なぜ通勤時間には給与が出ないのか
なぜ会社に行くための通勤時間には給与が発生しないのか。
電車に乗っているときにふと浮かんだ疑問として、安田さんが投げかけました。これに対し吉田さんは、通勤時間は労働時間ではないからだと答えます。
これは通勤時間は労働時間ではないからです。給与っていうのは働いたら給与を支払いますよね。すごく単純なルール。
働いたら給与が出て、働かなければ出ない。通勤時間は働いた時間とは考えないので、給与が出ないという整理だと説明します。
一方で吉田さん自身も、サラリーマン時代に納得しきれなかった経験があると打ち明けます。
満員電車で会社に行く時間大変でしたし、この時間ってそもそも働きに行く時間なんだから、給与が出てもいいじゃないかなんて考えたことはあります。
それでもほぼすべての会社が通勤時間に給与を払わないのは、労働時間ではないからだと改めて確認します。
そもそも労働時間とは何か
通勤時間の話を進めるには、まず労働時間とは何かを押さえる必要があると吉田さんは切り出します。
具体的には、従業員が会社の指示に従って仕事をしている時間です。たとえば「朝9時から12時までこの工場でネジを作ってください」と会社が指示し、それに従って実際にネジを作る。これが指揮命令下にある状態だと説明します。
これに対し通勤時間は、何かをしなければならないという制約が基本的にありません。音楽を聴いても読書をしても自由で、いつ出て、どこで過ごすかも本人次第です。
だからこそ通勤時間は労働時間にはならない、という考え方になります。
通勤中に自主的に仕事をしたらどうなるか
電車や新幹線でパソコンを開いて自主的に仕事をしている時間は、どう考えたらよいのか。
安田さんが実際によく見かける光景として挙げた問いに、吉田さんは「難しいところ」としながらも、まず原則論を示します。
自主的に仕事をしているっていうのは、すごく言い方悪いですけど、勝手に仕事をしているってことなんで、原則としては労働時間になりません。
たとえば山手線の車内でノートパソコンを開いて仕事をしていても、それが自主的なものなら労働時間にはならないといいます。さらに吉田さんは、この行為には2つの問題があると指摘します。
1つ目は、仕事が始まる時間より前に、従業員が勝手に仕事を始めてしまっている点です。
労働は契約に基づくもので、たとえば9時から18時まで働くという契約があるから、その時間に働きます。残業もあくまで会社が命じたから従うものであり、従業員が自分の意思で勝手に働くことは基本的にできないと説明します。
2つ目は、情報漏洩のリスクです。電車内には他社の人もいるかもしれず、開いたパソコンに機密情報や顧客リストが映っていれば、盗み見られる恐れがあります。
こういう行動をしているスタッフがいたら、機密情報を漏洩するので、絶対にそういった点からも仕事しないでくださいって注意した方がいいと思います。
安田さんは、何かに追われて仕事をしたくなる瞬間はあると共感しつつ、情報漏洩のリスクには驚く人も多いのではないかと話しました。
原則には例外がある——黙示の指示
話は通勤中の自主的な仕事が、必ずしも労働時間にならないとは限らない、という点へ移ります。
吉田さんは、リモートワーク対応の新幹線を例に挙げます。ウェブ会議ができる車両で、通勤中に上司とオンライン会議をしていたら、それは通勤時間であっても労働時間に該当してしまうといいます。
自主的な時間が原則として労働時間にならないのはあくまで原則で、例外があると吉田さんは続けます。その鍵が「黙示の指示」です。
吉田さんは、退勤時刻までに到底終わらない仕事量を押し付ければ、従業員は残って仕事をせざるを得なくなると説明します。
その状況を、なぜ残っているのかを確認せずに黙認していれば、たとえ明確な指示がなくても残業として認定されると注意を促します。
残業してるけれども勝手にやってるんだっていうのは、会社としてそれを知ってるのであれば、ちゃんと残業しないように注意するっていうのが重要です。
安田さんは、多くの会社が知らず知らずのうちに黙示の指示をしているのではないかと感じたと話し、放送を機に見直してほしいと呼びかけました。
今日のポイント
最後に吉田さんが、この回の要点を整理します。
原則
労働時間とは会社の指揮命令下に置かれている時間を指す
通勤時間
指揮命令下にないため労働時間には該当しない
自主的な仕事
原則として労働時間にはならない
例外
黙示の指示があれば労働時間として認定される可能性がある
自分の判断でしていることが、場合によっては労働時間になっているかもしれない。そこに注意してほしい、というのがこの回の結論です。
まとめ
通勤時間や自主的な仕事が労働時間になるかどうかは、「会社の指揮命令下にあるか」で決まります。原則と例外を知っておくことが、思わぬ未払い賃金やトラブルを防ぐ第一歩になります。
- 労働時間とは、会社の指揮命令下に置かれている時間を指す
- 通勤時間は指揮命令下にないため、原則として労働時間にはならない
- 通勤中の自主的な仕事は原則労働時間にならないが、情報漏洩のリスクもあり注意が必要
- 明確な指示がなくても、残業を黙認する「黙示の指示」があれば労働時間として認定されうる
- 従業員が勝手に残業していると分かっているなら、会社は注意することが重要
