学生起業志望者へ「AIを触り倒せ」というアドバイス
今回はまず、リスナーのエギングロッドさんからのお便りが紹介されました。二十五歳までに起業したいが、在学中に二週間以上の自由時間ができたら何をするか、という質問です。
高宮さんの最初の答えはシンプルでした。起業したいなら今やればいい、というものです。
そもそも二十五歳までに起業したいっておっしゃいますが、今起業すればいいじゃん。学生で時間があって、しかも二週間フリーだったら、もう起業しちゃいなよっていう話だと思います。
その上で、質問に真正面から答えるならAIを触り倒すべきだと話します。AIの習熟度が、そのまま事業の作りやすさに直結する時代だからです。
AIの習熟度が累乗的に事業の作りやすさに直結してるんで、触ったもん勝ちだと思うんですね。
小さな課題を絨毯爆撃して大きなニーズを見つける
長谷川さんは、若い人には「AIかける何か」の「何か」の経験がなく、そこが弱点になりがちではと問いかけます。
これに対し高宮さんは、AIによってプロダクトを一つ作るコストが極小化する点を挙げました。だからこそ、たくさん作ってしまえばいい、という発想が成り立ちます。
例として、授業の代返を管理するアプリや、テニスコートのキャンセルを自動で取るアプリが挙げられました。以前ならエンジニアがスクリプトを書くコストが重く割に合わなかった小さな課題も、AIなら気軽に解決できます。
高宮さんは、この「小さな課題の絨毯爆撃」が大きな発見につながると話します。
小さな課題の約数がもうちょっと実は公約数にできて、その公約数をどんどん膨らましていくうちに、最大公約数になって、大きな市場の共通ニーズに見つかるみたいなパターンもあると思う。
長谷川さんは、専門知識がないのは一見ビハインドでも、学生は社会人より時間があるため絨毯爆撃に物理的に時間をかけられるチャンスだと受け止めました。
AIを勉強する傍ら、ついでにそれを作れば置いとくだけで、小さな課題が解決されて飲みも奢ってもらえるみたいな話でやればいいじゃん。
いい緊張感を保つチーム運営の悩み
ここから今回の本題、長谷川さんのお悩み相談に移ります。テーマは上司と部下、チームメンバー間の距離感の取り方です。
仲良しになりすぎると目標達成を厳しく求めづらくなり、逆に厳しくしすぎると恐怖政治に陥る。そのバランスに最適解が見つからないという悩みです。
仲良しこよしになると、しっかり目標を達成しようぜみたいなことを言いづらくなる。じゃあ厳しい路線でやろうとなると恐怖政治に陥るわけじゃないですか。いい緊張感を保ちながらモメンタムを失わないチームの在り方ってどうしたらいいですかね。
「己を知る」リーダーシップスタイルと組織のフィット
高宮さんは、ハーバード・ビジネス・スクールがリーダー育成を掲げる学校であることに触れ、そのタグラインを紹介しました。
ノウユアセルフ、自分を知れと。What's your leadership styleなんですよ。
リーダーシップのスタイルは、その人のパーソナリティに強く依拠します。マメにフォローする芸風か、「いいからやれ、ついてこい」という芸風か。無理に違うスタイルをやってもメンバーはついてこないと話します。
ここで高宮さんは「リーダー・オーガニゼーション・フィット」という考え方を示します。本来は自分の芸風に合った組織を作るべきで、無理に既存組織へ自分をはめ込むより、自分の芸風を前提に組織を作り替える方が健全だと言います。
長谷川さんの難しさは、御大やキーマンが築いた組織にあとから入り、自分で作ったわけではない組織にはまっている点だと高宮さんは指摘します。だからこそ、リーダー側から組織へフィットを作りに行く必要がある状況だと整理しました。
芸風の中でキャパシティを広げ、隣のタイプまで引き出しを増やす
一方で高宮さんは、自分の芸風に小さくこだわりすぎると器が広がらない、とも釘を刺します。十人の部活しか率いたことのない芸風のまま、千人の組織に当てはめようとしても無理があるからです。
スタイルの根本的な属性は変えられなくても、その中でキャパシティを広げる自己研鑽は必要だと話します。
ここで例に出されたのが、漫画『HUNTER×HUNTER』の水見式です。自分のオーラのタイプがあり、真反対のタイプは取れないが、隣のタイプならギリギリ引き出せる、という考え方です。
鬼軍曹タイプがギリギリツンデレまではできるけど、めちゃめちゃマメなお母さん、密着度高いリーダーシップはできないみたいな話。隣のタイプまでは引き出しを増やす。だけどベースは自分のタイプの中でキャパシティを広げるだと思うんですよね。
問われた長谷川さんは、自分のタイプを振り返ります。以前のモメンタムフォース時代は、マッチョイズムで「猛烈に働くぜ」を押し付け、自分を含めメンバーが病んでいく組織になってしまったと自省しました。
モメンタムといういい言葉でまといつつ、とにかくマッチョイズムでもう猛烈働くぜみたいなのを押し付けちゃってた自覚があって。結構みんな、自分も含めて病んでいくみたいな組織になっちゃった。
その反省から、今はそれぞれの強みを尊重し、一辺倒なマッチョイズムの押し付けは選ばないスタンスでいると話します。高宮さんはこれを、教科系なのに正反対の操作系までマスターしようとしていた状態だったのでは、と水見式にたとえました。
間接的に影響力を及ぼす「円の拡大」とビジョン・制度の一気通貫
長谷川さんは変わらないスタンスとして、口だけでなくまず自分が行動し、それを周囲に波及させる率先垂範を挙げます。ただ、二、三十人ならそれが成り立つが、規模が増えたときのキャパシティに不安があると打ち明けました。
以前の回で出た「山頂に立ったことがないのに山頂の景色を想像しながらマネジメントするのは難しい」という話が、自分に返ってくると言います。
これに対し高宮さんは、そのアナロジーは今の話の真逆だと切り返します。
十人でもいいからトップをしていれば、十人から百人、百人から千人にキャパは広げられる。ただ、ずっとナンバーツーしかやってない人は、そこのジャンプの方が大きい。
その上で高宮さんは、背中で引っ張るスタイルは千人全員には見せられないと指摘します。だから十人に背中を見せて引っ張り、その十人がさらに下の十人に見せていく。こうして影響力のスパンを芋づる式に拡大していくのが「円の拡大」だと説明します。
自分が率先垂範
近くの十人に背中を見せて引っ張る
感化された人が波及
その十人が各々の下の十人を引っ張る
間接的な影響拡大
直接接していない人まで感化され動く
長谷川さんは自身の福祉事業を例に挙げます。今は管理者に飴と鞭で目標を渡せるが、百人、千人になれば直接は無理だと言います。だからビジョン、経営戦略、事業戦略、個別戦略へと立ち返ると話しました。
ビジョンがあって、経営戦略があって、事業戦略があって、個別戦略がある。ビジョンがあるから制度やカルチャー、仕組み、一個一個の言葉に落ちていく。それでしか百人、二百人への波及はないなっていう。
高宮さんは、ビジョンは夢側で引っ張るツール、制度はインセンティブや罰則で影響を及ぼすツールだと整理します。これらが間接的な影響力を行使する経営者向けの道具になります。
長谷川さんはリクルートを例に、数万人規模でも「自ら機会を作り出し、機会によって自らを変える」という理念が浸透し、三十歳での卒業を後押しする制度にまで落とし込まれていると指摘します。
一気通貫性があって、そのソフト面とハード面で両方を支えてますよっていうのが一個。
器を大きくし、引き出しを増やす
高宮さんは、飲み会や食事に誘うといったミクロな話も、まず自分のリーダーシップスタイルを見極めることで整理できると言います。長谷川さんは率先垂範型か、人間関係で引っ張る型か、と問いかけました。
長谷川さんは、自認としては人間関係にべったり依存するタイプではないと答えます。一方で御大は逆のタイプで、その勝ちパターンに合わせた組織を引き継いだ難しさがあると高宮さんは補足しました。
高宮さんは、大将軍の下で部隊ごとにカラーが違ってよいとし、キングダムの将軍たちにたとえます。別法人であれば、その法人で完結したカルチャーがあってもいいと言います。ただ過去のレガシーと人がいる以上、いきなり全員を入れ替えるわけにもいかない。だから芸風を広げてカバーできる人を増やすのが現実解だと話しました。
ここで長谷川さんは、社長から常々言われている言葉を思い出します。それは「器を大きくする」ことと「引き出しを増やす」ことの二点だけ意識すればいい、というものでした。
「器を大きくしていく」のと「引き出しを増やしていく」って、この二点だけ意識すればいいよ。
高宮さんは、それは自分が言ってきたことと全く同じだと笑います。長谷川さんも、社長と高宮さんの言葉は違えど、エッセンスは同じだと納得しました。
まとめ
チーム運営の悩みへの答えは、まず自分のリーダーシップスタイルを知り、その芸風を前提に組織を作ることでした。芸風の根本は変えず、隣のタイプまで引き出しを増やしながら器を広げ、ビジョンと制度で間接的に影響力を及ぼしていく。それが規模の拡大に耐えるチームの作り方だと語られました。
- 学生起業志望者へのアドバイスは「今やる」「AIを触り倒す」。小さな課題を絨毯爆撃する中で大きなニーズが見つかる。
- リーダーシップは自分のパーソナリティに依拠するため、無理に違うスタイルをやってもついてこない。まず「己を知る」ことが起点になる。
- 芸風の根本は変えられないが、隣のタイプまで引き出しを増やし、その芸風の中でキャパシティを広げていく。
- 規模が大きくなると直接の指導は届かない。背中を見せる相手を起点に「円」を拡大し、ビジョンと制度で間接的に影響を及ぼす。
- 「器を大きくする」と「引き出しを増やす」の二点が、リーダーが自己を拡張していく核心。
