不妊治療を語ろうと思った理由
今回はいつものように人にフォーカスを当てる回ではなく、不妊治療がテーマです。
あきさんととみーさんは実際に夫婦で不妊治療を行っており、その経験をシェアしたいと考えたことがきっかけだと話されています。
デリケートなテーマですが、「もっとこうしたらよかった」と思う点も、「考えておいてよかった」と思う点もあるからこそ、伝える意味があるといいます。
あきさんは特に、子供を授かりたいと考えるカップルのうち、男性に聞いてほしいと話します。
妊娠するのが女性である分、女性の負担が増えたり、女性ばかりが情報を調べてしまうことが多いといいます。
男性は他人事のようなスタンスになりがちで、あきさん自身も含めてそう感じるといいます。だからこそ男性も正しい知識を持つことで、カップル間の妊活コミュニケーションがうまくいくと話されています。
SNSや経験談だけに頼ることの落とし穴
不妊治療について調べようと本屋の棚に行くと、科学的知識に基づいた本と、経験に基づいた本がごちゃまぜに並んでいるといいます。
「私はこれで妊娠しました」というタイプの本や、体を温める、この食事が妊娠にいい、といった内容の本も多いそうです。SNSでも科学的知識より個人の体験談が目立つと話されています。
理系の知識があまりない状態でそういう知識に触れてしまって、そこにすがりついてしまうと、時間を無駄にすることが多いかもしれないと思いました。
とみーさんは、経験に基づいて書かれたものはその人にとっては嘘ではないものの、医療が扱う何万人ものデータと比べると、対一で比べるのはもったいないと話します。
あきさんも、個人の経験はサンプル数が少なく、たまたまうまくいったケースかもしれず、要因は他にもあったのかもしれないと指摘します。
ただし話し手は専門家ではないため、不妊治療の専門医ときちんと相談しながら進めてほしいと繰り返し強調しています。
経験から伝えたい2つのこと
とみーさんも妊活を経て無事に妊娠できましたが、そこに至るまで2年から3年ほどかかったといいます。その経験から2つのことを伝えたいと話します。
1つ目は、妊娠しやすい体作りと実際の治療を並行して行った方がいい、ということです。
避妊をやめて様子を見て、なかなかできないと自然療法や東洋医学に頼り、不妊治療は怖そうだと行くかどうか悩む。いざ行っても検査が続いたりタイミング療法から始まったりする。そうしているうちに2年、3年があっという間に過ぎると話します。
体が子供を産める成熟した体の状態になってからの話でいうと、絶対若い方が妊娠しやすいし、リスクも少ないし、体力もあるので、子供が欲しいって思ったら早く授かれた方が絶対にいいはずなんです。
本当に子供が欲しいのか、お金がかかるな、と悩んで思い詰める前に、まず知識をつけ、費用を知り、気軽に病院に行ってみることが大事だといいます。
2つ目は、病院で言われたことをそのまま鵜呑みにして進めることが必ずしもよいとは限らない、ということです。
医者にもいろいろな考え方があり、スピーディーに進める先生もいれば、患者からの希望を待ってゆっくり進める先生もいます。専門や得意分野も違うため、自分で調べて治療を選ぶ主体的な意識が必要だと話します。
タイミング療法に1年かけるよりも、タイミング療法を飛ばして顕微授精をやった方が、多分成績は良かったはずなんです。
一方で、治療によって女性の体の負担も大きく変わります。なるべく自然な形を望む人はゆっくり進めればよく、とにかく子供が欲しい人は成功率の高い治療を選び、望むゴールから逆算するのがよいとまとめています。
卵子の老化という避けられない現実
あきさんは、時間を無駄にしないことの重要さを具体的なイメージで語ります。
例えば28歳で結婚し、子供が欲しいと考えて避妊をやめても、「できないな」と気づくのに2年ほどかかり、30歳前後になることが多いといいます。
そこから女性だけが周りに聞いたり、産婦人科に行ったり、基礎体温をつけて排卵日を知ろうとしたり、ヨガをしたりして時間を費やす。タイミングを合わせても難しく、病院でタイミング療法を始める。気づくと2、3年が経ち、33歳、34歳になっているかもしれないと話します。
いよいよ体外受精をと検査すると、卵子が老化していて、卵子が取れない、あるいは受精卵にならない、ということが多いといいます。これは個人差はあるものの、年齢の影響が大きいと話されています。
もし結婚したての29歳のときに体外受精へ進んでいれば、若い卵子が取れており、成功確率は全然違ってくるといいます。
子供が欲しいなとぼんやり思ってるっていうところから、本当に本当に本当に欲しいという風になるまでって時間がかかるかもしれないんですけれども、なるべく成功率の高い治療をなるべく早く始めるのはすごく重要かなと思います。
不妊は女性だけの問題ではない
あきさんは、不妊症は女性だけの問題ではないと認識してほしいと話します。
不妊の原因の約半数、48パーセントは男性側にあることがわかっているといいます。女性だけが病院に通い、勉強を頑張っても、男性側に原因があれば原因は出てこず、時間を無駄にすることになると指摘します。
とみーさんも、子供を望むのは基本的に夫婦やカップルであり、どちらかだけに偏るのがそもそもおかしいと話します。
お腹痛めないからね、他人事になるんだけど、意識して当事者意識を身につけてほしいですね。
男性は子供ができなくてもいいと心の中で思っている人も多いのではないか、とあきさんは正直な思いを口にします。とみーさんは、子供が欲しいと言いながら他人事な人もいると、いろいろなケースがあると応じます。
意識をすり合わせて同じラインに立つのは難しいものの、解決策は特になく、しっかり話し合うしかないと話されています。
後悔しないためのおすすめ書籍
あきさんは、今回参考にした本を紹介します。まず1冊目は『不妊治療を考えたら読む本』です。
講談社ブルーバックスから出ており、著者はアサダクリニックを運営するアサダヨシマサ先生と、川井蘭さんの共著です。最短距離で後悔のない治療を科学的に教えてくれる本だといいます。
この本は、根拠のない妊活情報を排し、エビデンスに基づいた知識を解説してくれると話します。卵子の老化にどう向き合うか、タイミング療法や人工授精に時間をかけすぎてはいけない理由などを扱っているそうです。難しい部分もありますが、一度目を通すには良い本だといいます。
2冊目は『名医がやさしく教える不妊治療のすべて』です。梅ヶ丘産婦人科の院長、辰巳健一先生が書かれています。
見開きで一つのテーマを扱い、図版が多く、文系の方でも分かりやすいといいます。巻末が辞書のようになっており、原発性不妊やチョコレートのう法など、聞き慣れない単語を索引から調べられるのが良い点だと話します。
さらに、あきさんは男性の立場で参考になった漫画として、Kindleで無料で読める『原因不明不妊だったので不妊治療を始めます』を挙げます。ききさんが自身の体験を描いた作品です。
タイミング療法から人工授精、体外受精へとステップアップした過程や、旦那さんとのやりとり、どこで不安があったかが描かれているといいます。人工授精の日に旦那が飲み会で酔って帰ってきた、といった女性の心の動きが具体的で、男性としてはグサッとくると話します。
反省します。とっても反省する。
とみーさんは、本を選ぶときの注意点も加えます。知識をつける目的なら、2020年以降、できれば3年以内の新しい出版年度のものが望ましいといいます。
1990年代の本では、保険診療に対応していなかったり、研究内容や技術レベルが今と違ったりするためです。論文を引用し、専門用語をきちんと解説しているものを選ぶと失敗しづらいと話します。
科学的根拠に基づき最短距離の治療を解説。ブルーバックス
図版が多く、巻末が用語辞書になっている
女性の心の動きが描かれた漫画。特に男性向け
不妊治療大国・日本と妊娠のメカニズム
2022年度から不妊治療が保険適用になり、さまざまな療法が保険で対応できるようになったといいます。紹介した2冊は保険の内容や費用の目安も書かれており、必要な金額の見当がつくと話します。
日本は体外受精に踏み切るまでに時間がかかるケースが多い一方で、不妊治療大国でもあるといいます。5組に1組が不妊治療に取り組んでおり、生まれてくる子供の13〜14人に1人が体外受精で生まれていると話されています。
30人のクラスなら2、3人は体外受精で生まれている割合になるといいます。背景には女性の晩婚化があり、高度経済成長期は25、6歳での初産が普通だったのに対し、今は初産が30〜31歳、男性は32〜33歳ほどになっているそうです。
2021年の国別調査では、体外受精の実施件数は日本が世界断トツの1位で40万件以上、2位のアメリカ20万件の倍以上でした。人口が約3倍のアメリカより件数が多いといいます。
ただし成功率で見ると、アメリカは20万件で6万件の子供が生まれているのに対し、日本は40万件で5万件にとどまります。これは技術が低いのではなく、治療開始年齢が高いためだと話されています。
無為自然を尊ぶ考え方があり、そのうち自然に妊娠するだろうと治療開始が遅れるのではないかといいます。一人目は自然にできたのに二人目ができない二人目不妊も晩婚化が関係しており、二人目ができないと思ったらすぐに検査や受診を勧めています。
ここからあきさんは、妊娠のメカニズムを解説します。まず女性の下腹部の真ん中あたりに逆三角形の子宮があり、その左右の角から卵管が伸びています。卵管の先はイソギンチャクのような形をしています。
子宮の両側には楕円形の卵巣があり、ここで卵子が作られます。ちなみに子宮が体の中心に一つだけあるのは人の特徴で、多産の他の哺乳類はVの字に2つあるそうです。
卵巣の中には眠っている卵子がたくさんあります。目覚めた卵子は6か月かけて成長し、ほとんどは成長できずに消え、毎月1個だけが卵巣の壁を破って飛び出します。
この卵子は、女性が母親のお腹の中の胎児のときにすでに作られ、蓄えられたものです。新たに作られることはなく、生まれた瞬間から減り続けると話されています。
飛び出した卵子は卵管の先に吸われて卵管の中に入り、子宮へ移動します。その途中で精子がいれば受精します。
精子はセックスを経て子宮を泳ぎ、卵管の奥まで進みます。卵子は飛び出してからせいぜい1日ほどしか受精能力がないといいます。
長らく排卵日にセックスするのがよいと信じられてきましたが、実際は排卵の2日前ごろが妊娠効率が高いそうです。精子が卵管の先まで到達するのに2日ほどかかるため、卵子が来たときに精子が待ち構えているのが最も効率がよいといいます。
また、3日ほど溜めてから、という説も古いものだと話します。精子は常に新しく作られ続けており、溜まるとストレスで活性酸素が出て他の精子を傷つけることもあるそうです。
そのため、排卵の3、4日前から排卵日まで毎日セックスし、新鮮な精子を供給し続けるのがよいだろうと話されています。
受精では、卵子を透明帯という膜が覆っており、精子は頭の部分から酵素を出してこの膜を溶かします。物理的に押し破るのではなく、複数の精子が共同作業のように溶かしていくといいます。
1匹が膜を突破して入ると、卵子は素早くバリアを張り、他の精子の侵入を阻止します。薬でこのバリアを止めると精子が無限に入り、卵子は死んでしまうそうです。
入った精子は頭だけが入り込み、格納していた染色体を放出して卵子の染色体と合体します。これで受精が成立し、細胞分裂が始まります。
受精卵は自分で泳げず、卵管に生えた繊毛の動きで運ばれます。クラミジアなどで繊毛の動きが悪くなると卵子を送れず、不妊の原因になることもあるといいます。
5、6日かけて分裂しながら移動し、100個ほどの細胞になった受精卵は胚盤胞になります。このとき硬い透明帯を脱ぎ捨てることをハッチングと呼びます。卵子が老化するとこの透明帯も硬くなり、うまくハッチングできず不妊の原因になると考えられているそうです。
ハッチングした卵は、ふかふかに厚くなった子宮内膜に着床し、妊娠が成立します。受精卵が来なければ子宮内膜が剥がれ落ち、これが毎月の月経になると説明されています。
妊娠はこのように複雑な工程を経て成立するため、どこかでうまくいかないと妊娠できません。原因がわからなくても体外受精で確率が上がることが多いといいます。
そのため、原因探しに費用や時間をかけるより、効果的な検査だけを行い、素早く確率の高い方法へ進むのがよいと、あきさんは重ねて勧めています。
卵子は半年かけて育つ一方、育ちきらず消えるものがほとんどで、女性は毎日30個ほどの卵子を失うと言われます。若ければ妊娠しやすいのは卵子の数が多いことも大きいといいます。
とみーさんは、数だけでなく質も関係し、透明帯が柔らかいなど質のよさも影響すると補います。
ただし「若ければ若いほどよい」は成熟した体が前提です。初潮直後の10歳、12歳ごろはまだ体が整っておらず妊娠しづらかったり、エラーが起きた形になったりするため、体が成熟したうえでの話だと注意を促しています。
一方、男性の精子はずっと作られ続けます。年を取ると作る能力は下がるものの維持され、高齢になっても子供を作る能力が比較的保たれるといいます。豊臣秀吉が高齢で子をもうけた例にも触れられています。
女性にはどうしても産めない年齢があり、この点は男女不平等ですが、今のところどうにもできない現実を踏まえて不妊治療に挑んでほしいと締めくくられています。
まとめ
不妊治療では、経験談だけに頼らず科学的な知識を持ち、時間を無駄にしないことが重要だと語られた回でした。卵子の老化という現実を踏まえ、夫婦で当事者意識を持って主体的に治療を選ぶことが、後悔しない最短距離につながると話されています。
- 個人の体験談だけでなく、エビデンスに基づいた知識をつけてから選択する
- 卵子は減り続け老化するため、成功率の高い治療を早く始めることが大切
- 不妊の原因の約半数は男性側にあり、夫婦で当事者意識を持って取り組む
- 本は2020年以降の新しく、論文を引用したものを選ぶと失敗しづらい
- 原因探しに時間をかけすぎず、効果的な検査で素早く進めることが勧められる
