他社アクセラや外部との交流、そしてイベントが生む出会い
久下さんは、TRIBUS以外のアクセラレータープログラムの運営者との交流があるのかを尋ねます。
内海さんによると、事務局の森下さんが外部に出てネットワーキングを積極的に行っているそうです。オフロードでのトークセッションなども実施してきました。
TRIBUSのオウンドメディア「Stories」でも、さまざまな人との対話が記事として発信されています。久下さんもかつて出演したことがあるそうです。
久下さんは、こうした対話イベントに需要がありそうだと話します。人が集まる状態をつくることが、協業のチャンスやスタートアップの宣伝につながると考えられます。
人が集まる状態にするとチャンス増えますからね。いろんな協業もそうですけど、単純に知ってもらうっていうのもスタートアップの宣伝になるじゃないですか。
沼ラジオが果たす「インナーブランディング」の役割
久下さんは、カタリストたちのインタビューが、TRIBUSやリコーという会社の人材のユニークさを見せる良いコンテンツだと評価します。
久下さんは、出戻り組が多いことや、カタリストごとに取り組み方も考え方も違う印象を受けたと話します。そのうえで、カタリスト同士のナレッジ共有をしているのか尋ねました。
内海さんによると、カタリストの動きは基本的に本人に任せており、最近はあまり共有の場を設けていないそうです。
カタリストの動きはもうカタリストさんに基本お任せな感じなんですよ。みんな自由にやってて、持ってるスキルじゃないけど、思いでやってる感じですね。
そこで久下さんは、沼ラジオ自体がそのナレッジ共有になっているのではないかと指摘します。清野さんも、どういうことをやってきたかがわかると参加しやすいと応じました。
久下さんは、TRIBUSがすでに6期を数える中で、興味はあっても関わってこなかった社員に向けたインナーブランディングとしても沼ラジオが機能していると評価します。
綺麗なステートメントや中期経営計画では伝わらないニュアンスを、社内向けのポッドキャストが担っている点が面白いと話されました。
部門を越えて声をかけられるのは「社風」だった
久下さんは、事務局やカタリストが所属部署に関係なく多くの人とコミュニケーションを取る必要がある点に触れ、そこにメンタルの負担はないのかと尋ねます。
内海さんも清野さんも、社内の相手に対して声をかけにくいと感じたことはないと答えました。
皆さんいい人がやっぱ多いんですよ。宣伝協力してほしいなと連絡すると、すごい快くお返事くださったり、自分たちが作ったコミュニティにも我々を招待してくださることがすごく多くて。
二人はその理由を、ツールのやりやすさと、そもそもの社風にあると考えています。TeamsやSlackなどのチャットで気軽に連絡できる点も大きいと話されました。
風土かもしれないです。社風かもしれないです。うちの会社、多分いい人が多い気がするんですよ。
久下さんは、自身がメーカーにいた頃は別部門への声かけに抵抗があったと振り返ります。ツールと空気感の両方が、部門を越えたやり取りを日常にしていると考えられます。
制度だけでは回らない。社風があってこそのアクセラ
久下さんは、この社風の話が、アクセラレータープログラムをただ作るだけでは回らないことを示していると指摘します。
そもそものリコーっていう会社自体の社風、ノリがあったから、こういう進め方もできてるのかなっていうのも思うんですよね。
内海さんは、プログラムが始まった当時、現在の会長である山下さんが社長だったことにも触れます。会社全体がそうした雰囲気だったのかもしれないと話されました。
久下さんは、大企業は属人的な仕事を嫌いがちだが、大きなうねりを生むのは属人的な仕事だと話します。起業家やカリスマデザイナー、人をつなぐコネクターがその例です。
複数企業でのアクセラ、そして起案と起業を分ける設計
久下さんは、複数の大企業が共同で主導するアクセラレータープログラムはないのかと問いかけます。
内海さんも清野さんも、地域系の事例は見たことがあるものの、リコーと富士通のように別々の企業のアクセラを一緒にやる形はあまり聞かないと答えました。
久下さんは、TRIBUSがこれだけ育ってきたなら、別リーグ同士のコラボのような展開も今後あり得るのではないかと期待を示します。
続けて久下さんは、TRIBUSがアイデアを作る起案フェーズと、事業として作っていく起業フェーズを分けている点を評価します。
多くの社内アクセラは起案ベースになりがちで、パワポが通ればOKになりやすいと指摘します。TRIBUSにはその手前に中間地点があることが特徴です。
起案フェーズ
アイデアを作る段階
起業フェーズ
実際に事業として作っていく段階
卒業後
完全に事業として独立していく段階
内海さんによると、6期を重ねる中でやりにくかった点を少しずつ改良してきたそうです。今はアクセラ期間が終わってから完全に事業へ進むまでの中間の期間を最も長く取っているとのことです。
去年通った人たちは一番ここを長く取ってると思う。
久下さんは、起案ベースだとロジックは通っていてもものがない状態になりがちだと話し、この確認フェーズの重要性に共感を示しました。
一期生が卒業。人・物・金の解像度と「やってみな、楽しいから」
久下さんは、人・物・金の解像度を上げると事業立ち上げの成功率が上がると話します。新規事業やスタートアップに関わることで、その解像度が高まっていくと考えられます。
そうした経験を得た人が社内に戻ってイノベーションを主導するのが理想だとしたうえで、実際にそうした事例が出ているか尋ねました。
清野さんによると、ちょうど初年度の人たちが卒業を迎えたところで、何名かが求められて社内の部署に戻ったそうです。ただし、実際に立ち上がった事例が出るのはこれからだと話されました。
一期生がやっと卒業したので、まさにこれからっていうところではある。
久下さんは、他の大企業も同じようなハードルにぶつかっているのではないかと尋ねます。清野さんは、作るのは得意でも売るのが上手ではない会社があるかもしれないと答えました。
必要な人が段階によって変わるため、メンバーチェンジがうまくできないことが苦労の一つになり得ると話されました。
リコーはエンジニアが多くものづくりがベースのため、経営者として営業を担うことに苦労する人がよくいるといいます。
一方で、一期生で卒業したグループは、そうした課題をある程度自分たちでクリアしてきたそうです。清野さんは、しばらくすると自分たちで突破してしまうのではないかと話します。
清野さんは、ラジオで話を聞いた卒業生が、最後には決まって同じ言葉で締めくくると紹介します。
一事業部にいるとお客さんとの関わりがなかったり、ものが売れる手触りがなかったりするんだけど、いざ自分で起業してみると、お客さんから返ってくる返事とか、商売の手触りが本当に楽しくて。やってよかったです。
大変な苦労を語りながらも、最後は必ず「やってよかった」「やってください」で終わる。その語りが、社内起業のリアルな手触りを伝えています。
次の募集と「ワンチーム」の伴走
久下さんは、次の募集が行われているか尋ねます。清野さんによると、7月29日までスタートアップを募集中とのことです。
清野さんは、TRIBUSの伴走者はスタートアップに親身になって働くと話します。当初「スタートアップファースト」と言いかけて、「ワンチーム」と言い直しました。
うちの伴走者はすごいいい働きをします。本当に親身になってやってくれるので、スタートアップファーストで。ファーストじゃない、ワンチームって言ってました。
最後は、久下さんが清野さんと内海さんへの感謝を伝え、後編は締めくくられました。
まとめ
後編では、TRIBUSの運営を支えているのが制度以上に社風であること、そして一期生の卒業からようやく見え始めた成果が語られました。社内起業のリアルな手触りが伝わる回です。
- 部門を越えた声かけを日常にしているのは、ツールと社風の両方の力だと語られています。
- アクセラを回すには制度設計だけでなく、会社そのもののノリや空気が土台になると考えられます。
- TRIBUSは起案と起業を分け、アクセラ後から事業独立までの中間期間を最も長く取っています。
- 一期生が卒業し、社内に戻る動きが出始めた一方、本格的な成果はこれからの段階です。
- 卒業生は苦労を語りながらも、最後は必ず「やってみな、楽しいから」と締めくくるといいます。
