理念やビジョンの共有は必要か
最初の相談は、事業再生のように他社の人と働くとき、理念やビジョンの共有は必要かというものでした。西野さんの答えは明快です。
これ結論必要ですね。絶対に必要。
西野さんが例に挙げたのは、河口湖音楽と森の美術館を運営するCHIMNEYTOWNの体制です。各部署ごとに損益計算書を出し、スタッフ全員がそれを理解していると言います。
どこで売上がどれくらいで、原価や販管費がどれくらいかかっているか。その上でどれくらい営業利益を残すか。これを役員だけでなく働く人全員が頭に入れておくべきだと話します。
理由は、自分では頑張っているつもりでも、やればやるほど赤字を掘っている場合があるからです。だからPLの共有は非常に重要だと語られました。
さらに西野さんは、仕事とは何かという定義にも踏み込みます。手を動かすことでも足を動かすことでもなく、価値を生むことだと言います。
仕事っていうのは価値を生むこと。要するに手を動かしても、それが価値を生んでいなかったら、それは仕事と呼んじゃいけない。
では、どう浸透させるのか。西野さんは一対一で喋り続けるしかないと言い、加えて自分が一番動くことを挙げました。四十名弱いるスタッフの中で、まず自分が一番働く姿を見せると話します。
最近一番嬉しかったこと
次の質問は、最近嬉しかったことは何かというものでした。西野さんが挙げたのは、美術館内にコマ撮り短編映画ボトルジョージの専用劇場を作ったことです。
ボトルジョージシアターを作ったことで、美術館に来る客がほぼ全員この作品を見るようになったと言います。
今のペースだと年間十六万人、六年間で百万人にボトルジョージを届けられる計算になると話します。西野さんは、短編映画をこれだけの人に届けられるのは奇跡だと語りました。
短編映画を百万人のお客様が見るっていうのって、これ聞いたことないです。
そして西野さんは、このスタイルこそ短編映画の出口の答えだと断言します。短編映画をどこで回収するのかという長年の問題に、終止符を打ったという手応えです。
なぜ回収の説明がつくと作りやすくなるのか
コマ撮り短編映画を作るには、まとまった予算が必要になります。それをどう回収するのかという問題があり、CHIMNEYTOWNも第二弾になかなか踏み出せなかったと言います。
しかし、最終的に美術館のコンテンツにすれば、集客を通じて少しずつ回収できます。この出口が見えたことで、新しい短編映画を作りやすくなったと話します。
西野さんは今後も、これまでの絵本をベースに短編映画を作る気持ちがあると答えました。ボトルジョージシアターの隣の部屋もシアターにする構想があると言います。
将来の夢は、十分ほどの短編映画を見ては次のシアターへ移り、また次へと進む形です。シアターごとに世界があるような施設を面白いと考えています。
短編映画を作るときに気をつけること
短編映画を作るとき気をつけることは何か、という質問もありました。西野さんが挙げたのは、回収が後回しになりやすいという点です。
短編映画は長編の名刺代わりに使われることが多く、単体で商業的に成立している例はあまり聞かないと言います。
だからこそ、最終的な出口をイメージすることが必要だと話します。勢いだけで作ると、まったく使えないものが出来上がってしまうという指摘です。
ボトルジョージの場合は、美術館の展示品にすると決めたことが逆算につながりました。DVDやブルーレイ、配信にしないと決め、そこから作り方を組み立てたと言います。
出口を決める
美術館の展示品として見せると決める
形式を絞る
DVDや配信にはせず美術品として扱う
集客につなげる
来館者がほぼ全員視聴する流れができる
回収する
集客を通じて少しずつ制作費を回収する
発表から一年半ほど動かさなかったのは、何もしなかったからではなく、美術館で展示する機会を狙っていたからだと語られました。
現場で見えた美術館の可能性
まだ美術館に眠っている可能性を教えてほしい、という質問には、まず活用されていないスペースの話が出ました。チムニーシアターというホールの裏側の庭に、人の流れが生まれていないと言います。
そこに西野さんが構想しているのが、屋外の展示です。スタッフに送ったというLINEの内容も紹介されました。
美術館の池の奥に大きい月置きたいです。八メートルぐらいの月があるといいです。池に月が落ちてたらおもろいから。
理由は理屈ではなく、単純に大きな月が池にはまっていたら面白いから、というものでした。絵本『えんとつ町のプペルの約束』のラストシーンで大きな月が出る場面ともつながっています。
費用がかかるため実現は先になるものの、河口湖にほとんどないナイトイベントとして強いと考えていると話します。
美術館の今後の戦略については、お客さんの足音に耳を傾け続けることが基本だと語られました。自分が何度も現場に入り、接客をして、客が何を求めているかを探し続けると言います。
その上で、人の流れをゼロから作るのではなく、すでに人が集まっているところに追加投資する形がいいと話しました。
暑さ対策とベンチの位置から学んだこと
今、欠かせないのが暑さ対策です。屋外の遊園地などでは、本来書き入れ時であるはずの夏休みに集客を落とす施設もあると言います。
西野さんは、もし自分が富士急のスタッフなら、水をイメージするアトラクションを増やすと話します。急流すべりや、水をぶっかけられる広場などです。
大阪万博でもミストが人気だったことに触れ、水や涼を感じる場所の大切さを挙げました。
一方、美術館では前日にベンチの位置を一通り見直したと言います。人の動きをずっと観察し、誰も座らないベンチはすぐ動かしたそうです。
置き直してわかったのは、日陰に置いたベンチに人が座るということでした。さらに面白い発見もあったと話します。
パラソルの日陰じゃなくて、大きな木の日陰に人が集まる。パラソルの日陰、まだ暑そうっていうイメージがある。
西野さんは、風を感じる日陰に人は集まると気づいたと言います。置く場所で座られる頻度が大きく変わり、勉強になったと振り返りました。
まだ暑そうというイメージがあり、あまり信用されない
風を感じられるため、人が自然と集まる
音楽と森の美術館は木陰が多く、この点で恵まれているとも話します。暑いから行くところがない、という理由で選ばれる場所になりうると言います。
さらに、この美術館は雨の日に客が増えるとも語られました。旅行に来て雨が降り、山登りや滝が難しくなったとき、室内で楽しめる場所として選ばれるからです。
雨って本来敵じゃないですか、こういうエンタメの。雨が味方になってんのは強いですね。
美津賀への言及があったほか、沖縄の美ら海水族館も同じ構図だろうと例に挙げました。天気予報に雨マークがあれば、水族館側はむしろ喜んでいるのではないかと話しています。
ライトアップと融資型クラウドファンディング
美術館のライトアップについては、実施すると答えました。事業投資型クラウドファンディングについても、今年中にやると明言しています。
西野さんが強調したのは、これを融資としてやりたいという点です。事業投資型クラウドファンディングを使った融資という選択肢があることを、リスナーに知ってほしいと話しました。
詳細は改めて説明するとしつつ、こうした資金調達の選択肢を共有したいという意図が語られました。
この回では、徳島の阿波おどりの二〇二五年の収支が総収入四億四千六百三十三万円、純利益三千四百四十三万円という情報も紹介されました。西野さんは利益が出てよかったと反応しています。
ただし、表に出ている数字は経費の扱いなどがわからない部分があるため、鵜呑みにはできないとも補足しました。それでも利益が出たこと自体はよいのではないか、という受け止めでした。
まとめ
この回は、河口湖音楽と森の美術館の運営を通して、短編映画の回収方法や現場での気づきが語られる相談回でした。理念の共有から出口の設計、ベンチの位置まで、話題は具体的でした。
- 理念やビジョンの共有は必要で、PLを働く人全員が理解しておくべきだと語られた
- ボトルジョージを美術館の展示品にすることが、短編映画の回収問題への答えになった
- 短編映画は出口を先にイメージし、そこから逆算して作ることが重要だと話された
- ベンチの位置を観察し、風を感じる木の日陰に人が集まると気づいた
- 雨の日に客が増える点を強みとし、事業投資型クラウドファンディングを融資として行う構想も語られた
