その真っただ中でお店をまとめて閉める決断です。
一日閉めれば、その日の売上は当然ゼロになります。普通に考えるとすごい決断だと松田さんは話します。
しかもこれは思いつきではなく、昨年から続く2年連続2回目の取り組みでした。
注目すべきは前日の設計です。7月28日は店舗メンテナンスのために閉店時間を繰り上げ、営業時間を短縮していました。
明日が休みだから遅くまで頑張って準備してね、ではありません。休みの前日までしっかり設計されている点に、細部までの作り込みが表れていると考えられます。
ルール化はお願い、仕組み化は構造
ここで松田さんがいつも伝えている考え方が出てきます。ルール化はお願い、仕組み化は構造、という区別です。
ルール化は、有給を取ってくださいね、なるべく休んでくださいね、と方針で掲げること。ただ、やるかどうかは従業員本人の意思に任されます。
だから忙しいと休みは後回しになりますし、真面目に取り組んでいる人ほど「自分が休んだら迷惑をかけるかも」という遠慮が出てしまいます。
一方、仕組み化は構造です。やらざるを得ない形で業務に組み込まれています。丸亀製麺の一斉休業はまさにこれで、そもそも店が開いていないので出勤のしようがありません。
休んでいいよではなくて、この日は全員が休む日ですよというふうに構造で決めてしまってます。やる気を出させるよりも先に、やらざるを得ない仕組みを作るということですね。
人が動けないのは、何を・いつまでに・どのように・なぜ、のどれかが欠けているからだと松田さんは指摘します。丸亀製麺の取り組みでは、この4つがうまく埋まっているから実行できたのではないか、という見方です。
休める会社をつくる3つの設計
丸亀製麺の取り組みを仕組み化の設計で見ると、大きく3つあると松田さんは整理します。カレンダー化、例外をなくす、継続する、の3点です。
まず1つ目のカレンダー化です。「7月29日は休みです」と決めたことが、まさにこれにあたります。
余裕ができたら休もう、の「余裕」は永遠に来ないと松田さんは言います。温泉や海外旅行と同じで、日付を決めないと願望のまま終わってしまいます。
今すぐできなくても、経営計画書に「5年後に一斉休業できる会社にする」と書くだけでもカレンダー化の役割を果たすといいます。2030年にはみんなで丸一日休める日を作る、と日付を決めるのも効果的です。
プリマベーラでも、経営計画書の年間カレンダーの中に、各従業員が5日間の休みを取る日をあらかじめ決めているそうです。
正社員は約140名。誰がいつ休むかが事前に書いてあるので、前後のスケジュールやシフトの調整ができます。日付を入れた瞬間に「予定」になり、入れなければ「願望」で終わる、というわけです。
例外をなくすと、心から休める
2つ目は例外をなくすことです。ここが上手だと松田さんは評価します。
休みを増やすなら交代制でもできるはずです。全店を閉めなくても、交代で休めばいい、と考えるのが普通です。
ただ交代制には弱点があります。自分が休んでいる日は誰かが働いているため、真面目な人ほど「自分だけ休んでいいのか」と申し訳なさを感じてしまいます。
休んでいてもチャットやLINEを反射的に確認したり、店長ならお店から電話が来ないか、クレームはないかと気になったりします。心から休めない時があるのです。
本当に全店舗お休みであれば、当然電話鳴りませんし、みんな休んでるんで堂々と休めると。ここら辺も、みんながちゃんと休めるっていう形にしているんですね。
プリマベーラでも同じ考え方で、5日前後の長期休暇の日は基本的に仕事をしてはいけないルールです。これは社長も含みます。
例外を作ると「やらなきゃいけない」雰囲気が生まれます。社長だけやらなくていい、といった方針は浸透しづらいもの。例外をなくす設計にすることが、実行確率を上げるポイントだといいます。
継続することで仕組みになる
3つ目は継続することです。最初にやった時はイベントですが、続けていくとイベントとして定着していきます。
丸亀ファミリーホリデーという名称では2年目ですが、終日一斉休業そのものは2024年にも行われていたとのニュースがあり、休業自体は3年連続ほどになっているそうです。
1回目はイベントですね。2回目から仕組みとして、会社の資産とか周りに定着していくっていうのがあるんじゃないかなと思います。
一度きりの「みんな休んでいいよ」で終わらせず、続けることで仕組みになっていく。来年もこの会社で働こう、という気持ちにもつながる、時代に合わせた仕組み作りだと松田さんは見ています。
休める会社は仕組みのある会社
結局伝えたかったのは、休める会社は仕組みのある会社だ、ということです。
どんなに「従業員を大切にしています」と言っても、思いだけでは従業員は休めません。「疲れたら休んでいいよ」と100回言うより、会社として休んでもらう仕組みがあるほうが休める会社になっていきます。
そのために属人化をなくし、仕組みを作り、さらにAIを活用して効率化を進める。その先にみんなが休んで楽しく働ける状態を作ることが、健康経営にもつながっていくといいます。
属人化のサインと、刈り取りと種まき
休めない会社は、属人化のサインでもあると松田さんは指摘します。あの人がいないと現場が回らない、あの業務はあの人にしかわからない、という状態です。
これがあると一斉どころか交代で休むことも難しくなります。だから一つの業務を二人以上ができるダブルキャストにし、全員が同じ日に休んだら何が困るかを書き出して先回りで対策していくことが必要です。
さらに、時間の使い方を刈り取りと種まきで考えると見え方が変わります。今日従業員を休ませなくても売上は落ちないので、休みの仕組みは後回しになりがちです。
ただ休みは「種まき」であり、緊急ではないが重要なこと。後回しにするほど離職率が上がり、仕事ができる人がいなくなりかねません。長期で見れば優先順位は意外と高い、というわけです。
今の売上に直結する業務。休ませなくても今日の売上は落ちない
緊急ではないが重要なこと。休みの仕組みはこちらで、後回しにすると離職につながる
実際、丸亀製麺では離職率が低下しているという数字が出ているそうです。もちろん他の取り組みとの合わせ技だとしつつ、1日休業するよりも大きなリターンが出ている可能性もあると松田さんは見ています。
なぜ休むのかを理念とつなげる
最後に、休みを理念とつなげる話です。設計のポイントは、カレンダーで日付を決める、例外をなくす、継続する、の3つ。
シフト表でお盆休みや年末年始が書いてあれば、それも同じ理屈で休めているということ。休みを増やしたいなら、まずカレンダーに落とし込むことが大事だといいます。
そのうえで、なぜ休みを増やすのかを自社の理念や思いとつなげると、休みがより効果的に仕組みとして回っていきます。
プリマベーラの経営理念は「働く従業員の生活の安定と生きがいを創出する」こと。仕事も生きがいにしてほしいけれど、プライベートや趣味の時間も大切にしてほしいという思いがあります。
その経営理念の実現のために、この日をみんなで休みにしましょうと。だからその休みの日は、皆さん自分自身の生きがいを最大限に楽しんでください、みたいなメッセージがあると、より良い休みの使い方になるんじゃないかなと思います。
まとめ
休みはお願いではなく構造で作るもの。カレンダーで日付を決め、例外をなくし、継続することで、思いだけでは実現しなかった「休める会社」が仕組みとして回り始めます。
- 休みは本人の意思任せ(お願い)ではなく、やらざるを得ない構造として設計する
- 設計の柱は、カレンダー化・例外をなくす・継続する、の3つ
- 全員が休む形にすると遠慮や中途半端な休みがなくなり、心から休める
- 休めない会社は属人化のサイン。ダブルキャストで一業務を複数人ができる状態にする
- 休みは緊急でないが重要な「種まき」。なぜ休むかを理念とつなげると効果が高まる
