不妊の定義と、まず自分を知ることの大切さ
最初に話されたのは、不妊の定義です。あきさんによると、普通にセックスしているカップルで1年子供ができない場合、不妊と定義されます。
以前は2年とされていましたが、長すぎるという判断で1年に変わったそうです。あきさんは「まあまあ曖昧な定義だなという感じがします」と話しています。
自然妊娠の確率についても触れられました。きちんと排卵日にセックスをしていると仮定すると、大体3回から4回に1回妊娠できると言われています。
それを聞くとあれですね。タイミング療法に取り組む期間、半年以内ぐらいでいいんだなっていう感じがします
この数字を踏まえ、あきさんは不妊かもと感じたときにまず大事なのは、自分の体の状態を知ることだと強調します。
女性がまず受けるべきAMH検査
女性に絶対最初に受けてほしい検査として挙げられたのが、AMH検査です。
あきさんによると、卵巣の中の小さな卵子たちはそれぞれ少しずつホルモンを分泌しています。卵子の数が多いほどホルモン量も多くなるため、残っている数の目安がつかめるという仕組みです。
ただし、AMHが低いから妊娠できないというわけではありません。AMHはあくまで卵子の在庫数を示すもので、卵子がどれだけ元気かという質はわかりません。
たとえばAMHが低い20代の人と、AMHが高い45歳の人を比べると、一回あたりの妊娠率は20代の方が圧倒的に高い傾向があるといいます。
若い人は在庫が少なくても、体外受精で取れる卵子はエース級で、胚盤胞まで進んで着床する可能性が高いと説明されました。
逆に、在庫が多くても年齢が上がった卵子だと、受精しても卵割が起こらなかったり、途中で止まったりしがちだそうです。
卵が割れると書いて卵割ですね
そのため、AMHの数字だけで一喜一憂しないでほしいとあきさんは話します。ただ、事実を知ること自体は大切だと付け加えました。
ではなぜ最初に測るのか。それは治療のスピード感を決めるためだと説明されます。AMHが高ければしばらくタイミング療法で様子を見るゆったりしたプランが組めますが、低ければ残された時間が短いとわかり、早めに体外受精へ進む判断ができます。
注意点として、AMHを測らずにタイミングを進める病院もあるため、「AMHは測らないんですか」と聞いてみることを勧めています。
先生が特に勧めなかったからこれ測らなかったっていうので、時間を無駄にするのは本当にもったいないと思います
パートナーの有無に関わらず勧められるブライダルチェック
ここでとみーさんが、個人的な意見と前置きしつつ、20代後半以降で子供を望むなら、パートナーの有無に関わらずブライダルチェックを受けてもいいと話します。
不妊だなって思ってから行くんじゃなくて、子供が欲しいと思っている人はチェックは一回受けといた方がいいんじゃないかな。健康診断ぐらいの軽さで
多くの項目が保険適用されるため自己負担も少なく受けられると、あきさんも補足しました。
男性が受ける精液検査と、その心のハードル
続いて男性側の話です。男性は精液検査を受けましょう、と話されました。不妊の原因は約半分が男性側にあるためです。
検査自体は、女性のAMH検査が採血で針を刺すのに対し、男性は精液を提出するだけなので、あきさんは「深く考えずに受けましょう」と話します。
一方で、心の問題もあると指摘されました。精子がいない、数が少ないといった現実を突きつけられると、男としての自尊心が傷つくと感じる人もいるかもしれません。
現状を把握しないと前にも進めませんので、ぜひこれは受けてください
検査を受けられる場所についても触れられました。人工授精をするクリニックはだいたい対応してくれますが、男性不妊を専門にする病院や医師は少ないため、妊娠を望む産婦人科での相談が勧められています。
民間で売られている、スマホと顕微鏡で自分の精子を見るキットもあると紹介されました。医療ではないものの、目安になるそうです。
ここでとみーさんが、精液検査は採取から検査までの時間が短い点を補足します。あきさんによると提出は3時間以内が目安です。そのため、病院の個室で採取したり、受診時間に合わせて自宅で採取したりする必要があり、これがプレッシャーになるという話も聞くそうです。
あきさん自身の経験談も語られました。クリニックのビデオルームに通され、どの動画を見ようか迷ったり、時間がかかると受付にどう思われるか気になったりしたといいます。
採取したカップを提出する時に、受付の女性からお疲れ様でしたって言われたことがあって。いや、疲れてねえんだけどなっていうか、すごい恥ずかしかった
重要なのは、AMHと精液検査を必ずカップルで両方やることだと強調されました。男性が検査を受けていないと、原因が男性側にあった場合、女性がずっと無駄な努力を続けることになりかねません。
自己努力の位置づけと、タイミング療法・人工授精
一般的な治療の進み方も紹介されました。子供ができないと感じた女性がまず取り組みがちなのが基礎体温です。しかしあきさんは、これは非常に曖昧で古いやり方だと話します。
今は病院での血液検査や卵巣の超音波で排卵日がわかるため、基礎体温の自己努力に一生懸命になる必要はないと説明されました。
妊娠しやすくなる食事やヨガも、健康的な生活としては良いものの、これをやれば必ず妊娠できるとすがり続けるのはやめてほしいと話されています。
この点についてとみーさんは、ストレスを溜める努力と減らす努力があると整理します。
これに取り組んでいることで妊娠力が上がっているぞ、ワクワクってなれる努力は取り組むべきだと思うんですけど、基礎体温測り忘れちゃったみたいな感じでストレスになっちゃう方はやらない方がかえって心の健康にいい
次に、病院で最初に勧められがちなタイミング療法です。超音波で卵巣の状態を見たりホルモン剤で確実に排卵させたりして、その日にセックスをする方法です。
その治療成績は思ったより低いと話されました。35歳以下で1回目は5〜10パーセント、3回で15〜20パーセント、6回で20〜30パーセント程度だといいます。
思ったより低いよね。しかもこれ、だって三十五歳以下の話でしょ
35歳以上では1回目で妊娠できるのは5パーセント以下とさらに低くなります。卵子の在庫は減り続けるため、年齢が高い人はタイミングに長く取り組むべきではないと話されました。
一方でとみーさんは、治療開始後は検査が多く毎週リズミカルには進まないため、検査と並行してタイミングを取る先生は比較的多いと補足します。時間を無駄にしないための取り組みとして価値があるという整理です。
タイミング療法が効果的なのは、軽度の排卵障害や生理不順の場合です。逆に、男性不妊や両側の卵管狭窄がある場合は効果がないと説明されました。
卵管については、必ずしも左右交代で排卵するわけではなく、左の卵巣から出た卵子を右側が吸い込むこともあると補足されました。片側が狭窄していても、月1回しかチャンスがないわけではないそうです。
続くステップが人工授精です。排卵日に合わせて精子を洗浄・濃縮し、子宮に直接チューブで送り込む方法で、軽度の男性不妊やEDなどに効果があります。
ただし成功率はタイミングとほぼ同じで、5〜10パーセント程度です。効果があるとわかっている場合を除き、長く繰り返さず次のステップを考えるよう勧められました。
最終手段としての体外受精と、その身体的負担
次のステップが体外受精です。女性の卵子を体外に取り出し、精子とシャーレの中で出会わせて受精させる方法です。
自然妊娠では月に1個だけ排卵されますが、実際は卵巣の中で10個、20個と競い合って成長し、負けた卵子は死んでいきます。あきさんによると、死んでいく卵子も生きていれば受精できる能力を持つことが今ではわかっています。
そこで薬の力で卵子同士を競わせず、すべての卵子を成長させて回収します。女性は決められた時間に薬を飲んだり注射をしたり、ホルモン剤の貼り薬を貼ったりします。
ここでとみーさんが自身の経験を語りました。タイミング療法と採卵、顕微授精を経験し、一番つらかったのが採卵だといいます。
私二十三個取れたの、卵が。だから一個だけ成長するはずの場所で二十三個成長すると、すっごいお腹が重くて、寝返りしても歩いてもお腹痛くて気持ち悪いし、ずっと薬飲んでるし
注射を自分で打たないといけないから、打ってる場所がどんどん硬くなって注射が刺さらなくなってしまって、痛みも出てとかあって。一番つらかった
採卵自体は静脈麻酔で眠る形で行い、帰りは運転できないためパートナーと来るよう言われたそうです。あきさんも、そのときのとみーさんは真っ白な顔だったと振り返ります。
麻酔打たれて寝てて、起き上がっても顔色悪くなるし、トイレに行くだけでフラフラだしみたいな感じだったので、すごく体の負担は大きかったです
あきさんは、パートナーとしては寄り添って助けるくらいしかできないが、それでも今できる最良の策はこれだと認識してほしいと話しました。
一人で頑張ることではないので、パートナーだったり友人だったりに頼ってやることかなと思います
受精から胚盤胞まで、そして病院選びの重要性
薬と注射で育った卵子は、十分な大きさになると採卵手術で取り出されます。所要時間は10分から20分ほどで、卵子の数に応じて麻酔の種類も変わります。
とみーさんの場合、23個の卵子が取れ、そのうち成熟卵が22個、受精したのが19個ほど、最終的に体に戻せる胚盤胞は6個残ったといいます。これは一般的にかなり成績が良い方だそうです。
一方で、同じように苦しい思いをしても卵子が1個も取れない人や、胚盤胞に1個もならない人もいると話されました。
苦しい思いをしたら必ず報われる話でもないというところが、この治療の、自分たちの覚悟が必要なところかなと思います
とみーさんが多くの卵子を取れた背景には、AMHの成績の良さに加え、多嚢胞性卵巣症候群があると説明されました。
受精の方法についても解説されました。精子の数が少なかったり運動率が低かったりする男性不妊の場合には、顕微授精が行われます。
顕微授精では、活きの良い精子を見つけ、細いガラスのニードルで尻尾を押さえて動かなくしてから、卵子の細胞質にそっと置きます。尻尾を止めておかないと精子が卵子の中を壊してしまうため、この工程は重要で、意外と最近見つかったやり方だそうです。
顕微授精の成績は卵子の状態にもよりますが、30パーセント程度と、人工授精よりだいぶ高くなります。
胚盤胞を子宮に戻したあとの確率も、年齢別に紹介されました。年齢が上がると着床の可能性は下がり、流産の可能性は上がるという傾向が示されています。
| 年齢 | 妊娠できる確率 | 生まれてくる確率 |
|---|---|---|
| 30〜34歳 | 40〜45% | 約35% |
| 35〜40歳 | 35〜40% | 約25% |
| 40歳以上 | 20〜25% | 約10% |
これらの数字も、早く取り組んだ方がいいという話の裏付けだとあきさんは話します。
ここでとみーさんが、病院選びの重要性を強調しました。体外受精や顕微授精は高度な技術が必要で、先生の腕次第で苦しい思いをして取った卵子が無駄になることもあるためです。
先生を選ぶ時に、お人柄とか話しやすさとかも大切な項目ではあるんだけど、そもそもの医療技術をちゃんと見て選ばないとお金と時間が無駄になるなって私は思う
治療成績はクリニックのホームページに載っていることも多く、参考になるそうです。また、実際の操作を知る参考として、あきさんは漫画『培養士ミズイロ』{要確認: 培養士ミズイロ}を挙げました。
成績の良い病院の特徴として、タイムラプス培養器の導入が挙げられました。
導入していないクリニックでは、卵割の状態を見るたびにシャーレを外に出して顕微鏡で観察します。体内に近い低酸素で二酸化炭素濃度の高い環境から出すことは、卵にとってさらなるストレスになります。
そのため、なるべく一定の環境に置くことが成功率を上げるうえで重要で、タイムラプス培養器のあるクリニックを選ぶことが勧められました。ただし若い卵子ならストレスに関係なく分裂してくれる面もあるそうです。
まとめ
不妊治療の第一歩は「自分を知ること」だと繰り返し語られました。女性はAMH検査で卵子の在庫数を、男性は精液検査で現状を把握し、カップルで当事者意識を持つことが近道になります。体外受精には身体的負担があり、苦しい思いが必ず報われるとは限らないからこそ、早めの取り組みと病院選び、そしてストレスを溜めない工夫が大切だと締めくくられました。
- 不妊は普通のセックスで1年子供ができない状態と定義され、女性はまずAMH検査で治療のスピード感を判断する
- 不妊の原因は約半分が男性側にあり、精液検査をカップルで受けることが無駄な努力を避ける近道になる
- タイミング療法や人工授精の成功率は5〜10%程度と低く、年齢が上がるほど早めに体外受精を検討したほうがよい
- 体外受精・採卵は身体的負担が大きく、成績も個人差が大きいため、パートナーや周囲に頼りながら取り組む
- 体外受精は高度な技術が必要で、治療成績やタイムラプス培養器の有無など、医療技術を見て病院を選ぶことが重要
