導入事例を語る前に|今回のテーマとナコタ紹介
今回の話題は、システム導入によって在庫を減らし、利益を上げたストアレコードの導入事例です。
樋口さんは、EC支援サービスのネクストエンジンと共同でマーケティングを行い、YouTube動画や記事広告を制作したと話しています。
動画の後編には、以前この番組にも出演した帽子EC企業ナコタの吉田社長が登場し、数字の変化を赤裸々に語ったそうです。今回はその内容を紹介していきます。
ナコタは2011年に楽天出店と同時に開業した、オリジナルの帽子を扱う会社です。現在は楽天、Amazon、Yahoo!、自社サイトで販売し、スタッフ7名ほどで15年続けているとのことです。
受注や在庫、商品管理はネクストエンジンECの受注・在庫・商品管理をまとめて行えるバックオフィス支援サービス。複数モールの運営を一元管理しやすくする。で行い、その上でストアレコードの限界利益管理機能や、推奨発注数量のレコメンド機能をメインに使っているそうです。
売上55%減でも限界利益は4倍|数字で見た変化
樋口さんは、印象的な数字を3つ挙げています。1つ目が「売上が55%減ったのに、限界利益は4倍になった」という話です。
売上が55%減ったけど、限界利益は4倍になりましたっていう話は結構象徴的でした。
昨年は楽天スーパーセールのタイミングで販促を強く踏み込み、初日の売上は180万円を超えていたそうです。
ところが、その初日の限界利益はわずか4万円しか残っていませんでした。売上は大きく立っているのに、手元に残る利益は少ない。ECで起こりがちな状態を目の当たりにしたと言います。
一方で今年は、去年の反省を踏まえ、売上は半分以下になったものの、限界利益は約17万円と前年のおよそ4倍に増えました。売上を追う経営から、限界利益を丁寧に見る経営へ切り替えた結果です。
翌日に振り返れる|意思決定のスピードと経費感覚
樋口さんは、日々のデータを見られることの価値についても触れています。スーパーセール初日の結果が出たら、翌日には振り返りができる。これがシステムで利益管理する良さだと話します。
前日の限界利益を見て、まだ価格を下げてクーポンや値下げで売上を取ってもいい、といった意思決定を翌日の段階で下せます。意思決定のスピードと頻度を上げることが、経営として良いという考え方です。
さらに、吉田社長の経費感覚の変化も興味深い点でした。以前は売上を分母に考えていたため、売上2500万円に対して新幹線代3万円はごく一部で、出張もバンバン行っていいと考えていたそうです。
ところが限界利益を分母に考えると、出張1回で経費の1%以上を使ってしまう。限界利益が見える化されたことで、経営者としての経費への意識が大きく変わったといいます。
本質的な判断ができるように、考え方や思考の部分までアップデートされているのがすごくいいですね。
在庫日数180日から120日へ|キャッシュフローの改善
2つ目の変化は、在庫日数の改善です。ナコタは導入前から在庫管理と在庫日数を課題に感じていたそうです。
ナコタの商品は季節品が多いわけではなく、一年中売れる定番商品を回していくスタイルです。帽子は季節性が小さい一方で、サイズや色を含めるとSKUStock Keeping Unitの略。色やサイズなど、在庫を管理する最小単位のこと。1つの品番でも色やサイズが増えると、SKU数は大きく膨らむ。が増えやすい商品でもあります。
既存の在庫管理アプリは仕様が合わず、スプレッドシートで管理するにはSKUが多すぎて、SKUごとの管理が難しかったといいます。楽天のCSVを自作のエクセルで集計していたものの、手間がかかり、SKU単位の予測はうまくいっていませんでした。
ストアレコードを導入した結果、在庫日数は約180日あったものが、理想としていた120日を切る水準まで下がったそうです。
180から120って60日短縮。すごいですね。これ、キャッシュフローめっちゃ変わりそう。
帽子はいつか売れるからと在庫が膨らみやすい商品です。厳格な管理が必要な部分を細かく見られるようになったことで、キャッシュフローも感覚として楽になったと話されています。
在庫日数は約180日。エクセル集計ではSKU単位の予測が難しかった
理想の120日を切る水準まで短縮。キャッシュフローが楽になった
SKU単位で見えた発注|仕入れコスト年間120万円削減
3つ目は、発注面での具体的な変化です。SKU単位でどの商品がどれだけ売れているかを見たことで、仕入れ先の集約につながりました。
たとえば「10色3サイズ」の帽子は、1品番で30SKUにもなります。品番単位で見ると見えないのですが、SKU単位で見ると偏りが明確でした。
ブラックとチャコールの4SKUだけで年間3000個以上。年間6000個のうち半分以上を、この2色2サイズが占めていました。一方で、年間100個しか売れないSKUもあり、ばらつきが大きかったそうです。
そこで、主力の4SKUのロットと生産時期を工場側でまとめる形に切り替えました。すると1個あたり400円のコストダウンにつながり、仕入れだけで年間120万円の削減に成功したといいます。
推奨発注数量の機能も活用されています。現在の在庫だけでなく、発注残も加味した上で、どれだけ売れそうかを踏まえて適切な発注数をレコメンドする仕組みです。
定番品は「在庫日数方式」で120日分を持つ設定に、冬にしか売れないモコモコの帽子などは、アパレルと同じ「販売終了日方式」で2月末までの需要を計算する設定にして、予測精度を上げているそうです。
税理士や工場ともデータ共有|社外に開いた使い方
ストアレコードはもともと社内向けのシステムですが、ナコタは社外にも開放したいと考えている点が特徴的でした。
1つ目が税理士との連携です。税理士にもアカウントを発行し、決算書上の固定費と、ストアレコード上の変動費・限界利益が合うように管理してもらっているそうです。
固定費が決まっていれば、限界利益がどれだけないと赤字になるかを損益分岐点として意識できます。数字と決算書を合わせることで、年度末を待たずに利益状況を把握できます。
税理士さんが年度の決算を締めて、ようやく利益が出ているかどうかわかるっていう会社さんは、思った以上に中小企業だと多くて。
2つ目が、工場やOEMメーカーとのデータ共有です。まだ実現していませんが、権限管理で該当メーカーの商品データだけを見せ、発注交渉に活かしたいという要望があるといいます。
樋口さんは、ユニクロが工場にリアルタイムの販売データを共有し、工場が先回りして資材を準備できる例を挙げています。データをオープンにすることで得られるメリットを、吉田社長が強く意識していた点が勉強になったと話します。
業務効率化の先へ|本当の意味のDXとは
戸部さんは、この事例が単なる業務効率化にとどまらず、その先の判断を変えている点に本質を感じたと話します。
ツールを導入して業務効率化しました、で終わっていなくて、その先の判断を変えているのがすごく本質的でいいなと。DXって感じですね、本当の意味の。
樋口さんは、最近見たERPのタクシー広告を例に挙げます。「うちの会社は利益も増えて在庫は減ったぜ」という内容で、まさにそこだと感じたそうです。
業務効率化の観点では、作業時間の削減を時給換算して効果を示しがちですが、それだけでは大きなメリットに感じてもらいにくいと言います。
経営陣や権限を持つ人が、正しいデータで頻度高く意思決定することで、利益が増え、在庫が減る。限界利益に余裕があるから不良在庫を早めにクーポンでさばく、といった判断が見える化された上でできることが、最大のメリットだと締めくくっています。
まとめ
ナコタの導入事例は、売上規模を追う経営から限界利益を重視する経営への転換を、具体的な数字で示すものでした。システムは業務を楽にするだけでなく、経営判断そのものを変える力を持つ、という点が印象に残ります。
- 売上が55%減っても、限界利益は前年の約4倍に増えた
- 在庫日数は約180日から120日を切る水準まで短縮し、キャッシュフローが改善した
- SKU単位で販売傾向を把握し、主力4SKUの生産集約で年間120万円の仕入れ削減を実現した
- 税理士や工場とのデータ共有で、損益分岐点の把握や発注交渉に活かそうとしている
- 効率化にとどまらず、正しいデータで意思決定の質と頻度を上げることが本質的な価値
