リスナーの質問から始まったAI活用の話
この回は、前回番組に寄せられたお便りがきっかけです。「起業するならAI一択だよね」という趣旨の相談に答える形で進みます。
質問をくれたのはエギングロッドさん。高宮さんや長谷川さんが実際にどうAIを使っているか、そもそもどう触り始めたらいいのかを、ざっくばらんに話していきます。
二人はともにノンエンジニア。だからこそ、専門知識がなくても始められる実践的な使い方が語られます。
高宮さんのSNS投稿自動化とクリッピング術
高宮さんは、周囲が「AIを触らないとやばい」と焦る空気の中で、自分もつい焦ってしまうと率直に話します。
ただ、去年前半にCursorでバイブコーディングを試したときは、超絶挫折したと振り返ります。エラーの解決を延々と指示するうち、自分がマシン側になっている感覚になったそうです。
コーディングしてるとこでスタックして、それをなんか問題を解決してとか、違う解決方法を提案してとか、もう何もわからず、ただひたすらそれを言うこっちがマシン側になるみたいになって。「ああ、もうあかんわ」ってなって。
転機はClaudeの登場でした。ノンエンジニアにとって何がとっつきやすいかというと、普通の業務プロセスを自動化しやすい点だと言います。
高宮さんが自動化したのは、番組「ぼくらの戦略論」の投稿文です。日曜の深夜に配信されるエピソードを、月曜朝七時半にX、Facebook、LinkedInへ自動投稿する仕組みを作りました。
流れはこうです。まずPodyでPodcastを書き起こして記事化し、その記事をClaudeに読み込ませます。
一方でClaudeにSNSのアルゴリズムを分析させ、リーチやエンゲージが上がる投稿の型を持たせておきます。そこに記事をぶつけて、投稿ドラフトを出させる仕組みです。
ドラフトには高宮さんが手を入れます。そして最初の案と最終稿の差分をClaudeに学習させ、さらに投稿後のKPIも拾わせて結果を分析させています。
人力の修正とその結果を二回学習させて、それを蓄積してって、一発目のドラフトの精度を上げようとしているっていうところで。
以前は深夜零時の配信後に一時間ほどかけて投稿していたのが、今は三十分以内で終わるようになったそうです。
さらに高宮さんは、記事のクリッピングも自動化しています。Xで気になった投稿をブックマークすると、その中身やリンク先をClaudeがNotionに保存する仕組みです。
保存の際には、要約や自分でつけたタグを添えます。後からタグで横串検索すると、テーマごとに自分が気になった記事のまとめができる、という使い方です。
CoWorkとClaude Codeの使い分け
話題は、長谷川さんの使い方に移ります。長谷川さんは、個人、福祉の会社、ライティングの会社の三つに分けて考えていると言います。
直近チャレンジしているのが、GeminiからCoWorkへの乗り換えです。番組CTOの今井さんとの雑談で、使い分けの整理がついたと話します。
コーディングを伴う制作物はローカルのファイルを扱うためClaude Code一択。一方、書籍のライティングのようにコーディングを伴わない制作物にはCoWorkが便利だ、という整理です。
かなりハマってるので、これは結構革命的にいいかなって今思ってますね。
高宮さんの理解では、CoWorkは複数のエージェントを同時並行で走らせ、最後に統合するのが得意なツールです。コーディングというより業務プロセス改革に向いていると言います。
ただし外部連携には制約があります。相手のアプリがAPIを開放していれば連携は簡単ですが、そうでない場合は力技が必要になります。高宮さんはClaude in Chromeでスクレイピングして代替しているそうです。
書籍原稿のようなライティングだけなら、CoWorkでなくClaudeのチャットでも十分だと高宮さんは言います。並行処理で時間を短縮したいときにCoWorkが効く、という考え方です。
ローカルファイルを扱う、コーディングを伴う制作物向け。外部連携のテンプレがないものを自分で準備するときに使う
複数のエージェントを同時並行で走らせ、業務プロセスを改革・自動化するのに向く。一定の制約内での外部連携が便利
CTO今井さんが語るツールの本質
ここで、収録を聞いていた番組CTOの今井さんが飛び入りで加わります。高宮さんは動揺させようと振ったものの、今井さんは淡々と話し始めました。
今井さんの見立てでは、Anthropicもさまざまな機能を出す中で、どんなユースケースが生まれ、どれが生き残るかを見ている段階です。CoWorkの役割も変わってきていると指摘します。
高宮さんは、従来のシステム開発の流れになぞらえます。ビジネス要件定義、プロセスの再設計、システム仕様の確定、そしてコーディング。この上流工程がCoWork、実装以降がCodeではないか、という見立てです。
Accentureの戦略部門がCoWorkまでで、Accentureの実装部隊以降がコードなんじゃないかっていう、そんな感覚。
これに対し今井さんは、扱える人であれば手段はどうでもよく、モデルが同じならやれることはほぼ一緒だと答えます。違いはインターフェースやりやすさ、そして使う人の慣れだと言います。
上流工程を今までやってきた人、そういうコンサルやってたりとか、すごいドメイン知識を持ってる人、すごい詳しい人が使えば、おそらく何でも精度高くなってくるんじゃないかなと思いますね、本当に。
今井さんはCoWorkとCodeの決定的な違いも挙げます。CoWorkは自由にツールをインストールできません。一方Codeはパソコンの中でできることを全てできる自由さがあります。
たとえばCodeなら「Chromeをインストールして」と言えばインストールでき、それをClaude Codeに使わせることもできます。その自由さがある反面、CoWorkは何もインストールできないぶんセキュリティ的に安全だと説明されます。
ノンエンジニアでも累乗的に伸びる習熟のしかた
高宮さんは、Cursor時代に挫折した自分が、本格的にCoWorkを使い出したのは一、二ヶ月前だと明かします。それでも使うほど楽しくなり、習熟度が曲線的に上がっていく実感があると言います。
象徴的だったのが、CoWorkからClaude in Chromeを使えばウェブのスクレイピングは大体できると気づいた瞬間です。「できません」と言われても別の道が見えるようになり、世界が開けた感覚があったそうです。
ノンエンジニア、全く触ったことないところから触り続ければ習熟度が上がり、習熟度が上がるのがリニアじゃなくてかなり曲線的に上がっていくので、やったもん勝ちでガンガンやるべきじゃないか。
高宮さんは、前回のエギングロッドさんの質問にも触れます。二週間あるなら、身近な小さな課題からどんどん解決していこう、という呼びかけです。
Twitter投稿の自動化やクリッピングといった小さなことから始め、スパゲッティ状になったらまたClaudeで整理すればいい。ボトムアップでコツコツ自動化していけばいい、という考え方です。
人事労務システムも個人ダッシュボードも作れる
長谷川さんは、より具体的な事例を挙げます。同い年のビジネスパートナーが一人で、人事労務システムをClaude Codeで作ったという話です。
給与計算、勤怠管理、タイムカード、シフト管理、入社手続きまで全てを一つのシステムで回しており、百人以上の全社が問題なく使っているそうです。
長谷川さんは、これを質問者に当てはめて考えます。バイト先や部活、個人経営の飲食店など、何かを管理するシステムはすぐ作れる、と言います。
個人経営の飲食店で働いている時に、SaaSのコストはみたいな時にサクッと、じゃあ明日には持ってきたわけですよ、これが。作れるんで。
コストが高くて導入できなかったニーズは無限にある。そこから入るのはありだ、というのが長谷川さんの見立てです。
高宮さんは、これをシステム開発の上流工程になぞらえつつ、人力の改善活動とそう変わらないと言います。慣習で収束したやり方を一歩引いて定義し、自動化すればいい、という発想です。
AIだからってすっげえ難しいツールを使いこなさなきゃいけないみたいな、なんかメンタルバリアがあるけど、慣れだけの問題なんじゃないかってなんか思っちゃう、今日この頃。
長谷川さんも個人の例を挙げます。習慣化したいことの一覧、体重、タスク、読書、格言のストックなどを一元化した、個人の経営ダッシュボードをClaude Codeで一日で作ったそうです。
欲しいものや今やっていることを、そのまま置き換えていけばいい。すごい発明をしているわけではない、という点で二人の見方は一致します。
AI同士が会話し始める時代と、始める勇気
高宮さんは、最初の一回にメンタルバリアがあると指摘します。投稿一つなら二十分で終わるのに、プロセスを定義する先行投資に二時間かかることもあるからです。
目先のタスクを優先すると、つい今までのやり方に逃げてしまう。慣性の法則は強い、と高宮さんは言います。
絶対後で効いてきて累乗的に効果が出るんで、絶対やるべきなんですよ。
AIの強みは、厳密でタイトなシステムにできる点だとも語られます。目的とパラメータを定義し、スケジューリングすれば、サボることなくPDCAが回り続けます。
話は少しずつ未来へ広がります。長谷川さんは、高宮さんの思考をClaViにシンクしておくと、向こうから提案が来るのが「えげつない」と話します。ここでは、高宮さんの発言を学習したAIボットが常に最適化された案を返してくる様子が語られています。
二人は、収録している自分たち自身が「AIボット」ではないかと冗談を交わします。配信者が話し、AIボットが聞いて、AIボットがまとめる。そんな構図が現実になりつつある、という話です。
高宮さんは、人が介在しなくなると、AI同士が人には理解できない言語でやり取りを始め、効率が上がる一方でブラックボックス化も進むと予想します。
今のLLMが自然言語をベースにしてるんだけど、その先には自然言語をベースにしたい、マシン言語をベースにしたいLLMみたいなのができるんじゃないかなと思って。
長谷川さんは、それが落合陽一さんの言うデジタルネイチャー落合陽一さんが提唱する概念。デジタル技術が自然のように環境へ溶け込み、人が原理を意識せずに恩恵を受ける世界観を指すとされます。や「魔法の世紀」かもしれないと応じます。原理はわからないが結果が出る、という世界です。
最後に長谷川さんがまとめます。肩肘張らず、身近な自分が欲しいものや、身近な人の困りごとの解決からAIを使い始めればいい、と。
めちゃすごい魔法なんだけど、MP消費量0.1だから使いまくればいいじゃん。使いまくってるうちに、魔法を使うってなんか楽しいなみたいになってくるんで。
長谷川さんは、新卒でリクルートに入りSQLを叩いていた頃、理系院卒のメンターに「なんでわからないの」という顔をされた経験を振り返ります。今はClaude Codeがある、と続けます。
まとめ
AIは特別な人だけのものではなく、ノンエンジニアでも身近な課題から始められる。二人は自分たちの実践を通じて、そのハードルの低さと、続けることで効果が累乗的に伸びていくことを語りました。
- AIは焦って身構えるより、身近な業務や欲しいものから小さく始めるのが入り口になる
- CoWorkは業務プロセスの自動化、Claude Codeはコーディングを伴う制作に向くと使い分けられている
- 人力の修正や結果をAIに学習させ、ヒューマンインザループでPDCAをタイトに回すと精度が上がる
- 人事労務システムや個人ダッシュボードなど、今までコストで諦めていたものも作れる時代になっている
- 最初のプロセス定義は先行投資だが、続けるほど習熟が曲線的に伸び、効果が累乗的に効いてくる
