1年ぶりの伏線回収、クワガタペンションへ
今週は「クワガタと静かな解雇」というテーマでお話しします。
実はこれ、昨年10月に放送した第182回「ビジネスクワガタと就業規則」の続編です。1年越しの伏線回収みたいな話ですね。
うちの息子は今6歳で、クワガタやカブトムシを捕りたい年頃なんです。それで去年、静岡の山奥にある虫がたくさん捕れるペンションに行ってきました。
ここがもう異常なぐらい捕れるんですよ。夜に裏山でクワガタ捕獲ツアーみたいなのをやるんですけど、樹液がぶわーっと出ていて、そこにクワガタやカブトムシが5匹ぐらいいるんです。
私は神奈川に住んでいるんですけど、こっちの感覚からしたらありえない光景で。去年はものすごく満足して帰ってきました。
ただその時、あまりにもいすぎて「これ絶対ペンションの人が気を利かせて置いてくれてるよな」という疑惑がわいたんです。妻に言ったら「それは言ってほしくなかったな」と言われましたけど。
検証しに行ったら、やっぱり“置いてある”と確信した話
去年はたまたま運が良かっただけかもしれない。じゃあ今年も同じように捕れたら、これはペンションの方が育てた虫を木につけてるんじゃないか。そんな検証をしたくて、今年も行ってきました。
もちろん検証だけじゃなくて、子供も喜ぶし私も楽しいので行ったんですけど。そして今年も、やっぱり異常なぐらい捕れました。
決め手になったのが、裏山コースの一番奥にいたオオクワガタです。2日連続で同じところにいたんですよ。
クワガタには序列があって、トレーディングカードで言うSSRとコモンみたいな感じなんです。オオクワガタやミヤマクワガタはグレードの高い珍しい種類で、虫取り少年の憧れなんですよね。
一方、ノコギリクワガタやコクワガタは結構たくさんいる。だからツアーを盛り上げるために、一番最後の奥にレアなクワガタを置いてるんじゃないか。2日連続で同じ場所にいたのを見て、そう確信しました。
去年と今年で変わった、オーナーとの関係
ペンションは今年もすごく面白かったんですけど、大きく変わったことがあって。オーナーの態度がめちゃめちゃ優しくなったんです。
去年は私も新参者で、受付の時もうまくコミュニケーションが取れなかったんですよね。オーナーもぶっきらぼうな感じでした。
でも今年は、私の方から積極的に話しかけたんです。「去年も来たんですよ」とか、「くじでもらったオオクワガタが1年以上生きて嬉しかったんですよ」とか。
そうしたら、オーナーも心を開いてくれて。精算の時には笑って「楽しい時間ありがとうございました」と言って別れられたんです。
接客業とは違うぶっきらぼうな方でしたけど、こちらから歩み寄ったことでかなり仲良くなれた。これがあとの話につながってきます。
「静かな解雇」とは何か
ここからが本題です。数年前に「静かな退職」という言葉が流行りましたよね。
会社に所属はしているけれど、積極的に業務を引き受けない、言われたことしかやらない、昇進も望まない。事実上退職しているのと変わらない状態のことです。若者を中心に増えているという調査もあります。
で、最近出てきたのが「静かな解雇」という概念です。
これは会社側の話で、「この人はうちに合っていないな」となったときに、重要業務を渡さない、昇進や昇給のチャンスを与えない。そうやって本人が辞めるのを待つ、という戦略です。
ここで一つ重要な点があります。これはパワハラに該当する恐れがあるんです。
厚生労働省が示すパワハラの6類型の中に、簡単な仕事しか渡さないことも含まれています。その人の職務能力や入社の前提を考えたうえで、あえて簡単な仕事しか渡さないこと自体がパワハラになりうる。まずここは気をつけてください。
静かな解雇をしたくなる会社の気持ちと、私の結論
とはいえ、静かな解雇をしたがる会社の気持ちも、労務担当者としては理解しておかなきゃいけないと思います。
日本の労働法だと、能力不足で解雇する場合、教育をしてチャンスを与えて、それでもダメだったという事実がないと基本的に解雇できないんです。
これを中小企業の現場に置き換えると、なかなか大変なんですよ。中小企業の仕事は紹介や口コミで成立しているケースが多い。
その受注してきた仕事を能力不足のスタッフにやってもらって「やっぱりダメでした」という事実を作るのは、負担が大きいんです。
クレームになれば謝りに行かないといけないし、深刻なら損害賠償も。実際、能力の問題で備品を壊して会社に損害を与えてしまった人の相談を受けたこともあります。
だから「この人にはめちゃめちゃ簡単な業務だけ渡して、人件費は諦めよう」という意思決定をする会社が一定数あるんです。
気持ちはわかります。でもパワハラの話もあるので、私はやめた方がいいと思います。
じゃあどうすればいいのか。ここで最初のクワガタの話に戻るわけです。オーナーとの信頼関係は、こちらから積極的にコミュニケーションを取ったことで変わっていきました。
仕事を渡したくないと感じるスタッフがいたら、まず何が問題なのかを時系列で整理して話すこと。そして「うちの正社員にはこれくらいの業務量・内容を期待している」という期待整理をします。
そのうえで、今どこに到達していないのかを整理して、本人の言い分も聞いていく。この記録集めは正直大変で、Slack文化のうちならまだしも、現場仕事だと関係者にヒアリングして集めることもあります。
客観的に事実を整理して、今後どうしていくかの改善プランを一緒に考える。正社員が無理ならパートはどうか、営業が合わないなら内勤へ、といった配置転換の提案もありだと思います。
そうやって会社が配慮した事実があれば、「静かな解雇だ、パワハラだ」と揉めて退職する可能性も一定程度減るんじゃないかと思います。
まとめ
クワガタのペンションのオーナーとの関係が、積極的なコミュニケーションで1年かけて変わっていったように、職場でも「この人に仕事を渡したくないな」と感じたときこそ、逆に歩み寄った方が早く解決につながると私は考えています。改善して働き続けるにせよ、別々の道を行くにせよ、早めに向き合う方がいい。だから静かな解雇は、私としてはおすすめできません。
- 「静かな解雇」は、簡単な仕事しか渡さない点でパワハラの6類型に該当する恐れがある
- 日本の労働法では能力不足の解雇に教育とチャンスが必要で、中小企業には負担が大きいという事情も理解しておきたい
- 問題を時系列で整理し、期待整理をしたうえで本人の言い分を聞き、改善プランを一緒に考えることが大切
- 配置転換や雇用形態の変更も含め、積極的にコミュニケーションを取る方が早期解決につながる
