コスパもタイパもない美術館プロジェクト
西野さんが率いるチムニータウンは今、川口子にある美術館の運営に大きく比重を置いています。
ただし、この取り組みには一般的なビジネスの旨味がありません。
そもそも2026年の今、美術館が流行しているわけではありません。世の中のトレンドはAIであり、美術館の発信をしてもインフォや再生数が稼げるわけではないと西野さんは言います。
さらにチムニータウンが行っているのは「事業再生」です。再生が必要な施設からお金をもらうわけにはいかないため、この春からずっと持ち出しで、ほぼボランティアで動いているといいます。
注目が集まる取り組みでもなく、実利の大きい仕事でもない。それでも毎週定例会議を開き、交通費も宿も自腹で川口子に通い続けています。
そこにコスパとかタイパなどといった言葉はないんですね。ないんですよ、そんな都合のいい言葉。
投資ではなく「楽しいから」やっている
会社として見れば、今の時点ではやればやるほどマイナスになる取り組みです。それでも西野さんもスタッフも「おもろいな」と言いながら向き合っているといいます。
これを「将来回収するための投資」と考えればプラスになる、という理屈もあります。しかし現場の実感は少し違うようです。
投資だからここは我慢だみたいな感じで割り切ってやってるわけじゃなくて、シンプルにやってることが楽しいから夜遅くまでやっちゃうっていう感じなんですね。
イベントがあった夜は、毎回のように深夜2時3時まで残り、開いている町中華で記憶が飛ぶまで飲みながら、次はどうするかを語り合うそうです。
オルゴールの置き場所をどうするかといった細かい話まで朝方まで続き、翌朝は開館前に館内を歩き回って、まだやれることはないかと探しているといいます。
こうして喋ってる今もですね、私、今もですね、もう美術館に行きたくなってる。
西野さんはこの状態を、投資というより「偏愛」や「趣味」に分類されるものだと位置づけます。
AIの上位互換時代に残るのは「偏愛」
ここからが本題です。コスパやタイパの話をすれば、その上位互換に来るのはAIであることは周知の事実だと西野さんは言います。
だからこそ、これから面白がられるのは別の種類の行動だと語ります。
別に誰から求められてるわけでもないけど、やっちゃうことだとか、特にお金になるわけでもないけど、やっちゃうことといった、極めて趣味に近いものになってくるのではなかろうか。
「これからは偏愛しか残らない」という話は数年前から繰り返されてきました。ただ西野さんは、実際にAIをがっつり触りながら美術館プロジェクトを進めた結果、その実感が強まったといいます。
コスパを無視した取り組みには、競合が出てこないというのです。美術館を作るような競合は現れず、だからこそ差がどんどん積み上がっていきます。
世の中に見つかった時にはですね、もう二番煎じが追いつけないぐらいの差が開いてしまっているんじゃなかろうか。
「AIの是非」を問う議論は今だけ
今は「AIが書いた文章はすぐわかるから手書きすべきだ」といった議論が方々で起きています。西野さんは、AVEXの松浦会長のノートが実はAIで書かれていたという話題も例に挙げます。
しかし西野さんは、その是非を議論するのは今だけだと断言します。まもなく、生まれたときからAIテキストやAI動画に触れている世代が出てくるからです。
彼らからすると、AIは日用品でありインフラであって、その是非を問うものでも何でもない。AI使ってるのひどいみたいな世界は、もうおじさんおばさんの議論であって、子供たちはそんな話一切しない。
そしてその時代は遠い未来ではなく、2年以内にほぼ間違いなく来ると西野さんは見ています。
今のうちに「変なやつ」になっておけ
だからこそ西野さんは、今のうちに動くべきだと提案します。他の人がコスパの悪さでやらないけれど、自分だけは夢中になれること。意味のない、趣味みたいなものを見つけることです。
それを2年ほどかけてコツコツ積み上げておく。そしてAIでコスパやタイパを極めた人たちが世界を埋め尽くしたとき、遅れてやってきて差し出すのがいいといいます。
この間自分こんなもの作ってたんですけど、みたいな、ちょっと見世物小屋的な珍獣的なコンテンツを差し出すのが良さそうだと。何これいつやってたの?みたいな、そのポジションの取り方がいいんじゃないか。
道具が揃い、機能で差がつけられなくなった時代に最も必要なのはポジションだと西野さんは強調します。
議論の中心は「AIを使うことの是非」ではなく、「誰がAIを使うか」に移っていく。だからとっとと趣味を見つけ、特化型の「変なやつ」になっておくことを勧めています。
まとめ
西野亮廣さんは、コスパもタイパも度外視した美術館運営を「楽しいからやってしまう偏愛」と位置づけ、AI時代にこそこうした趣味的な取り組みが希少な価値を持つと語りました。機能で差がつかない時代に必要なのは、夢中で積み上げた独自のポジションだという仮説です。
- チムニータウンの美術館運営は、実利も注目も少ないが「楽しいから」続いている
- コスパを無視した取り組みは競合が出にくく、差が積み上がっていく
- AIの是非を問う議論は一時的で、2年以内に「誰が使うか」へと焦点が移る
- 今のうちに趣味を見つけ、コツコツ積み上げて独自のポジションを取ることが有効
