「75ヶ月ぶりマイナス」の見出しは何を意味するのか
9月11日、不動産業界のニュースサイトに「中古マンションの平米単価が75ヶ月ぶりにマイナス」という見出しが出ました。石井優香さんはこのニュースを解説するnoteを公開し、その内容を番組でも3日間かけて話すことにしました。
75ヶ月は6年3ヶ月にあたります。石井さん自身が家を買ったのもちょうどその頃で、5歳の子どもが生まれる前から続いていた上昇が止まったと考えると、かなり長い期間だと振り返っています。
最近ね、家探しをされている方から、なんかちょっと最近って下がってきてますよねとか、なんかもうちょっと待った方がいいですか?とか(聞かれるんです)。
家探し中の人や友人から、価格はいつ下がるのか、待つべきかと聞かれる機会が増えているそうです。石井さんも最初は見出しに「おっ」と反応したものの、中身を見ていくと、この見出しはミスリードになりそうだと感じたといいます。
noteはSNSやLINEで発信し、初めての人からも「読んで良かった」とDMが届いたそうです。一方で、忙しい中で長い文章を読むのは大変な人もいると考え、音声で届けることにしたと話しています。
成約価格は下がっても、売り出し価格は3割上がっている
ニュースのもとになったのは、不動産流通推進センター ── 不動産の取引情報などを扱う公益財団法人。不動産流通に関する調査や統計の公表、資格試験の実施などを行っていますがまとめた8月の取引データです。全国の中古マンションの成約単価は1平米あたり62万5600円で、前年同月比3.46%のマイナスでした。
全国の成約件数は6006件で、約8%減り、6ヶ月連続の減少です。首都圏に絞っても、成約単価は4ヶ月連続で下落し、成約件数は5ヶ月連続で減少、売れ残りは6ヶ月連続で増えています。東京23区の成約単価も6年4ヶ月ぶりにマイナスになりました。
ここまでは「下がった、減った、余った」と、見出しのとおりの動きです。ただし石井さんは、1つだけ違う動きをしている数字があると指摘します。それが、売りに出ている物件の値段です。
売主が「この金額で売りたい」と出す値段。こちらは約3割上がっている
買主が実際に購入した値段。ニュースで「下がった」とされたのはこちら
三割って結構ですよね。で、つまりね、売主さんは結構強気の値段をつけたまま、(物件を)出していて。
売主は強気の値付けを続けていて、下がっているのは買う人が出す値段のほうです。石井さんは、成約価格が下がったことと、売主が値段を下げたことは違う話だと整理しています。
首都圏の平均を押し下げたのは23区の割合の変化
ニュースの「売れた値段が下がった」は、首都圏で売れた物件すべての平均が下がったという数字です。石井さんは、ここが分かりにくいところだと前置きします。
| 項目 | 東京23区 | 23区以外 |
|---|---|---|
| 1平米あたりの成約単価 | 約133万円 | 平均約50万円 |
| 成約件数の変化 | 前年より約2割減 | ほぼ変わらない |
| 成約単価の前年比 | マイナス0.3%(ほぼ横ばい) | プラス4.8% |
首都圏の平均は、23区とそれ以外という、2.5倍から3倍近く値段が違うものを混ぜて出しています。この1年で23区の成約件数が約2割減った結果、成約全体に占める23区の割合は45%から40%に下がりました。
お財布に一万円札と千円札が入っていて、一万円札の枚数だけ減ったとします。
(お札の)平均は下がると思うんですけど、でもその取り出した一万円の価格っていうのって別に下がるわけじゃないですよね。
石井さんのお財布のたとえは、首都圏の平均単価で起きていることそのものです。23区の割合を前年と同じにして計算し直すと、首都圏の平均は逆にプラス1.2%になるといいます。
23区の成約が減る
23区で売れた件数が前年より約2割減り、郊外はほぼ横ばい
高い23区の割合が下がる
成約全体に占める23区の割合が45%から40%に
平均が下がる
個々の値段はほぼ動かなくても、混ぜた平均だけが下がる
見出しだけで「待つ」と決めるとどうなるのか
石井さんは、この違いが家探しをする人にとって大きいと考えています。値段そのものが安くなっているなら、待てば安く買える可能性があります。しかし23区で買う人が減っただけなら、値段はまだ動いていないことになります。
見出しだけ見てね、待とうっていう風に決めると、前提がね、ずれたまま判断することになっちゃうので。
ニュースサイトは、見出しでどれだけ見てもらえるか、つまりPV数 ── ページビュー数。Webページが閲覧された回数を表す指標で、多いほど広告収入などにつながりやすくなりますを競っていて、それが広告収入にもつながります。だからこそ強い見出しが出やすく、数字の中身を確かめることが大事だと石井さんは話します。
ニュースを見て購入を待とうと考えていた人や、価格が高すぎるので2〜3年は賃貸で様子を見ようと思っていた人に向けて、石井さんはこの話を確認したうえで判断を見直してほしいと呼びかけます。個別の状況については、LINEや面談で相談を受けているそうです。
21日連続の雨と、雨を楽しむ子どもたち
後半は雑談です。東京は21日連続の雨で、9月上旬の日照時間が平均の3割というニュースも出ていたといいます。石井さんは、子ども2人を自転車に乗せてカッパと雨除けカバーで保育園のお迎えに行くのは大人には重労働だと話します。
その一方で、子どもたちは新しい傘を買ってもらい、カッパを着て雨を楽しんでいるそうです。近所に住む保育園のお子さんの家庭では、自転車がパンクして夕方にタクシーを呼んでいましたが、なかなか捕まらず親は困っていました。
子供はね、もう「これからタクシーに乗るんだ」みたいな、すっごいね、楽しそうにしていて。
石井さんは、その場その場を全力で楽しむ子どもの力に感心し、雨を嫌がっているのは大人だけかもしれないと話します。最後は、シルバーウィークに片付けや断捨離を進めたいという近況で締めくくられました。
まとめ
首都圏の中古マンション成約単価は平均で見ると下がっていますが、東京23区の値段はほぼ横ばいです。下がって見えるのは23区で買う人が減って平均の中身が変わったためで、見出しだけで「待つ」と決めるのは前提がずれた判断になりかねません。
- 首都圏の成約単価の下落は、物件が安くなったのではなく、高い23区の成約割合が45%から40%に下がったことによる
- 23区の成約単価はマイナス0.3%でほぼ横ばい、23区以外はプラス4.8%で、割合を揃えると首都圏平均はプラス1.2%
- 成約価格が下がる一方、売り出し価格は約3割上がっていて、売主は強気の値付けを続けている
- ニュースは強い見出しになりやすいため、家探しの判断では数字の中身を確かめることが大切





