ファッションを避けないで突っ込む、リベンジ企画
今回は保呂田さんが個人的な動機で持ち込んだ企画です。前回中島さんと初めて収録した際にファッションの話に触れ、あまりに知らないと感じたことがきっかけでした。
あまりにファッション知らないなっていう、まあ自戒も込めて、もっと勉強したいなっていう気持ちがあったんで
保呂田さんは、わからないから離れるのではなく、あえて踏み込む姿勢で臨みます。間違いがあれば指摘してほしいと、リスナーへの呼びかけも忘れません。
ここから離れるんじゃなく、もっと挑戦したいなっていう気持ちがあるんで、お付き合いくださいっていう。
今回取り上げるのは、ファッションの中でも昔からあるクラシックなブランドです。具体的にはエルメスやルイヴィトンに言及しながら話が進んでいきます。
エルメスは「バッグ屋」じゃない、元々は何屋だったのか
保呂田さんはまず、エルメスやルイヴィトンが元々何を作っていた会社なのかを問いかけます。片山さんはエルメスを「バッグ工房」と答えます。
実際のエルメスは、馬車や馬に使う道具を作る職人が集まって創業したブランドです。ロゴにも馬車のマークが使われています。
鞍とかハーネスとか作る職人が集まって、あの、創業したっていう。
話題は代表作のバーキンに移ります。保呂田さんによれば、中古市場でも200万円台後半の値がつき、シリーズによってはさらに高いものもあるといいます。
なんでそんな値段になっちゃうの?っていうのも深掘っていきたいんです。
高いブランドは、最初から高いブランドだった
バーキンの値段が高い理由を探る前に、そもそもエルメスの成り立ちがヒントになります。馬具を扱っていたということは、馬を持つ上流階級を最初から顧客にしていたことになります。
つまり、顧客層がお金持ちだったから、そのお客が買うカバンは一般庶民の価格ではなくなる、という構図です。
高いブランドっていうのは一番最初からもうじゃあ高いブランドだったっていうことになっちゃうんですね。
ルイヴィトンも同じく、旅行用のトランクの職人から始まったブランドです。片山さんは「バッグ屋さん」と答え、その出自が話題になります。
モノグラムは、なぜ偽物対策として生まれたのか
ルイヴィトンのモノグラムは、ブランディングの観点では偽物対策として有名です。ただ、なぜ偽物対策が必要だったのか、という問いが立ちます。
答えはシンプルで、コピー商品が出回るほど人気だったからです。だからこそ、これを全部つけているのが本物だ、というモノグラムを早くから採用していました。
そのモノグラムをつけた大量の偽物が市場に出回っているっていうのは、ね、さっきとんちが聞いてるって。
片山さんは、アメリカのチャイナタウンでヴィトンやロレックスが売られている光景を挙げ、皮肉な状況だと話します。しかも今は、粗悪品とも言い切れないコピーが出回っていることも問題だといいます。
泥棒がクローゼットに一直線、バッグが「現金化」できる理由
なぜ高いお金を出してハイブランドを求めるのか。保呂田さんは、ビバリーヒルズの大豪邸に泊まった体験を持ち出します。クローゼットは高級バッグでいっぱいでした。
高級バッグ、高級バッグ一つ飛ばして高級バッグ、めちゃくちゃ高級バッグ。
保呂田さんが泥棒の心配を尋ねると、その家は1年前に泥棒に入られて引っ越してきたばかりでした。しかも泥棒は、迷わずクローゼットへ一直線に入っていたといいます。
だからお金持ちの家に高級なバッグがあるってことを。で、それらは現金化できるってことを知ってるんです、泥棒は。
ここで保呂田さんは、お金持ちがあえて高級バッグを買う理由を明かします。買った金額と同じ金額で売れるからだ、という答えです。
一般庶民とは違う動機、つまり資産価値として買っている、というわけです。値崩れしないブランドだからこそ、お金持ちは高級品を選びます。
一周回って「お金持ちだから」、仕掛けと成り行きの違い
保呂田さんの結論は、高級品をお金持ちが買うのは、お金持ちだからだ、という一周回った答えでした。真面目に聞いていた片山さんはツッコミを入れます。
一周回ってるや。
保呂田さんは、この体験から、ブランディングには2種類あると気づいたと語ります。意図的に仕掛けるものと、そうならざるを得ずになってしまったものです。
ブランディングって、あの、仕掛けるものと、そうならざるを得ないでなってしまったものがあるなって思ったんです。
エルメスやルイヴィトンは、顧客層がお金持ちだったから、なるべくしてハイブランドになった側だと整理されます。
エルメスやルイヴィトンのように、元々の顧客が上流階級で、成り行きでハイブランドになった
お金持ちを顧客対象と定めることで、後からブランド力を上げていった
苦手なバレンシアガ、ブランドは「成立させれば勝ち」なのか
保呂田さんは、実は苦手なブランドがあると打ち明けます。バレンシアガです。良さが全くわからず、自分がマジックで「バレンシアガ」と書いたらそれっぽくなるのでは、とまで言います。
マジックでバレンシアガって僕書いてあげたら、多分それバレンシアガになるんちゃう?って思うんですよ。
中島さんが、それはエルメスやルイヴィトンの話とどう違うのかと問い返します。保呂田さんは、お金持ち相手にブランドを売れば成立してしまうモデルに見える、と説明します。
顧客の対象者を金持ちっていう風に定めることによって、自社のブランド力を上げたモデルのように感じたんです。
中島さんは、誰がデザインし、どんな人が丁寧に作るのかに価値を見出す買い方もある、とファッションの別の側面を示します。
作り手と使い手はズレている、「誰に売るか」から違う
保呂田さんは、作り手と買い手・使い手では意識が違う、という視点を持ち出します。全ての人がファッション専門誌を読むわけではないからです。
全ての人がWWDのファッションニュースを読まないわけじゃないですか。
音楽好きの大多数が専門雑誌を読み込まないのと同じで、ファッションもそうではないか、というたとえです。だからこそ、ハイブランドが誰に向けて売っているのか、そこからそもそも違うと保呂田さんは考えます。
シャネルは服じゃなく「女性を自由にする思想」を売っている
片山さんは、シャネルはエルメスやルイヴィトンとは違うブランド形成の仕方だと指摘します。かつて女性の服はコルセットで締めつけるのが当たり前でした。
シャネルはそれをひっくり返し、男性服の素材や構造を女性服に取り入れ、女性を動きやすくする思想を服で体現していきました。
女性を動きやすくするっていう思想とか考え方を服で体現していきましたよね。
だから、女性たちは服そのものではなく、ココシャネルの考え方に共感し、その思想を自分にインストールするという文脈で買っている、というのが片山さんの解釈です。
中島さんは、ファッションショーの役割も補足します。ショーは、これからブランドがどの方向へ向かうのかという世界観を打ち出す場だといいます。
そういうコンセプトや考え方、世界観を知らしめるためのショーになってるんじゃないかな
ファッションは生き様の体現、高い安いは関係ない
中島さんは、ファッションが好きな人にとって、着るものは自分の生き様を体現するものだと語ります。シャネルのコレクションを身につけることは、自分の人生に思想を取り入れる行為でもあります。
ファッションって一つ自分の生き様を体現するものだと思っていて。
その上で、中島さんは高い安いは関係ないタイプだと話します。好きなブランドとコラボしたユニクロの服を買うこともあれば、応援したい大阪の小さな企業の服を買うこともあります。
値段じゃなく「Why」を買っている、ゴールデンサークル理論
片山さんは、高い安いの話ではなく、どういう理由で買うかに共感しているという文脈が本質だとまとめます。ドラゴンの話のように、値段を見ずに買っているのに近いといいます。
片山さん自身も、万博のフランス館でセントジェームスのポロシャツを買った際、日本なら2万円以下のところ3万円超だったのに、万博の旗がついていたので買ったと明かします。
うってなったけど買ったよ。
保呂田さんも、代官山でマトリックスの衣装デザイナーが作ったニットだと言われて購入したところ、6000円ほどのつもりが6万円の請求が来ていた、というエピソードを披露します。
翌月カード見たら6000円ぐらいだと思って買ったのに6万円の請求が来てて。
片山さんは、みんな値段でハイブランドを捉えているが、実際は値段ではなくWhyの部分を買っている、と話します。保呂田さんが買ったのも、ニットではなく「デザイナーが作ったもの」でした。
この考え方の背景として、片山さんはサイモン・シネックのゴールデンサークル理論を挙げます。人は、あなたが何をするかではなく、なぜするかを買うという考え方です。
理念や信念のないものづくりでは、いくらブランディングをしても売れ続けない、と中島さんは受けます。片山さんは、機能だけで見られると品質や価格でしか比べられなくなる、と補足します。
カメラには50万100万出す、お金を払う分野は人それぞれ
中島さんは、興味のない人からするとファッションの話はどうでもよく感じるのでは、と率直に振り返ります。価値観の違いで身につけるものも買うものも変わるのが面白いといいます。
保呂田さん自身は、洋服は表現の対象ではないものの、カメラには50万、100万のものを普通に買うと話します。ブランドにこだわり、吟味し、調べて買うそうです。
自分にとって表現の中に洋服がただなかったっていうだけで。
つまり、お金を出す分野がファッションかカメラか食べ物かは人によって違うだけで、保呂田さんもブランディングに「やられる」側だといいます。だからこそ、しっかり考えられるとも語ります。
片山さんは次に扱いたいテーマとして高級時計を挙げ、今の時代になぜ何千万もの機械式時計を買うのか、というテーマに触れて締めくくります。
次回はアート、ディスっていたバレンシアガを好きになった話
最後に、保呂田さんは今回バレンシアガの話をうまく話せなかったと認めます。本当に言いたかったのはアートの話だったといいます。
いろいろ調べるうちに、嫌いだったバレンシアガを少し好きになってしまったそうです。その理由は次回のアートの回で語られます。
バレンシアガのこと嫌いだったのにちょっと好きになっちゃったのはそういうところで。
まとめ
ハイブランドの高さは、単なる値段の話ではありません。顧客が最初からお金持ちだったという成り行きや、資産価値、そして「なぜ作るのか」という思想への共感が、価格の裏側にあります。人は「何を」ではなく「なぜ」を買っている、という視点で見ると、ファッションの見え方が変わってきます。
- エルメスやルイヴィトンは、元々の顧客が上流階級だったため、なるべくしてハイブランドになった
- お金持ちが高級バッグを買うのは、買った金額に近い額で売れる資産価値があるから
- シャネルは服ではなく、女性を自由にする思想を体現し、その思想への共感で売っている
- 人は「何を」ではなく「なぜ(Why)」を買う、というゴールデンサークル理論が通底する
- お金を払う分野は人それぞれで、ブランディングはあらゆる業界に可能性がある





