売れ残りが増えたのは、どの価格帯の物件か
9月11日、中古マンションの平米単価が75ヶ月ぶりにマイナスになったというニュースが出ました。石井さんはこのニュースを3回のシリーズで取り上げていて、この回はその2本目です。
シリーズ1本目で石井さんが話したのは、下がったのは平均であって、東京23区の値段はほぼ横ばいだという点です。23区で家を買える人や買う人が減ったことで、数字の取り方として平均が下がっただけだと説明しています。
2本目のテーマは「売れ残りが増えている」という話の中身です。石井さんは、売れ残りの増加は本当だとしたうえで、どんな物件が残っていて、予算によって市場をどう見るとよいかを掘り下げます。
まず値段で分けると、売れ残りが増えているのは7000万円から上の物件です。特に1億円を超える物件は、売れ残りが1年で8割ほど増えているといいます。
私も感覚的にもすごい思ってるんですけど、一億円以上の物件はやっぱり動きがすごく遅いので、焦って見に行ってみたいなことにもなることが結構少ないなという印象ではあります。
1億円以上の物件の動きの遅さは、現場で物件を案内している石井さんの体感とも一致しています。
23区は残り、郊外は売れる。都心3区で何が起きている?
次に場所で分けると、東京23区はどこも売れ残りが増えている一方で、郊外はどこも減っています。郊外は1年前よりも売れている状態です。
石井さんはその理由を、23区の物件価格が高すぎて買えない人が、郊外で買っているためだと説明します。23区では買う人が立ち止まり、この物件でいいのかを考えているため、物件が残っているという見立てです。
どこも売れ残りが増加。買い手が立ち止まって検討している
どこも売れ残りが減少。23区で買えない人が流れ、1年前より売れている
23区の売れ残り増加は、裏を返せば、23区で探している人にとって選べる物件が増えたということでもあります。去年は内見したその日に申し込まないと物件がなくなるのが普通で、買い付けが2件、3件と重なることも多かったといいます。
(今は)私もなんかこう、一日検討いただいて、翌日に回答いただいてみたいなところでも大丈夫かなというところではあったりします。
ただし石井さんは、これは物件によりけりで、すべてがそうではないと念を押しています。あくまで体感としての雰囲気の変化です。
23区の中で特に売れ残りが増えているのは、千代田区・中央区・港区の都心3区です。都心3区の売れ残りは1年で60%弱増えていて、城西や城東などのエリアと比べると2倍から3倍近い増え方だといいます。都心3区は1億円以上の物件ばかりになってきているため、動きが大きく落ちていると石井さんは見ています。
一方で石井さんは、売れ残りが増えたからといって値段が下がるかどうかは、今の時点ではわからないと注意を促します。残っているのは、売主さんが希望価格を下げずに置いている物件だからです。
下げれば売れるし、下げなければ残るしみたいなところで。今のところね、多くの売主さんが下げてないっていう状況なんですよ。
築31年超が4割。「古ければ安い」はなぜ崩れた?
石井さんが次に取り上げるのは、あまり知られていない築年数の数字です。首都圏で売れた中古マンションのうち、築31年を超える物件の割合は、この3年で10ポイントほど上がっています。
石井さんはこれまで勉強会で、築30年以上の物件を買っている人は3割ほどいると話してきました。ところが最新の2026年4月から6月の成約を見ると、築31年超の物件を買った人の割合は42%に達しています。
勉強会で伝えてきた水準は約3割
2026年4〜6月の成約では42%
この変化について石井さんは、みんなの趣味が築古物件になったわけではないと話します。新しい物件が高すぎて買えないため、買う人が古い物件へ移っているのが理由です。
たとえば6000万円から8000万円ほどの予算だと、今の23区では築25年以内の物件にはなかなか手が届きません。住みたい場所を優先するなら、古い物件を選ばざるを得ないというのが今の状況です。
好みが変わったっていうよりは、もうそこしか残ってないからそこを選んでますみたいな状況かなと思います。
買い手が築古物件に集まった結果、築古物件の値段も上がっています。不動産は需要と供給で価格が決まるため、古い物件だから安く買えるという図式が成り立ちにくくなっているのです。
23区で売れた価格は、築5年以内から築31年超まで、すべての築年帯で去年よりプラスになっています。築31年超に限ると11%のプラスで、伸び率は新しい物件より古い物件のほうが大きいといいます。
新しくても古くても割安な選択肢はあまりない今、石井さんは物件を選ぶ基準を値段以外にも置く必要があると話しています。
予算7000万円が分かれ目。交渉が効く層と効かない層
ここまでを踏まえて、石井さんは今探すとどうなるかは予算によって変わると整理します。まず7000万円以上で探している人にとっては、今の状況は追い風だといいます。
7000万円以上の価格帯では売れ残りが積み上がり、買う人が減った結果、売主さんの希望価格と実際に売れる値段の差が広がっています。特に都心3区では、その差が5000万円弱あるといいます。
東京鑑定東京鑑定が出している数字では、23区で売り出し途中に値下げをした売主さんの割合が、1年前の37%から今は47%に増えています。最初は高値で出して、状況を見ながら下げていく売り方が多いと石井さんは見ています。
逆に言うと、買う側からすると、まあちょっとこの値段は難しいよねっていうのが結構言いやすくなっているんですよ。
ただし石井さんによると、価格の交渉は向こうからやってくるものではありません。気に入った物件があれば、ローンの事前審査を通し、買付証明を書いたうえで「この金額ならどうか」と打診して、初めて結果がわかります。
石井さんは、下がるまで待つのではなく、気に入った物件なら相場も踏まえてこの金額でどうかを相談しに行くことが大事だと強調します。石井さんと一緒に探す場合は、この交渉を石井さんが担う部分だといいます。
一方、7000万円以下の価格帯は、正直なところ値段がほとんど動いていません。売れ残りは9%増えているものの、売れるスピードが去年から大きく変わったわけではないといいます。
7000万円以下の物件が動き続けている理由は、上の価格帯に手が届かなくなった人が降りてきているためです。いい物件が出ればすぐに競争になるので、売れ残りの増加と値段が安くなることは分けて考えるべきだと石井さんは話しています。
売れ残りが積み上がり、希望価格と成約価格の差が拡大。価格交渉が効きやすい
値段はほぼ横ばい。上の層が降りてきて、いい物件は競争になる
売れ残り増加の中身を整理すると? シリーズ最終回への予告
石井さんはこの回のまとめとして、売れ残りが増えているのは7000万円超の物件と23区の物件であり、特に都心3区だと振り返ります。23区全体でも売れ残りは増えています。
築年数については、古い物件のほうが安いという考え方が成り立ちにくくなり、新しくても古くても価格が上がっていると整理しています。
7000万円以上の物件については交渉が効くことがあるため、周辺の相場や査定をきちんと確認し、納得できない金額なら交渉したうえで買うことが大事だと石井さんは話します。
シリーズ3本目では、今は買うのを待ったほうがいいのかどうかを取り上げる予定です。石井さんはこのテーマを主にnoteで書いていて、グラフ入りのnoteは最近書いた中で一番よく読まれているといいます。
なんでまあやっぱりみんな結構気にしてるよなという、ところかなと思うので、三日目もまた聞きに来ていただけたらとても嬉しいです。
まとめ
中古マンションの「売れ残り増加」は本当ですが、その中心は7000万円以上、特に1億円超の物件と東京23区、なかでも都心3区です。築古物件も買い手が集まって値上がりしていて、予算によって交渉の余地が大きく変わるのが今の市場だと石井さんは解説しています。
- 売れ残りが増えたのは7000万円以上の物件と23区で、郊外はむしろ1年前より売れている
- 売れ残りは売主が価格を下げずに置いている物件で、値下がりにつながるかはまだわからない
- 築31年超を買う人は42%に増え、築古物件も値上がりして「古ければ安い」は成り立ちにくい
- 7000万円以上なら相場を踏まえた価格交渉が効きやすく、待つより相談しに行くことが大事
- 7000万円以下は値段がほぼ動かず、いい物件は今も競争になる





