評価はこの3軸で決まる
今回のテーマは、士業事務所の評価基準です。吉田さんは冒頭で、評価はこの3軸で考えるしかないと結論から切り出します。
挙げられたのは、処理件数と正確性、社内コミュニケーション、社外コミュニケーションの3つです。
この三軸で評価するしかないんじゃないですかっていうのは一つあります。
士業事務所は、お客様から依頼を受けて業務を代行する仕事です。ただの代行ではなく、法的な独占業務を含む高度な専門知識を使う点に特徴があると説明されています。
ただし、実際の業務の多くは「高度な専門知識を用いた単純作業」がウエイトを占めるといいます。トリッキーな回答を出す場面もあるものの、そこが中心ではないという整理です。
処理件数と正確性が評価の土台
1つ目の軸は、処理件数と正確性です。吉田さんは、給料の原資が売上や粗利である以上、そこに直結する項目が評価につながると説明します。
売上は販売個数×単価で決まります。士業事務所の単価は相場や社内で固定されていることが多く、スタッフが動かせる余地は小さいといいます。
そのため、動かせるのは販売個数、つまり処理件数の側だと整理されています。処理件数が上がらないと、評価も上がりにくいという流れです。
一方で、件数さえこなせばよいわけではありません。社会保険手続きや給与計算が間違いだらけでは評価に値しないため、正確性がセットで問われます。
知識があるだけでは評価されない理由
ここで吉田さんは、議論を一歩深めます。知識が豊富なのに評価されないと感じる人がいるのはなぜか、という論点です。
セミナーや読書で法律・通達・FAQを多く知っている人ほど、評価されて当然だと考えがちだといいます。しかし、それだけでは会社は評価しづらいと話します。
理由は、給料が粗利や売上を原資にしているからです。知識が評価対象になるのは、その知識が処理件数や正確性の向上につながっているときだと説明されています。
知識があるから業務効率化して、会社全体の正確性とか処理件数が上げられるような仕組みを作りました、っていう、ここまでやらないと会社は評価できないはずです。
吉田さんは、この点が働く側と経営者側で大きく乖離しやすいところだと指摘します。だからこそ、そういうものだと理解しておいたほうがよいと話します。
さらに補足として、自律性・自走性も加わります。処理件数と正確性が高くても、実は先輩が手厚くサポートしていたり、後輩に丸投げしていたりすると評価にはなりにくいといいます。
社内コミュニケーションと既存スタッフとの関係
2つ目の軸は、社内コミュニケーションです。スタッフが増えると、所長からは事務所全体の関係性が見えてくると吉田さんは話します。
特に、長く勤めて事務所を支えてくれる既存スタッフは、所長にとってありがたい存在です。そのため、既存スタッフとうまくやれるかは評価のウエイトが高くなるといいます。
どんなに優秀でも、既存スタッフから文句が出ていたり、うまくやれていなかったりすると評価は難しいと説明されています。
士業事務所は配置転換先が少ないため、相性の問題を人事異動で解消しにくいという事情も語られました。だからこそ既存スタッフとの関係が重要になるという流れです。
うまくいく人の特徴として挙げられたのは、やる気があり、先輩のアドバイスを素直に実践する人です。素直に動く人は教えがいがあり、次々に教えてもらえるようになるといいます。
もう一つの観点は、所長の仕事を引き受けられるかどうかです。士業事務所では所長に仕事が集まりすぎている問題が多いため、それを減らせる人はありがたい存在だと話します。
所長先生の仕事を引き預かせる人っていうのはすごくありがたい存在です。
そのためには、所長や周囲がどんな仕事をしているかに興味関心を持つことが出発点だといいます。ボトルネックが見えれば「これ私やりましょうか」と提案できるようになるためです。
社外コミュニケーションという壁
3つ目の軸は、社外コミュニケーションです。吉田さんは、ここが勤務社労士にとって一つの壁になりやすいと考えています。
社労士事務所で働く人は、事務作業や座学が得意な人が多い傾向にあります。その一方で、お客さんとのやりとりでつまずきやすいといいます。
営業経験がないとコミュニケーションの取り方が分からなかったり、正義感が強いタイプだと杓子定規な回答でお客さんを怒らせてしまったりすることがあると説明されました。
吉田さんは、勤務社労士時代の自身の体験を紹介します。以前は電話のライトがつくだけでビビっていたといいますが、あるフレームワークで状況が変わったと話します。
青木健さんの質問型営業っていうのがあるんですけど、これのフレームワーク通りにお客さんと話すようになったら、お客さんが怒らなくなるなっていうのはありました。
吉田さんの使い方は、まず共感しながらお客さんの現状を聞き、やりたいこと(欲求)を確認し、そのうえで解決策を提示するというものです。この型に沿うと、お客さんが怒ることはなくなったといいます。
欲求を聞く重要性の例として、問題社員の相談が挙げられました。社労士なら退職勧奨の話になりがちですが、社長が教育して更生させたいと考えている場合もあります。
その場合に退職勧奨の方法を教えても、お客さんは満足しません。だからこそ、出て行ってほしいのか、更生してほしいのかを確認することが、適切な解決策につながると説明されています。
紹介者の顔を立てられるか
社外コミュニケーションのもう一つのポイントは、紹介者の存在です。社会保険労務士は、税理士から仕事を紹介されるケースが非常に多いといいます。
そのほか、ベンチャーキャピタルや金融機関から紹介を受けることもあります。こうした紹介者の顔を立てられるかが重要なポイントだと話されています。
例として、税理士が会計処理をしやすいよう、PDFではなくエクセル形式でデータを渡すこと、同じクラウドサービス上で計算して仕訳を楽にすることなどが挙げられました。
吉田さんは、社労士とお客さん以外の第三者との関係もうまくやれる人ほど評価が高くなると話します。逆に紹介者と喧嘩してしまうと、次の受注につながらず人事評価上も大きなマイナスになるといいます。
そのため、担当する会社がどこから来た仕事なのかを意識して働くと、うまくやれるはずだと締めくくられました。
まとめ
吉田さんは、士業事務所の評価基準を処理件数と正確性、社内コミュニケーション、社外コミュニケーションの3軸で整理しました。知識そのものではなく、それが成果や関係性にどうつながるかが問われるという内容でした。
- 評価の土台は処理件数と正確性であり、売上・粗利の原資に直結する
- 知識は、処理件数や正確性の向上、仕組み化につながって初めて評価される
- 既存スタッフとうまくやり、所長の仕事を引き受けられる人は社内評価が上がる
- お客さんには現状・欲求・解決策の順で向き合うと、コミュニケーションが安定しやすい
- 紹介者の顔を立てられるかも、士業事務所での評価を左右する重要な要素になる
