大統領に「ノー」を突きつけたFRBの舞台裏
番組冒頭、ホストは大統領に指名されたばかりの人物が就任直後にノーを突きつける、という劇的な場面から話を始めます。
皆さんこんにちは。米国株投資の耳寄りな話へようこそ。
よろしくお願いします。
ちょっと想像してみてほしいんですけど、アメリカの大統領から直々に指名されたばかりの人物が、就任からたったの110日ちょっとで、その大統領の顔をまっすぐ見て明確にノーを突きつける。
なかなか勇気のいる行動ですよね。
そうなんですよ。しかも、それが世界経済の舵取りを担う極めて重要なポジションで起きたとしたら。実は今、FRB、つまり米連邦準備制度理事会で、まさにそのドラマが展開されているんです。
政治の強い意向と中央銀行としての独立性が真っ向からぶつかり合う、歴史的にも非常に稀有な局面を迎えていますね。
今日のテーマはズバリ、トランプ大統領の圧力に負けずFRBが利上げ強行。年内の市場はどうなる?です。
これ、リスナーの皆さんの資産にも直結する話ですからね。
3年2ヶ月ぶりの利上げに、トランプ大統領が猛反発
ここから、実際に何が起きたのかの事実確認に入ります。FOMCでの決定と、それに対する大統領の反応です。
2026年9月16日に開催されたFOMC、米連邦公開市場委員会で、FRBは2023年7月以来、実に約3年2ヶ月ぶりとなる0.25%の利上げに踏み切りました。
ついに利上げですか。
これにより、政策金利の誘導目標は3.75%から4.00%へと引き上げられたわけですが、これに対するトランプ大統領の反応がまあ劇的でした。
決定直後にご自身のSNSのトゥルースソーシャルで猛反発されていましたよね。確か、米国の金利は1%以下であるべきだ。早く金利を下げろみたいな。
さらに、今回の決定を極めて政治的で敵対的だとか、我々の邪魔をしているとまで表現して怒りをあらわにしていました。
ただ、現在のインフレ状況下で金利1%以下というのは、素人目に見ても少し現実離れた要求に聞こえるんですが。
今の経済の体温からすると、かなり思い切った数字ですよね。単純に選挙前に景気を良く見せたいという側面はもちろんあります。金利が下がれば自動車ローンや住宅ローンの金利も下がりますから。
有権者は直接的な恩恵を感じやすいですよね。生活が楽になったみたいな。
関税とゼロ金利、大統領の政策に潜む矛盾
解説役は、大統領の要求の背景に通商政策との矛盾があると指摘します。
より深く経済のメカニズムを見ていくと、大統領が推し進めている通商政策との強烈な矛盾に行き着くんですよ。
通商政策というと、追加関税とかの話ですか。
その通りです。トランプ政権は高関税による保護主義的な政策を推進していますが、輸入品に関税をかければ当然ながら国内に入ってくるものの値段は上がりますよね。
これは直接的にインフレを引き起こす要因になりますし、企業の仕入れコストも圧迫します。大統領としては、この(関税による)コスト増の痛みを、ゼロ金利に近い資金調達コストの低下で相殺してあげたいという思惑があるんです。
いや、ちょっと待ってください。それってすごく矛盾していませんか?アメリカ企業に関税という重たいベストを無理やり着せておきながら、ゼロ金利というエナジードリンクを大量に飲ませてフルスピードで走らせようとしている状態ですよね。
見事な例えですね。まさにその矛盾が現在の対立の核心なんですよ。
でも、経済の心拍数であるインフレ率はすでに上がり始めているわけじゃないですか。
そうなんです。だからFRBはお医者さんとして、このままだと心不全を起こすから走るのをやめなさいとストップをかけているわけです。
さらに、大統領の視点にはドル安誘導の狙いも絡んでいるんですよ。
金利を下げればドルの魅力が相対的に下がってドル安になるということですか。
はい。そうすれば、アメリカの輸出企業が海外で戦いやすくなり、貿易赤字を減らせるという計算ですね。
関税で輸入品をブロックしつつ、ドル安で輸出をブーストさせる。さらに、アメリカ政府自身が抱えている莫大な国債の利払い負担も金利が下がれば楽になる。
大統領のロジック自体は、ご自身の政策パズルを完成させるにはまあ筋が通っているとも言えるんです。
なるほど。でも、FRBの使命は物価の安定と雇用の最大化ですからね。
中東情勢の緊迫化による原油高の兆候も見え始めており、エネルギー価格の上昇があらゆるものの値段に波及する前に、FRBは予防的に引き締めに動かざるを得なかったんです。
トランプが指名した新議長が、12対0で利上げを決めた
市場が最も注目したのは、大統領が指名した新議長がどう動くかでした。
そこで市場が最も注目したのが、パウエル議長に代わって就任したばかりのケビン・ウォーシュ新議長の決断だったわけですね。
ウォーシュ議長ってトランプ大統領自身が指名した人物じゃないですか。就任前は大統領の意向を汲んで言いなりになるんじゃないかっていう見方は、ウォール街でもかなりありましたよね。
ええ、懸念されていました。しかし、蓋を開けてみれば、就任から約4ヶ月という短い期間で、ウォーシュ議長は大統領からのプレッシャーを真っ向から跳ねのけました。
いや、すごい胆力ですよ。
さらに特筆すべきは。これが彼一人の独断ではなく、他のトランプ指名理事も含めて12対0の全会一致で利上げをまとめ上げたという事実です。
え、12対0ですか。
ええ、一人も反対しませんでした。
誰一人として大統領に忖度しなかったってことですね。
記者会見でのウォーシュ議長の言葉がすべてを物語っています。彼は「独立性は双方向である」と述べました。
双方向ですか。
つまり、我々は政治の領域には踏み込まない代わりに、政治も我々の中央銀行としての領域には踏み込ませないという強烈な意思表示です。
痺れる宣言ですね。
なぜ利上げなのに市場は好感したのか
利上げは普通なら株式市場にマイナスのはず。それでも市場が安堵した理由を掘り下げます。
ここで私一つ疑問があるんですよ。普通、利上げが行われて企業の借入コストが上がれば、株式市場にとってはマイナス材料ですよね。
なのに、今回の利上げ後、市場は好感したとか、安堵が広がったって報じられています。これ、直感に反していて少し分かりづらいんですが。
確かに、発表の直後はハイテク株を中心に資金繰りが厳しくなるという懸念から売りが先行しました。
やっぱり最初は売られたんですね。
ええ。しかし、数時間後には空気が一変し、買い戻しが入ったんです。
投資家たちは短期的な借入コストの上昇という痛みよりも、長期的なインフレの放置という致命傷を恐れていたからです。
インフレが放置される方が企業にとってはもっと怖いということですか。
仮にFRBがここで政治圧力に屈して金利を下げていたら、市場はどう思うでしょうか。
あ、この中央銀行は物価上昇の兆しを見ても見ぬふりをするんだなって思っちゃいますね。
そう見透かされてしまうんです。そうなれば、将来的に手がつけられないレベルのインフレがやってくると予想され、企業の将来の利益の価値が暴落し、株式市場はパニックに陥っていたはずです。
なるほど。厳しい治療をしてくれる歯医者さんを選んだわけですね。痛いのは一瞬だけど、虫歯を放置して将来歯を全部失うよりはずっといいと。
まさにその通りです。新議長のインフレ退治へのコミットメントが確認できたことで、市場は安心したんです。
債券市場や為替市場の反応はどうだったんでしょうか。
債券市場の反応は極めて理にかなっていました。目先の政策金利に連動しやすい2年債などの短期金利は上昇しましたが、一方で10年債などの長期金利はすっと落ち着いた動きを見せたんです。
つまり、投資家がFRBが今ちゃんと引き締めてくれるから、5年後や10年後のインフレは防げるだろうと納得した証拠ですね。
為替についても、アメリカが金利を高く保つ姿勢を明確にしたことで、日米の金利差が意識され、ドル高円安が進行しています。
大統領が望んだドル安とは完全に逆の動きですね。
年内の追加利上げは、いつ・どの指標で決まるのか
ここからは今後の見通しです。年内の利上げが残り何回で、どの経済指標が鍵になるのかを整理します。
リスナーの皆さんが今一番知りたいのは、じゃあこの先どうなるのかですよね。年内の金利の見通しはどうなっていますか?
FOMCで同時に発表されたドットチャート、つまり参加メンバーたちによる政策金利の見通し分布図を見ると、年末の金利着地点の中央値が4.125パーセントに設定されていました。
つまり、参加者18人中16人が年内にあと1回0.25パーセントの追加利上げが必要だと考えていることになります。
年内のFOMCって11月下旬と12月中旬の残り2回ですよね。どちらで利上げが行われそうですか?
経済の理屈だけで言えば早い方がいいんですが、今回は政治的なカレンダーが大きく影響するんです。次回の11月の会合は11月の中間選挙のわずか1週間前なんですよ。
ああ、なるほど。
このタイミングで動くと、それこそ選挙妨害だと不要な政治的ハレーションを起こしかねないため、一旦据え置きにするだろうというのが市場のコンセンサスです。
ということは、本命は年内最後の12月ですね。
ええ。ただし、ウォーシュ議長はデータ次第の姿勢を貫いています。特に彼らが注視しているのがPCEデフレーターと呼ばれる物価指標なんです。
ニュースを見ていると、CPI消費者物価指数の方がよく話題になりますよね。なぜFRBはあんなにPCEデフレーターを重視するんですか?
CPIはあらかじめ決められた固定された買い物籠の価格変化を追うのに対し、PCEデフレーターは消費者の行動変化を反映するからです。
行動変化ですか。
例えば、牛肉の値段が急激に上がった時、消費者はどうすると思いますか?
まあ、高い牛肉を買うのをやめて、代わりに鶏肉や豚肉を買うようになりますね。
まさにそれです。CPIだと牛肉が上がった生活が苦しいというデータが強く出ますが、PCEは人々は鶏肉にシフトしたから、実際の生活費への打撃はそこまで大きくないな、という現実の消費行動を組み込んで計算してくれるんです。
なるほど。データを見る解像度が違うんですね。だからこそ、経済の本当の体温を測るにはPCEの方が適しているとFRBは考えているわけだ。
中間選挙に向けた3つのフェーズと立ち回り方
解説役は、中間選挙に向けた投資家の立ち回りを3つのフェーズに分けて説明します。
そのデータを見ながら迎える11月の中間選挙。皆さんは具体的にどのような動きに注意してポートフォリオを管理すべきでしょうか。
アノマリー、つまり経験則と構造的な要因の観点から、大きく3つのフェーズに分けて考える必要がありますね。
3つのフェーズ。まず1つ目は何でしょう。
1つ目は10月から11月にかけてのボラティリティ増大です。
ボラティリティ。つまり価格の変動ですね。なぜこの時期に激しくなるんですか?
中間選挙の直前はどちらの党が勝つかわからない。新しい規制ができるかもしれないという不確実性がピークに達するからです。
機関投資家もリスクを嫌ってポジションを調整するため、世論調査のニュース一つで株価が乱高下しやすくなります。ここでの鉄則は、日々のニュースに振り回されて狼狽売りをしないことです。
どんと構えておく時期ですね。では、2つ目のフェーズは?
2つ目は、選挙結果によってもたらされるねじれ議会への理解です。
ねじれ議会。
歴史的に現職大統領の政党は中間選挙で議席を減らしやすく、上下院のどちらかを野党が支配するねじれが発生しやすくなります。
議会がねじれると法案が通らなくなって政治が停滞しますよね。普通に考えたら国全体にとってはマイナスですが、株式市場はどう反応するんですか?
これが面白いところで、ウォール街はねじれを大歓迎する傾向にあるんです。
え、そうなんですか?なんでですか?
法案が通らないということは、企業にとって不利な新しい増税や厳しい規制強化が行われる心配がないと同義だからです。
特にハイテク企業などは、独占禁止法などの新たな規制リスクが後退するため、買いが入りやすくなるんですよ。
何もしないでくれるのが一番の好材料って、なんだか皮肉な話ですが、投資家心理としては非常にクリアですね。
ただ、議会が動かなくても、大統領には別のカードがありますよね。
あ、大統領令ですか。
鋭いですね。議会の承認なしに大統領の権限で進められる政策、特に関税などの貿易政策やエネルギー規制については、ねじれ議会に関係なく実行可能です。
ということは、全体相場が良くても、特定のセクターが突然大統領令の直撃を受けるリスクには警戒が必要だと。
おっしゃる通りです。ハイテク株が安心でも、特定の輸入依存企業は一気にダメージを受ける可能性がありますからね。
そして3つ目のフェーズは、選挙が終わった後ですね。
ここが最も希望の持てるデータなんですが、過去の統計上、中間選挙を通過して不確実性が消滅した後の12ヶ月間は、勝者がどちらの党であれ、株式市場は力強い上昇ラリーを見せる傾向が非常に強いんです。
秋のジェットコースターのような乱高下を冷静に耐え抜けば、その後に大きなチャンスが待っているかもしれないわけですね。
仕込みの好機とも言えますね。
2027年、FRBに待つ「逃げ場のない板挟み」
最後に、解説役はこの先のシナリオとして、大統領令と関税がもたらすかもしれない次の局面を示します。
リスナーの皆さんが明日以降のニュースを見るのがもっと面白くなるような、新しい視点や思考の種を提示していただけませんか?
今日、ねじれ議会になれば法案が通らなくなるというお話をしました。しかし、もし本当に議会が機能不全に陥った場合、トランプ大統領はどうするでしょうか。
自身の政策レガシーを作るために議会をバイパスできる大統領令、とりわけ関税政策にさらに強く依存するようになる可能性が高いです。
議会がダメなら俺の権限でやってやるってなりそうですね。
もしその強力な追加関税が次なるインフレの巨大な火種を生み出してしまったとしたら、来年2027年のFRBは今年とは比べ物にならないほど過酷な舵取りを迫られることになります。
今の金利よりさらにってことですか。
金利を上げれば大統領と全面衝突し、金利を下げればインフレが再燃する。皆さんはこの先の政治と経済のドラマがどんな結末を迎えると予想しますか?
うわぁ、それはかなり背筋が凍るシナリオですね。関税が強制的にインフレを呼び起こし、FRBが逃げ場のない板挟みになる。今日の利上げは実はほんの序章に過ぎないのかもしれない。
どうなるかしっかり見極めていきたいですね。
まとめ
今回は、FRBがトランプ大統領の強烈な圧力に屈せず、中央銀行の独立性を守って利上げに踏み切った出来事を読み解きました。市場は短期的な痛みより、新体制のインフレ退治への本気度を評価して安堵したというのが大きなポイントです。年内の追加利上げや中間選挙のボラティリティ、ねじれ議会の意味も整理できました。政治と市場の力学がどう絡み合うかを知っておくと、ニュースの見え方が変わってきますね。
- FRBはトランプ大統領の圧力に屈せず、12対0の全会一致で3年2ヶ月ぶりの利上げに踏み切った
- 市場は短期的な借入コストの痛みより、インフレ放置の致命傷を恐れ、新議長のインフレ退治姿勢を評価して安堵した
- 年内の追加利上げは、中間選挙の1週間前を避けて12月が本命。FRBはPCEデフレーターを重視している
- 中間選挙前のボラティリティ増大をやり過ごし、ねじれ議会のメリットと選挙後の上昇ラリーというアノマリーに備える
- 議会が機能不全なら大統領令と関税への依存が強まり、2027年のFRBがさらに難しい舵取りを迫られる可能性がある





