「一生青春」から始まるオープニング雑談
冒頭は、金亨哲さんの青春時代についての雑談から始まります。
金さんは、大学の同期である歌舞伎役者・中村壱太郎さんが使う「一生青春」という言葉を紹介します。
この言葉はもともと、壱太郎さんの祖父である坂田藤十郎さんの座右の銘だったそうです。
一生青春かのように、なんかこうのめり込みながらやってみたいなと思っているイメージなんですけど、青春時代っていうと常に更新したいなっていう気持ちがあります。
そこから話は好きなジブリ作品へと広がります。金さんは『紅の豚』や『風の谷のナウシカ』を挙げ、河原さんは『魔女の宅急便』が好きだと語ります。
和やかな雑談を経て、本題の相談タイムへと移っていきます。
フルリモートと店舗、2つの「徹底されない」悩み
今回は、前回ゲストだったソニックガーデンの倉貫義人さん宛に届いた、読み切れなかった相談から取り上げます。
最初はIT業界の方からの相談です。フルリモートのバックオフィス担当として、業務に慣れた社員が社内手続きをギリギリまでやってくれないと悩んでいます。
ソニックガーデンさんでは、どのようにして社内業務を後回しにさせない仕組みや文化を作られているのでしょうか。
もう一つは小売業の管理職の方からの相談です。店舗のメンバーに対して、伝えたことが徹底されるようにするにはどうすればよいか、という内容でした。
店舗のメンバーに対して伝えたことが徹底されるようにするにはどうしたら良いですか。店舗での徹底力が弱くなっていることに困っています。
河原さんは、自身も会社員時代は経費精算をギリギリまで貯めてしまうタイプだったと打ち明けます。
「伝わる」とは、相手の行動が変わること
金さんはまず、「徹底される」というのは実はとても難しいことだと指摘します。
我々の思ってることって伝わってるって状態って、実はその人の行動が変わって、伝えられた人の行動が変わっている状態だと思ってるんですね。行動が変わっている状態まで行ってないと、そもそも伝わってないのではないか。
河原さんは、これを研修会社で聞いた「Doing-Knowing Gap」という考え方と重ねます。
知っているだけの状態と、実際に行動に移る状態の間には溝があり、そこに橋を架けることが行動を変えるうえで大事だ、という話です。
「伝えてもらう」という逆転の発想
金さんが提案したのは、少し意外なアプローチでした。行動が変わりきっていなくても、伝わっている人は他の人に伝えられる人になっているはずだ、という視点です。
行動が変わるまでいかなくても、伝わっている人っておそらく他の人に伝えられる人になってるはずなんですよね。ある意味伝言ゲーム的に伝えてもらうみたいなことをやってもらうと、能動的に伝えなきゃってなるので、一回ちゃんと自分の中に落とそうとするじゃないですか。
河原さんは、六、七割しかできていないスタッフにも「他のメンバーに発信してほしい」と声をかければ、本人の意識が引き締まるのではないか、と応じます。
金さんは、伝えるために学ぶので八割九割まで到達することがよくある、と補足します。学校で勉強を教え合うと自分も学べるのと同じ構造です。
では、誰に発信を頼むとよいのか。金さんの目利きはこうです。
「この人からこれ言われたらやんなきゃな」みたいなタイプの方を探してみる、みたいなのがいいんじゃないかなというふうに思ったりしてますね。
河原さんも、真摯に仕事に向き合う「見習いたい」と思える人から早めの提出を促されたら、自然と心がけてしまうだろう、と共感します。
仕組みは文化を映す
河原さんは、ワークする仕組みは文化を反映していると語ります。
倉貫さんの会社はエンジニアの集まりなので、プログラミング思考で仕組みを作っている。それはみんなに理解しやすいからだ、という見立てです。
同じように、でも多分倉貫さんの会社でやったような仕組みを、ものすごく感性豊かなアーティスティックな人たちが集まる会社とかでやったら、うまくいくとは限らないみたいな。仕組みって僕そういうものかなっていうふうに思うんです。
金さんは、まず自社がどんな人の集まりかを理解することが一歩目だと言います。
そのうえで、以前クライアントから聞いたDXプロジェクトの話を紹介します。システムを作って納品するだけでは社内に定着せず、教育と文化の醸成、そしてシステムの提供を両輪で進める必要があった、という内容です。
フルリモートでは文化の言語化のハードルが高い分、あえて「自分たちの働き方って何だろう」と話す時間を作ることが、遠回りに見えて大事なのかもしれません。
自分たちの文化として大事にしたいものがこう少し脅かされたりすると、人ってすごくアレルギー反応が出ると思っているので。自分たちってこういう働き方したいよねみたいな話は、すごくちゃんと定期的にやっていくべきだなと思ってます。
停滞したプロジェクトで、一メンバーができること
続いて、メーカー勤務のネズコさんから、停滞している大型プロジェクトを一メンバーとして前進させるには、という相談が届きます。
停滞が続いているプロジェクトを前進させるために、一メンバーとして意識できることを知りたいです。
金さんは、まずこの相談を書けたこと自体が素敵だと受け止めます。そのうえで第一歩として、相談に書いた内容を、伝えられる範囲の上司に伝えてみることを勧めます。
ここで金さんは、心理的安全性の研究を始めた頃の話を紹介します。日本では、上司に耳打ちして会議で言ってもらうことも「話しやすさ」に入るのではないか、という視点です。
日本だとこう話しやすいっていうのは、実はもしかしたら上司に耳打ちしてたら会議で言ってくれるも話しやすさに入るんじゃないか。この全体会議で発言できる可能性がある方に、少し相談してみるとかできるといいんじゃないか。
河原さんは、これはいわゆる根回しだと言い換えます。ただし悪い意味の根回しではありません。
思いがある人が言えないことのほうがよほど問題だ、と金さんは付け加えます。信頼できる相手から始めて輪が広がれば、やがて全体会議で発言する人も出てくるはずだ、という見立てです。
一方で金さんは、大型プロジェクトほど、最初にチーム全体の心理的安全性を担保する期間を作ったほうが手戻りが減る、とも語ります。
雑談と相談はセットで
金さんは、倉貫さんの本にある「雑談ができない環境で相談ができるか」という問いを引きます。
雑談ができない環境で相談ができるかという話だと思うので、雑談と相談はセットでみたいな話を最初から始めてみるとかでもいいと思いますし、何かしらのコミュニケーションができる状態を作っておいた上でキックオフした方が全然良い状況が作れる。
河原さんは、入り口でキックオフや距離を縮める場を作り、コミュニケーションの土壌を整えておくことで、問題が起きたときに本質的な対話ができると応じます。
ナビゲーターの木ノ瀬さんは、この回の学びをこうまとめます。悩みを自分だけで抱えず、チームの誰の力を借りるかを見極めることが大事で、そのために日頃の雑談で相手を知っておくことが効いてくる、という気づきです。
心理的安全性が高いチームであればあるほど、困ったことがあった時に、この人にちょっと話してみようみたいな、そういうベースがあると思うんですよね。元々ちゃんと話ができる状態にしておくのは、ベース作りとしてすごく大事なんだなと思いました。
まとめ
「伝えたのに徹底されない」という悩みは、伝え方だけでなく、誰が言うか、どう文化に乗せるか、そして雑談から相談できる土壌があるかで大きく変わります。相手の行動が変わって初めて「伝わった」と言える、という視点が今回の芯にありました。
- 伝わるとは、相手の行動が変わっている状態のことである。
- でききっていない人にも「他の人に伝えてほしい」と頼むと、学び直して自分の理解も深まる。
- 同じ内容でも「この人が言うならやろう」と思われる人から発信すると徹底されやすい。
- ワークする仕組みは、その組織の文化を反映しており、まず自社がどんな集まりかを理解することが一歩目になる。
- 雑談ができる土壌があってこそ相談ができるため、キックオフ時からコミュニケーションの場を整えておくとよい。