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【本日紹介の一冊】
『洪水礼讃――環境飼い慣らしの人類史』(みすず書房、ジェームズ・C・スコット・著/立木勝・訳)
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【エピソード概要】
「100年に一度の大雨」というニュースを、なぜ私たちは毎年のように耳にするのでしょうか。ある地点で毎年およそ1%起こりうる現象も、全国に無数の地点があれば、どこかで起きる可能性は高くなります。しかも、その計算は川が同じ形を保つことを前提にしています。ところが、川は人間よりも長い時間の中で流路を変え、広がり、縮みながら生きています。
今回取り上げるのは、政治学者・人類学者ジェームズ・C・スコットの遺作『洪水礼讃』。人間にとって災害である洪水を、川と生き物の側から見直します。年に一度の氾濫を利用する魚や、魚に子どもを運んでもらうイシガイ、洪水が引いた土に種をまく洪水後退農業。洪水は破壊だけでなく、川の生命を動かすリズムでもありました。
一方、国家が川を管理するとき、複雑な生態系は「水」と「人間」へ単純化されます。ダムや堤防は人の暮らしを守りますが、氾濫を止めた結果、土砂が川底にたまり、次の決壊時の被害を大きくすることもある。スコットは、治療そのものが害を生むという医学用語を借りて、これを「医原性」と呼びます。
番組後半では、地形を力で矯正するハードパスと、川にあふれる場所を返すソフトパス河川工学を比較。オランダ政府、国土交通省、アメリカ陸軍工兵隊など、スコットが批判してきた制度の側も同じ方向へ動き始めていることを考えます。イルカや貝にまで発言させる大胆なアナキズムは、答えというより、人間中心の計算から何が落ちたのかを発見するための「思考の劇薬」なのかもしれません。
【チャプター】
(00:00) 毎年来る「100年に一度」
(00:50) 洪水を、称える本
(03:33) いちばん立派な川は、消えてなくなる川
(06:38) 動けない貝が、魚に引っ越しを頼む
(09:36) 洪水に、畑を耕させていた
(11:14) イルカが、名簿に載せろと言ってくる
(13:58) 堤防は、治すつもりで打った薬だった
(16:24) 堤防を、わざと低くする
(19:56) 併せて読みたい『ゾミア』と『万物の黎明』
(21:53) 自分の家を、川の側から見る
【関連書籍】
『ゾミア 脱国家の世界史』(みすず書房、ジェームズ・C・スコット・著)
『万物の黎明 人類史を根本からくつがえす』(光文社、デヴィッド・グレーバー他・著)
【出演】
プレゼンター:内藤 順
ナビゲーター:首藤 淳哉
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【収録場所】
Hama House
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