採用広報をテーマに、お互いの発信事例を振り返る
今回は池尻大橋のホームワークビレッジからの対面収録です。前回は暑さで頭が働かない回だったと二人は笑いながら、今回は採用広報をテーマに据えます。
最近お互いに発信することが多かったため、それぞれの事例を「実はこういう思いでやっていた」という視点から話していく流れになりました。
学会に合わせた「おばんざいクルーズ」の舞台裏
ばっしーさんは、7月半ばに大阪で開かれた在宅の薬学会に合わせて、全国から薬剤師が集まる機会をとらえ「おばんざいクルーズ」を開催しました。
今回はいつもの立ち飲みの店ではなく、普段はコースで一人数万円するような小料理店を会場にしました。社長が懇意にしている店で、料理長や女将さんの協力を得て実現したそうです。
ただ、会場設計はゼロから作る必要がありました。通常の席数は座ると30もないため、椅子を出し、ビールケースを反対向けにしてお盆を天板にした立ち飲み用テーブルを作ったといいます。
メニューや料金体系もすべて一から組み立てました。しかも当日にならないと何人来るかわからない、という難しさもありました。
予約してフォームで、みたいなやり方だと、立ち飲みクルーズの良さが全くなくなっちゃうなと思ったんです。行きたかったら来たらいいし、行けなかったら行けないでもいいよ、っていう形にしたかった。
想定人数を立てつつも読み切れないなか、結果的には70人から80人ほどが来場したそうです。
仕組みとしては、売上はすべて店に渡し、その代わりに酒や料理を用意してもらう形にしています。クルーズ側は一円も取らず、場と機会を提供してもらうメリットを得るという棲み分けです。
この方式なら店側に利益が出るため人も雇え、当日の運営が回ります。料金はドリンク2杯付きで5千円、食べ物は食べ放題という、店の価格帯からすればかなり安い設定にしたといいます。
Xと学会が生んだ、印象的な出会いとつながり
当日はさまざまな人が集まりました。ばっしーさんが一番嬉しかったのは、Xを見て一人で来てくれた女性の存在でした。
クルーズの吉川さんやバッシーさんの発信を見て行ってみたいと思ったけど、なかなか来れなかったので、意を決して来ました、って言ってくれた人が、最初から最後までいてくれたんです。
キシモトさんは、自分ですら一人で行くのはハードルが高いと語り、その勇気を素晴らしいと受け止めます。
ばっしーさんは、この企画を広報の視点でどう見ているかを説明します。会社が掲げる「人が集まるをデザインする」という行動理念に沿ったアクションだという位置づけです。
さらに、当日の様子をXで発信し続けることで拡散が生まれ、クルーズが人の集まる場の中心にいることをアピールできたといいます。
学会翌日のランチョンセミナーでは社長とばっしーさんが真面目な内容で登壇し、遊んでいるだけではないことをセットで発信できたのも良かったと話します。
特に印象的だったのは、そのランチョンセミナーを聞いた東京の薬剤師が、自分の実習生に「面白い薬局があるから話を聞いてきたら」と勧めてくれたことでした。
いきなりLINEに登録されました、みたいなのが表示されて、え?何がきっかけや?って。聞いてみたら、実際に見学に来ていただける話になったんです。
採用が主目的の企画ではなかっただけに、リアルの場とSNSが掛け合わさって思わぬつながりが生まれたことに、ばっしーさんは手応えを感じたようです。
70人以上が来ても大きなトラブルなく終えられたのは店の協力があったからだと振り返りつつ、社長の吉川さんが一番楽しそうだったことが企画の核だと二人は口をそろえます。
想いを込めた自作パンフレット、その細部へのこだわり
一方のキシモトさんは、採用イベントに向けて、田辺薬局として初めてのパンフレットを自作しました。
制作にはCanvaを使いましたが、当初6ページで作り込んで入稿しようとしたところ、冊子の最小入稿ページ数が8ページだと直前に判明します。
待ってくれ、待ってくれ、って。もうそれが採用イベントに間に合うか間に合わないかっていう時だったので、泣きそうになりながら二ページ足しました。
そもそもこれまでパンフレットを作れなかったのには理由があります。田辺薬局は新卒採用の歴史がなく、パートや子育て世代の薬剤師が中心だったため、新卒の写真が一枚もなかったのです。
新しい社長のもとで新卒採用を始めたものの、学生目線で若手の働き方や活躍を見せるには素材が必要でした。キシモトさんは1〜2年かけて写真を貯めてから制作に踏み切ったといいます。
ばっしーさんは、採用の立ち上げから携わり、育っていく姿をパンフレットにするのは、以前作ったZINEに近い試みだと受け止めます。
「薬剤師はもっと自由でいい」に込めた願い
キシモトさんは表紙に「薬剤師ってもっと自由でいい」というキャッチコピーを入れました。それは薬剤師ではない自分だからこそ抱く願いでもあると語ります。
薬剤師だから調剤室の中にいなきゃいけない、みたいなのを取っ払って、もっと外に視線を向けていけば、バッシーさんみたいな薬剤師さんだっているわけで。
ばっしーさんは、番組に関わる人の中にもヒーローになる人やアイスクリームを作る人、居合をする社長までいることを挙げ、自由にやっている人が周りにいること自体が大事なメッセージかもしれないと応じます。
パンフレットに加えて、キャラクター「たなぽん」の顔をくり抜いて並べたクリアファイルも制作しました。当初は顔を並べすぎて気持ち悪くなり、指摘を受けて数を減らして調整したそうです。
サイズにもこだわりがありました。パンフレットはB5で作成し、A4のクリアファイルにチラシと重ねたとき、後ろの記事や情報がちょうどチラ見えするよう設計しています。
A4サイズで用意し、一番奥に見せたい記事や情報を配置する
B5サイズにして一番手前に置き、奥のチラシの一部をチラ見せさせる
これにより、学生が奥の情報まで見てくれることを狙ったといいます。細部まで意図を込めた設計です。
内製化が生んだ、他社からの相談
このパンフレットを採用イベントに持って行ったところ、別の会社の採用担当者が後日、感動したと声をかけてくれました。
普段は口数が多くないシャイな方が、どうやって作っているのか話を聞かせてほしいと言ってくれたのです。キシモトさんは念願がかなったと喜び、その場からZoomのURLを発行しました。
いつします?って、方が聞いてきてるのに、こっちからもう明後日にしよう、みたいな感じで。
その会社はこれまでパンフレットを外注していましたが、内製化でここまでできることに驚き、担当者自身も作ってみたいと話してくれたそうです。
めちゃめちゃコンチの広報してますやん。もうそっち側の人やん。本日の広報ですよ、それが。
外注は費用も修正の手間もかかります。キシモトさんは、やってきたことが形になり、思いが人へつながっていく手応えを感じた一日だったと振り返ります。
自由にやることが、結果的に発信になる
発信の形は違えど、それぞれの事例がお互いらしいと二人は笑います。太陽と月、陰と陽のようなバランスだと表現しました。
ばっしーさんは、最初から「これは広報だ」と決めてやっているわけではなく、求められる役割を果たすなかで結果的に発信になっている、という点を強調します。
真似してください、というよりは、自由にやっていく中で、こういうことって結果的に外の発信になってるんですよ、っていう。そういうエピソードを共有していきたいですね。
エンディングでは、自分の持つノウハウをどんどん開示していきたいとキシモトさんが語り、困っていることがあればDMで相談してほしいと呼びかけました。二人でイベントを企画したいという話も出て、収録は締めくくられます。
まとめ
学会に合わせたおばんざいクルーズも、想いを込めた自作パンフレットも、出発点は「自由にやること」でした。理念や願いに沿って動いた結果が、そのまま外への発信となり、新たなつながりや他社からの相談を生んでいます。
- クルーズ薬局は「人が集まるをデザインする」理念に沿って場を作り、リアルの場とXの掛け合わせで拡散とつながりを生んだ
- おばんざいクルーズは売上を店に渡す棲み分けで運営し、ドリンク2杯付き5千円という設定を実現した
- 田辺薬局は新卒採用の素材を1〜2年かけて貯め、「薬剤師はもっと自由でいい」を掲げた自作パンフレットを制作した
- パンフレットはB5にして奥の情報をチラ見せする設計にするなど、細部に意図が込められている
- 内製化したパンフレットが他社の採用担当者からの相談を呼び、ノウハウを開示していく姿勢につながっている
