出社か在宅かよりも大切なこと
今回のテーマは、GMOが在宅勤務を廃止したというニュースです。ただし松田さんは、在宅勤務がいいか悪いかを話したいわけではないと最初に断っています。
多くの発信やコメントは「出社がいい」「在宅がいい」「IT企業なのに廃止するのか」といった賛否が中心でした。しかし松田さんは、仕組みの視点で見ると別の論点があると指摘します。
GMOは2020年1月頃、新型コロナウイルスの感染拡大に備えて早い段階で在宅勤務へ移行したとされています。その後、週3出社・週2在宅推奨という形を経て原則出社に変更し、今回、在宅勤務の推奨を完全に廃止したと紹介されています。
ただし状況に合わせて調整していくという発信もあるため、完全な廃止というわけではないと松田さんは補足しています。
目的を忘れた仕組みは「風景」になる
松田さんが問題にするのは、制度だけを残すことに一貫性があるのかという点です。前提が変わっていく中で、在宅勤務の仕組みを守り続けることが正しいとは限らないと話します。
たとえば会議で毎回読み上げているのに誰も使っていない数字、毎週のチェックシートや報告書、毎回の承認などです。「なんでやってるの」と聞いても「昔からやってますよ」となる状態です。
こうなると、仕組みを維持することが目的になってしまいます。アクションが生まれない仕組みは、安心ではなくコストになっているという側面があると松田さんは指摘します。
数字ひとつでも、記入・集計・確認の手間が発生します。従業員数で掛け算すれば、大きな時間のロスになります。
自社で4〜5年続けたチェックをやめた話
松田さんの会社でも、4〜5年続けてきたチェックを先月の経営会議でやめたそうです。やめたのは、コロナ禍から続けてきた全従業員の体調確認でした。
毎月チェックしていたものの、ここ数か月は体調不良者が爆発的に増えることもなく、チェックから大きなアクションが生まれることもなかったといいます。
やめた理由は大きく二つです。体調不良者が増える状況が起きなかったこと、そしてアクションが生まれなかったことです。
元々の目的は体調不良者が増えていないかの確認でした。その目的は達成されており、アクションも生まれていない。記入・集計・確認の手間だけが残る形骸化した仕組みになっていたため、やめたと説明します。
やめるか続けるかの二択ではありません。継続・改善・統合・廃止という選択肢で考えることが大切だと松田さんは話します。
廃止も「完全にやめる」とは限りません。仕組みを作っておけば、状況が変わればいつでも戻せる点もポイントだといいます。体調確認も、冬にかけて感染症が広がれば再開すればよいだけだと述べます。
仕組みは「つながり」で見る
今回の本題は、仕組みは単体ではなく「つながり」で見るという考え方です。目的、横の仕組みとのつながり、そして時間軸を意識すると、続けるか変えるかの意思決定がしやすくなります。
最も大事なのは目的です。目的は企業ごとに異なります。全国から専門人材を採りたい企業にとっては、在宅勤務は強力な採用戦略になるかもしれません。
一方、若手育成や意思決定の速さを重視するなら、在宅より対面の方が価値が大きくなるかもしれない。在宅勤務そのものに本質的な良し悪しがあるわけではない、というのが松田さんの立場です。
だからこそ、他社が取り入れているからと形だけ真似てもうまくいきません。自社の目的と戦略につながっているかを見極めて導入することが重要だと話します。
二つ目は横の仕組みとのつながりです。在宅勤務は採用・教育・評価・会議・コストなどにつながります。採用に有利でも、教育面では育ちにくくなることもあるかもしれません。
だから部分最適ではなく、全体で何を優先するかを決める必要があります。一つの仕組みを最適化しても、会社全体が良くなるとは限らないからです。
三つ目は時間軸です。2020年に導入した在宅勤務を、6年経った今も同じ形で正しいと言えるかはわかりません。当時はChatGPTやClaudeが今ほど普及しておらず、事業も顧客も仕事のやり方も変わってきています。
なぜ仕組みをやめられないのか
多くの企業は、逆に一度作った仕組みをやめられない方が多いと松田さんは言います。「昔からあるから」「続けているから」という理由で、ずっと続けてしまうのです。
やめられない大きな理由は、その仕組みに取り組んでいる目的がわからないことです。目的が不明だと、現場は続けるしかありません。
幹部も誰が何のために決めたのかを把握していなければ、無駄な仕組みや時間のかかる仕組みだけが増え、かえって生産性が下がってしまいます。
だからこそ、仕組みを作るときには、何のために・何を達成するためにあるのかを考え、整備して作っていくことが大切だと述べます。
これからは「仕組みを編集する力」
今日一番伝えたかったこととして、松田さんは仕組みを編集する力が重要になると語ります。AIを仕組みに入れるにしても、ただ入れ込むだけではうまくいきません。
全体のつながりの中で、作る・試す・確認する・変える・まとめる・やめるをぐるぐる回すことで、生きた仕組みになると話します。
リスナーへの提案として、本やニュース、テレビ、雑誌で仕組みを見たときに、単体の点で見るのではなく全体で見てほしいと呼びかけます。
自社の仕組みを点検してみるのも一つの方法です。今やっている仕組みを一言で説明できるか、最近その仕組みからどんな行動が生まれたか、そしてその仕組みはまだ必要かを問い直すとよいといいます。
仕組みを作り続けるだけでは工数がどんどん増えてしまいます。作ることと手放すことを両方回し続けることが大切だと締めくくられました。
まとめ
GMOの在宅勤務廃止を題材に、仕組みは単体で良し悪しを決めず、目的・全体のつながり・時間軸で見直すことが大切だと解説された回です。作ることと同じくらい、改善し手放すことも重要だと語られました。
- 在宅か出社かの是非よりも、目的と戦略に仕組みがつながっているかが本質
- 目的が忘れられ、アクションを生まない仕組みは安心ではなくコストになる
- 見直しは継続・改善・統合・廃止の選択肢で考え、廃止しても再開できるようにする
- 仕組みは目的・横のつながり・時間軸の3つの視点で見極める
- 多くの企業は目的が不明なために仕組みをやめられない。作ると手放すを両方回し続けることが鍵
