一人目の社員の給与、どう設計する?
一人目の社員を採用することが決まり、給与を検討しています。周りの経営者の話を聞くと、年収を単純に12ヶ月で割った月給にしている会社は少ないようです。何を組み合わせるべきか全くわかりません。
この相談に対して吉田さんは、年収を12ヶ月で割った月給にしている会社は確かに少ないと答えます。
その理由は、月給には「一度決めたら簡単に下げられない」という性質があるからだと説明します。
月給っていうのは一度決めたら簡単に下げることができないからなんですね。
たとえ会社の経営がうまくいかなくなり、経営者が月給を下げたいと思っても、勝手に下げることはできません。
労働者の人が合意しないと、その下げるということに対して同意しないと、給与って下げられないんですよ。
そのため、世間的に夏と冬に賞与が支給されることが多いこともあり、月給と賞与に分けて給与を支給するパターンが非常に多いと吉田さんは話します。
年収を12で割るとどんなリスクがあるのか
年収を単純に12で割ると、他にどんなリスクがあるのか。まず挙げられたのが資金繰りの問題です。
毎月固定で給料が出ていくため、資金繰りが大変になります。会社の経営はうまくいく時もあれば、いかない時もあるからです。
月給が高い状態だと勝手に下げられないため、経営が苦しくても払い続けるしかありません。
一方、賞与は一般的な雇用契約書や就業規則の書き方であれば、上げ下げを経営者が自由に判断できます。だからこそ、月給のみで支払うと機動的な経営ができなくなると吉田さんは指摘します。
賞与の比率をコントロールする
では、月給以外でリスクをカバーするにはどうすればよいのか。吉田さんは「賞与の比率をコントロールすること」を挙げます。
例えば年収600万円の場合、12で割ると月給は50万円になります。この月給を35万円や30万円に下げ、残りを賞与で払う考え方です。
月給の部分は約束になりますが、賞与の部分は会社の経営状況に応じて上げ下げできます。これによって会社にとっても労働者にとっても無理のない形で給料が払えると説明します。
一度決めると下げにくい。労働者の合意がないと減額できず、経営が苦しくても払い続ける必要がある
雇用契約書や就業規則の書き方次第で、経営状況に応じて経営者が上げ下げを判断しやすい
想定年収の見せ方と、求職者への影響
もう一つのポイントとして、想定年収の「見え方」が挙げられます。
月給×12をそのまま年収として提示すると、転職や入社を検討する人からは想定年収が低く見えてしまいます。
想定年収が低いと、転職って自分だけの話じゃなくて、家族とかそういった他人も巻き込むことなんで、家族を説得するときにも、年収ってこれくらいもらえそうなんですよっていう風に高く言いたいですよね。
求人を出す経営者も高く言いたいし、転職する人も家族の説得などのために高く言えた方がよい、という双方の事情があります。
そのため、賞与で上下する点を十分に説明しつつ、給与と賞与のバランスを整えて労働条件を提示するケースが多いと吉田さんは話します。
アシスタントの安田さんも、住宅を買う際に年収を書く欄があり、その数字でローン審査の通り方が変わることに触れ、数字の重要性を実感したと語ります。
理想の給与と賞与の比率は?
給与と賞与の比率はどのくらいが理想なのか。吉田さんは「正直、会社によりけり」と前置きします。
中小企業では一般的に月給の1ヶ月から3ヶ月分ほどを賞与として出すことが多いといいます。
例えば年収600万円なら、月給を35万円ほど、賞与を45万円ほどにすることが多いとのことです。
ただし給与と賞与は、会社がスタッフのどこを評価するのかという考え方を示すものでもあります。給与は下げにくいため、給与比率が高い方がスタッフには有利です。
一方で、あえてその形を取らず、やる気を引き出す業種もあります。保険や不動産の営業など出来高重視の会社では、月給を極限まで下げ、営業成績に応じた部分をすべて賞与で払い、一発で高額な賞与を出すパターンもあります。
今日のポイント
最後に吉田さんが今回のポイントをまとめます。
想定年収を12で割った金額を月給にするのはリスクがあります。後々、会社の経営を機動的に判断できなくなるからです。
想定年収を12で割った金額を月給にするのはリスクがあります。そういった事態にならないためには、賞与の比率を上げることがポイントです。
まとめ
年収を単純に12で割った月給は、下げにくいという月給の性質ゆえに経営の柔軟性を奪います。月給を抑えて賞与の比率でカバーすることが、会社にも労働者にも無理のない給与設計につながります。
- 月給は労働者の合意がないと下げられないため、高く設定しすぎると経営が苦しくても払い続けることになる
- 賞与は経営状況に応じて調整しやすく、機動的な経営を支える役割を持つ
- 月給を抑えて賞与で補うことで、想定年収を保ちつつリスクを分散できる
- 中小企業では賞与は月給の1〜3ヶ月分が一般的だが、比率は会社の評価方針や業種によって変わる
