五種類を一気に打って大丈夫?という不安
前回は乳児期のワクチンの種類と、五種混合ワクチンの中身について取り上げました。今回はその続きです。
まず話題になったのが、五種類も一度に注射して安全なのか、という不安です。これはとみーさんもSNSで気にしていた点だと言います。
五種云々というよりかは、子育て中に打つワクチン多すぎんかみたいな。定期接種の対象が年々増えてることに対して、十年前はこんなになかったのに、なんでこんなに種類が増えてるの?って
ワクチンの対象が増えるほどに負担は大きいわけじゃないですか。注射は嫌だし、母や保護者の精神的な負担をとても強いていると思う
嫌がることをやりに行くのだから、やらなくていい理由を探したくなるのも自然だ、ととみーさんは話します。
五種混合が「安全」といえる理由
あきさんは、まず回数の面でのメリットを挙げます。五回打つより一回で五種類打てた方が、子供の負担も、病院に何度も連れて行く手間も減るからです。
さらに、ワクチン自体がどんどん改良されている点も大きいと言います。
昔の不活化ワクチンはウイルス全体を入れていました。今は、ウイルスや細菌のどの部分に免疫を働かせたいかを絞り、その一部分だけを作って体内に入れる方式です。
つまり雑多なものをドバッと入れるのではなく、五種類それぞれのウイルスの特定箇所だけを使うので、ワクチンとして働く以外のいらない部分が少なくなっています。
そのため、従来よりも安全性が上がっていると言われています。これは技術の発達と、研究してきた科学者の努力のおかげだとあきさんは話します。
ウイルス全体を入れていたため、免疫に関係ない部分も多く含まれていた
ウイルスや細菌の特定箇所だけを使い、いらない部分が少なく安全性が高い
なぜ生後2か月から打つのか
では、なぜ生まれたての赤ちゃんに打つのでしょうか。あきさんは、生後2か月ごろから免疫がどんどん発達していくからだと説明します。
この時点で免疫をつけておけば、窒息や髄膜炎といった非常に怖い病気を防げます。深刻な五つの疾病から一気に守れるようにする意味合いがあります。
とみーさんは、過去のRSワクチンの回で扱った内容を復習として整理します。
生まれたての赤ちゃんは免疫機能が働いてなくて、それがちょっとずつ働き始める。でも生後六ヶ月ぐらいまでは激弱だから、母体から免疫を送り込んであげる
生後二ヶ月の、ギリギリ自分で免疫を覚えれる、入れたワクチンに体が反応できる時期に打って、生後六ヶ月までの死亡を防ごうっていう意図で合ってる?
あきさんはこれに同意します。五種類の中には長期的に効くものも、一時的に止められればよいものもあり、複雑ではあります。
ただトータルで見れば、赤ちゃん期に重篤なことが起こるものを防ぐ意図のものが五種類混ざっている、という形です。
なお海外では、ここにB型肝炎ウイルスを加えた六種混合が出ています。日本でも承認を進めており、将来的には六種になるだろうとあきさんは話します。
五種混合のデメリットと副反応データ
メリットだけでなく、デメリットも押さえておこうと、あきさんは導入後の報告状況を紹介します。
厚生労働省で2025年7月に開催された検討会の資料によると、五種混合の導入後約1年間で、重篤な症状が出たのは約5万件に1件でした。
この11例は、主な症状としてアナフィラキシー、熱性けいれん、血小板減少性紫斑病などが報告されています。ただし、ワクチンが原因なのか、以前からあったものが後に顕在化したのかは調査中だとあきさんは説明します。
これらの子はその後、治療により回復しています。重篤な副作用が出た場合は追加で観察を行い、原因追及もされると言います。
原因が分かれば、同じような事例の子供は避けたり、時期をずらしたりといった対応が取られます。常に改善は続いていくので、その点は国を信頼してあげてほしい、とあきさんは話します。
肺炎球菌ワクチンと「実写版はたらく細胞」
続いて、同じく2か月以降に打てる小児用肺炎球菌ワクチンです。これは単独で打つワクチンです。
肺炎球菌はヒブと並んで乳幼児の健康を守るうえで重要な相手です。子供では髄膜炎になると重症化しやすく、難聴や麻痺の後遺症が残る割合も高いという特徴があります。
ほかにも、菌が血液に入り込む敗血症、中耳炎から難聴になるケースなどがあります。免疫をしっかりつけるため、生後2・3・4か月の計3回と、1歳から1歳3か月の間に1回の計4回打ちます。
このワクチンは20価ワクチンです。肺炎球菌には今知られているだけで100種類ほどの型があり、その中で特に重篤な症状を起こす20種類が対象になっています。
導入の効果は数字にも表れています。肺炎球菌ワクチンは2023年に定期接種されました。
軽い感染も含めた感染者数は年間3000人以上いました。その中で髄膜炎を発症していた方が、定期接種前は年間約200人だったのが、今は数十人以下まで激減しています。
ワクチンの定期接種が始まってから、その十三価ないし二十価に入っている型の肺炎球菌はほとんどかからなくなったよと言っても過言ではない
このワクチンも改良を重ねてきました。最初は7価でしたが、その7つを抑え込むと別の型が猛威を振るいだしました。空いた隙間から出てきたのです。
そこで13価が登場し、さらに今は15価や20価が出ています。今はより多くの型を抑えた方がよいということで、20価が主流になっています。
とみーさんは、耳慣れない肺炎球菌の大事さを説得力を持って説明したいと切り出します。
実写版はたらく細胞に肺炎球菌さん出てきます
二時間ちょっとの短い時間の中で肺炎球菌さんが出てくるぐらい、みんなが知っておくべき菌の一つだよって、作家の方々が判断したんだなって思いました
あきさんは作中の描写を思い出します。肺炎球菌は「莢膜」という硬いガードを菌の周りに持ち、免疫細胞を近づかせない強力なバリアを張ります。
そのため体内で一気に増えてしまいます。作中では最後、鼻水で閉じ込めてくしゃみで体外に追い出す形で退治されていました。免疫細胞だけでは対抗しにくい相手なのです。
肺炎球菌は普段は鼻の穴などにいる常在菌で、免疫が抑え込んでいます。しかし疲れると隙を見て体内に入ってきますし、乳幼児は誰かからもらった時に重症化しやすいので、ワクチンで抑えることが重要です。
さらに、免疫が下がる高齢者もこの菌で多く亡くなっています。祖父母と暮らす赤ちゃんが感染源となり、菌をうつしてしまうこともあるため、防ぐ意義は大きいとあきさんは話します。
一生付き合うことになるB型肝炎
次はB型肝炎です。こちらも2か月以降で受けられます。悪さをするのはB型肝炎ウイルス(HBV)です。
このウイルスはDNAをゲノムに持ち、それをカプシドというタンパク質の殻が囲み、さらに外側をエンベロープが覆う構造をしています。唾液や汗、涙、性交渉などの粘膜感染で広がります。
赤ちゃんの場合は母子感染が多く、HIVよりも感染力が強いのが厄介な点です。
問題は、このウイルスの居座り方です。感染すると肝臓の細胞に取りつき、細胞の核の中にウイルスのDNAが忍び込みます。
核に入ったDNAを取り除くのは今の技術ではできません。そのため一生このウイルスと付き合うことになります。免疫で抑え込めている間はよいものの、調子が悪くなると黄疸などが出て、長期的には肝臓がんにつながることもあります。
大人がかかっても、多くは核に忍び込む前に免疫で倒せます。しかし赤ちゃんはキャリア化しやすく、1歳未満で感染するとおよそ90%がキャリア化すると言われます。
キャリアになると、パートナーや、女性なら出産時に子供へうつす可能性が出てきます。ただし体内のウイルスをうつす濃度にまで上げなければよく、今はそれを抑え込めます。
自分がキャリアだと分かって対策していれば、それほど恐れるものではありません。しかし薬がなければ深刻な事態になるため、最初からかからないのが一番で、ワクチンが重要になります。
妊婦さんがHBVキャリアかどうかは、妊婦健診で必ず分かります。キャリアと分かれば、子供にうつさないよう病院が対策してくれるので安心してほしい、とあきさんは話します。
ここでとみーさんが、健診の大切さに話を広げます。
妊娠が分かったら妊婦健診にちゃんと行きましょう。稀に生まれる直前まで妊娠に気づかない方もいて、検査してないからキャリアかどうかわからないまま産むことになる
女性陣は、ご自分の体重の変化、体調の変化をきちんと把握して対策をしましょう
あきさんは、この病気の歴史的な背景も補足します。1980年代以前は年間数万人が感染しており、集団接種での注射器の回し打ちなどで感染したと思われる人が一定数いました。
親の世代や少し上の世代に多く、知り合いの中にも「ずっと疲れっぽいと思っていたら調べたらこれだった」という人がいるそうです。
2024年のデータでは、新規感染者数は年間約4100人まで下がっています。感染経路は性交渉のほか、針を替えずに行うタトゥーでの感染も少なくないようです。
自分がキャリアかもしれないと疑う人は、まず知っておくことが大事だとあきさんは言います。キャリアと分かれば抑え込めるので、ぜひ治療を受けてほしいという呼びかけです。
なお、献血の際にも病気のチェックはされます。ただし、赤十字は病気のチェック目的での献血をしないよう求めていると二人は補足します。
世のため人のために献血をするついでに、ご自身のご病気のチェックができるというラッキーな話があるよみたいな。ちょっと小声で言っておいてもいいかな
下痢と嘔吐が怖いロタウイルスと接種時期の意味
最後はロタウイルスです。これも2か月から接種します。とみーさんは「生後2か月で打つワクチン多くない?」と驚きます。
あきさんは、これは10年前にはなかったワクチンだと答えます。今は10年前より防げるものが増えているという意味でもあります。
ロタウイルスは二重鎖RNAウイルスで、硬いカプシドを持つため石鹸やアルコールで死ににくいタイプです。感染者の便に含まれるウイルスが手などを介して口に入り、感染が始まります。
ウイルスが付いたおもちゃやドアノブ、衣類からの間接感染や、乾燥した吐しゃ物・便が舞い上がっての感染もあります。机やドアノブに付いても数日間は感染力を保つため、吐しゃ物が付いた場所は次亜塩素酸(ハイター)での拭き取りが必要です。
ロタウイルスワクチンは、口から飲む経口生ワクチンです。ロタリックスなら計2回、ロタテックなら計3回接種します。
重要なのが接種時期です。初回は生後14週6日目までに受けることが強く推奨されています。この日までに受けないと、腸重積症という合併症のリスクが出てくるためです。
腸重積症とは、腸の中に腸が折りたたまって入り込んでしまう症状です。治療はお尻から空気や水を入れ、重なった部分を伸ばして行えます。
ここでとみーさんが、SNSで見た不安の声を紹介します。
まだ離乳食も始まってない、母乳かミルクしか飲んでない時に口からワクチン入れるなんて怖い
あきさんは、この不安こそが接種時期の理由につながると説明します。
この時期の赤ちゃんの腸はまだ食物が通っておらず柔らかく、免疫反応が激しく起こりません。腸重積症は腸が体を守ろうとして起こす症状ですが、腸の免疫が未発達なうちはその防御機構が働かないのです。
だからこそ、その時期までに一回目を受けておくことが大事だとあきさんは言います。「これは定期的に入ってくるから危なくない」と腸が学ぶ、免疫寛容が起こる状態のうちに入れておく、という考え方です。
子供がロタにかかると、最初の1日は水分を受け付けないほどの激しい嘔吐が続くことがあります。米の研ぎ汁のような白い下痢が数日続き、高熱や脱水症状も起こります。
あきさんは、ワクチンがなかった頃に我が子がロタにかかった経験を語ります。
水を飲まないというか、もう喉がめっちゃ乾いてて、水をすごく欲しがるんだけど、飲んだ途端に嘔吐するんですよね。本当にかわいそうで
病院では、経口補水液をキャップ一杯ほどだけあげるよう言われたそうです。水を欲しがるのにあげると吐き出す姿が本当につらかったと振り返ります。だからこそ、ワクチンができたことに感動したと言います。
日進月歩のワクチンと、その時期に打つ意味
あきさんは、ロタウイルスワクチンの開発の歴史も紹介します。まずオーストラリアのルースビショップ博士が、下痢の症状の子供からロタウイルスを発見しました。
その発見から後年、アメリカで初めてロタウイルスの生ワクチンが承認されます。しかし接種開始後、一定の割合で腸重積症が出ることが判明し、承認から1年足らずでメーカーが自主的に販売を中止しました。
再承認のため、次のワクチンでは大人数の規模で試験を行いました。その結果、接種時期ややり方を工夫することで、腸重積症のリスクを大きく下げられるようになったと言います。
これにより、以前の副反応の割合は10万人に1人程度まで抑えられるようになりました。ワクチンがどんどん進化し、重篤な副作用が出ない方向に改良されてきた、というのがあきさんの伝えたかった点です。
話を終えるにあたり、とみーさんは接種時期への納得を口にします。
生後二ヶ月の赤ちゃんにワクチンこんなに打つなんてかわいそうみたいな気持ちはすごく想像できるんだが、生後二ヶ月だからこそ、有効に働いてくれる
ちゃんとその時期にも意味があるんだなっていうのが、話を聞いてて感じた
あきさんは、今もノロウイルスのワクチンはないことにも触れ、いつか防げるようになってほしいと話します。防げるものが増えていく中で、チャンスを逃さず打ってあげてほしい、ただしもちろん親の判断で、と締めくくりました。
まとめ
生後2か月から打つワクチンは種類が多く見えますが、この回では回数を減らす工夫、改良による安全性の向上、そして「その時期だからこそ有効に働く」という時期の意味が具体的に語られました。不安の背景を科学の視点で一つずつほどいていく回でした。
- 五種混合はウイルスの特定箇所だけを使う方式に改良され、従来より安全性が高いと説明されています。
- 肺炎球菌は莢膜という強力なバリアを持ち免疫細胞が対抗しにくく、ワクチンで防ぐ意義が大きいとされています。
- B型肝炎は1歳未満で感染するとおよそ90%がキャリア化し、一生付き合うことになるため予防が重要です。
- ロタワクチンは生後14週6日目までの初回接種が、腸重積症のリスクを下げる鍵になると説明されています。
- ワクチンは大規模な試験と改良を重ねて副反応を抑える方向に進化しており、接種時期にも意味があると語られました。


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