薬局のホームページを断った、私の最初の仕事
これは私が本当にこの仕事を始めた頃、1996年か1997年ぐらいの話です。
縁があって薬局から「ホームページを作ってくれ」と言われたんですけど、私、断ったんですよ。
仕事がいらないという意味じゃなくて、「あなたにはホームページはいりません」と言ったんですね。
当時、薬局がホームページを持ったところで、できることって場所を伝えることぐらいしかないんです。
すごくいいホームページでも、電車に乗って行かなきゃいけない場所だったら、わざわざ行かないですよね。
結局は駅前のドラッグストアとか、通学路の途中にある薬局に行く。だったらホームページの出番って、そんなにないんじゃないかと思ったんです。
そのお店とはけっこう長いお付き合いになって、実際にサイトを作ったのは2〜3年後でした。
最初にやったのは、駅前でビラを撒くことだったんですよ。クーポン付きのビラを配ったら、その日の夜には20名ぐらいお客さんが来たらしくて。だったらそっちでいいじゃん、って思ったんですよね。
「必要十分」を超えたリッチさは、誰のためか
この仕事には、そもそもインターネットに向いている商売と向いていない商売があると思うんです。
もちろん今は「新宿区 薬局」みたいに探してもらう時代なので、最低限ペラ1ぐらいはあった方がいいとは思います。
でも私たちが作らなきゃいけないのは、クライアントの先にいるエンドユーザーにとって必要な情報が、ちゃんとそこに書かれているかどうか、なんですよね。
逆に言えば、その必要な情報が満たされているなら、すごくリッチなサイトを作る必要は全くないと思っているんです。
マッサージのお店なら、メニューがあって、店舗の写真があって、信頼感のためにスタッフや院長先生の写真がある。それ以上の情報って、ホームページじゃなくてもいいんじゃないかと。
SNSでもいいし、Instagramでも、YouTubeでも全然いいわけですよ。
じゃあなぜ「これぐらいの情報はあった方がいい」と言いたくなるのか。それは、たくさん作ることで収益を得るから、という理由がどこかにあると思うんです、絶対に。
それでも「ノー」と言えない気持ちも、よくわかる
とはいえですね、お客さんが「30ページ作ってほしい」と言っていて、予算もあって、作ってくれと言われた時に、「20ページでいいですよ」とノーを言うのは、実際なかなか難しいんですよ。
私は今、会社の代表という立場なので、断っても従業員の給料が払えるなら、自己責任で断るという選択肢はいくらでも取れます。
でも部の予算目標を抱えたサラリーマンの方が、「本当に必要なだけを必要十分で提供しましょう」と言えるかというと、なかなか難しい。この気持ちはすごくよくわかります。
それでも、そこで真摯に対応して信頼していただくことが、より長いお付き合いにつながるんじゃないかと私は思っているんです。
ホームページの予算を削って、その分をXやFacebook広告、Instagramのショート動画、TikTok、YouTubeに回しましょう、という提案があってもいい。
いろんなチャネルの中で、お客様とエンドユーザーの関係づくりに情報提供で寄与できるなら、ディレクターとしては一番楽しいですからね。
ホームページを作ること自体には、もう興味がない
正直に言うと、私はもうホームページを作ることそのものには、あまり興味がないかなという気がしています。
正しく言い直すと、他のチャネルでもできることが増えたので、どれが一番いいのかなと考えている、というのが近いですね。
自分が全部作れなくてもいいと思うんです。
たとえば私がこうしてポッドキャストをやっているのも、4年前に「音声配信をやりたいお客さんが来た時、こんな風にやりますよと言えた方がいい」という目的があったんですよ。
自分で全部できなくても、そのチャネルがお客さんにマッチするかどうかを広く見る視点は、持っていた方がいい。
そして、通常のホームページを提案するのと同じ熱量で「こっちにしましょう」と言えるだけの知識は、持っておいた方がいいんじゃないかなと思っています。
まとめ
「全ての仕事にホームページが必要か」と聞かれたら、いまの私の答えは「いらない場合もある」です。大事なのはホームページを作ることではなくて、エンドユーザーに必要な情報を、どのチャネルで届けるのが一番いいかを考えること。その視点さえ持っていれば、断ることも、別の形を提案することも、きっと信頼につながっていくはずです。
- 全ての仕事にホームページが必要とは限らない。商売にはネット向き・不向きがある
- 作るべきは、エンドユーザーに必要な情報が満たされているかどうか。必要十分を超えたリッチさは誰のためかを考える
- ホームページの予算を他チャネルに回す提案もあり。同じ熱量で提案できる知識を持っておく
- 大事なのは作ることより、どのチャネルで届けるのが最適かを広く見る視点






