是正勧告報道で浮かんだ「裁量労働制」
アシスタントの安田さんが、最近見かけたニュースを持ち出すところから話は始まります。
とある有名なテレビ番組の制作現場で、長時間残業や残業代未払いを理由に、中央労働基準監督署から立て続けに是正勧告を受けたという報道です。
あ、そのニュース私も見ました。
吉田さんも同じニュースを目にしていましたが、記事の扱いには慎重な姿勢を見せます。
内容はちょっと一方的なもので、労働者側の方が書いているので、事実かどうかわからないんですけれども、もし記事が本当であれば、問題の一つが裁量労働制というものです。
安田さんにとっては、言葉自体が初めて聞くものでした。ここから裁量労働制の解説が始まります。
裁量労働制とはどんな仕組みか
吉田さんによると、裁量労働制にはさまざまな種類があり、今回の報道で問題になっているのは「専門業務型裁量労働制」だといいます。
これは、専門性の高い仕事にのみ適用できる制度です。
仕事には、工場でネジを作るような、指示に従って進める仕事もあれば、本人が何をするかを決める部分が大きい仕事もあります。
アイデアを出すことが仕事みたいな。
弁護士さんみたいに法律的にどうすればいいのかを考えながら仕事するのもあれば、デザイナーさんみたいにクリエイティブな発想力が必要とされる仕事もあるんですね。
こうした仕事の特徴は、自分で仕事の配分を決められる点にあると吉田さんは説明します。
そして、一部の特殊な仕事については、実際に何時間働いたとしても、あらかじめ決められた時間働いたものと「みなす」制度があると続けます。
決まった時間より短くても長くても、その決まった時間としてみなされるっていうことですね。
その通りです。長くても短くてもみなされるんです。
「何時間働かせても定額」という誤解
話は、経営者が陥りがちな誤解へと移ります。
何時間働かせても、本来決められた1日8時間の給料しか払わなくていいんだと誤解している人がいるんですけど。
すでに私そう誤解してました。
それね、完全な間違いなんです。
吉田さんは、制度の根拠に立ち返って説明します。あくまで働く人に裁量があり、どこで何をするかを自分で決められるからこそ、みなしが認められるという理屈です。
弁護士さんだったら、調子がいいからたくさん仕事をする日もあるし、アイデアが浮かんでこないから今日は短い日もある。長い日も短い日もあるから、8時間とみなしてもいいですよねっていうのが裁量労働制なんです。
つまり、労働時間の裁量が本人にあることが前提であり、残業代を払わなくてよくなる制度ではない、というのが要点です。
報道で問題になったのは何か
では、今回の報道では何が問題視されたのでしょうか。
全く裁量性のない、工場で9時から6時まで働いてくださいと言われているような人に裁量労働制を適用して、残業代を事実上払っていなかったんじゃないか、というところがこのニュースの問題点です。
安田さんは、裁量が経験値に近いものではないかと問いかけます。吉田さんは、入社初日からの適用も理論上は不可能ではないとしつつ、こう補足します。
自分で仕事の配分を決められるのは、ある程度経験年数も必要ですし、法律的には職種の要件もあるので、ベテランの人に適用するケースの方が多いと思いますね。
さらに安田さんは、報道でADに適用されていた点について尋ねます。
今回ってADさんに適用されてたと思うんですけど、それが別に違法ということではないと。
吉田さんは、実態によると前置きしたうえで、アシスタントディレクターという職種の性質から見解を述べます。
アシスタントという職種に入っているぐらいですから、ディレクターの指示に従って仕事をしているんだと思うんですよ。そうなると裁量権って本人にないじゃないですか。
名称に「ディレクター」が含まれていても、指示に従う立場であれば適用はできない、というのが一般的な回答だと締めくくります。
適切な運用は難しい、まず「やらない」選択肢
安田さんが、裁量労働制を導入している企業にメスを入れたら大ごとになりそうだと投げかけると、吉田さんも実感を語ります。
適切に運用できていないのであれば、原則どおり1分単位で残業代を払うべきだと吉田さんは指摘します。
適切に運用できてないんだったら、ちゃんと1分単位で残業代を払わないと、いつかある日会社に内容証明が届いて、多額の残業代を支払うことになる可能性があります。
導入時の注意点を尋ねられた吉田さんは、まず自身のスタンスを明確にします。
本当に裁量があるなら、長い日と短い日が相殺され、通常の労働時間計測でも賃金はあまり変わらないはずだ、というのがその理由です。その方が未払い賃金のリスクもなくなると話します。
それでも導入するなら押さえるべき点
それでも裁量労働制を使いたいという企業に向けて、吉田さんは2つの絶対条件を挙げます。
業務がちゃんと合っているのかということと、就業規則とか労使協定書とか、そういった書類を作らなきゃいけないので、その手順が正しいかどうかが絶対条件です。必ず専門家に相談した上で導入することをお勧めします。
勝手に判断しないっていうところは、すごく大事なポイントかもしれないですね。
自己判断で進めず、専門家に確認することの重要性を確認して、この回は締めくくられます。
まとめ
裁量労働制は「何時間働かせても定額でよい制度」ではなく、働く人に時間配分の裁量があることが前提の制度です。報道で問題となったのは、裁量のない働き方に無理に制度を当てはめ、残業代を払っていなかった疑いでした。
- 専門業務型裁量労働制は、専門性の高い仕事に限って、実際の労働時間を決められた時間とみなす制度
- 「何時間働かせても給料は定額」という理解は完全な誤解で、前提はあくまで本人の裁量
- 名称に「ディレクター」が入っていても、指示に従う立場なら適用できないのが一般的な回答
- 適切に運用できている会社は少なく、できていなければ内容証明で多額の残業代を請求されるリスクがある
- 導入するなら業務要件と書類の手順を押さえ、自己判断せず必ず専門家に相談する
