無菌調剤は「難しそう」と敬遠されがち?
話のきっかけは、たいぞーさんが勤める薬局の店舗で、無菌調剤が定期的に必要になる患者さんの在宅訪問の依頼を受け、対応することになったことです。
たいぞーさんの店舗は注射薬の対応を引き受ける機会がたびたびあり、所属するスタッフは大なり小なり注射薬の扱いに慣れているといいます。
(注射薬の扱いに)慣れている、長けているとは言わないですけども、「いや、私できません」なんていうことにはならず、取り組むことができるようなスタッフが今揃っておりまして。
一方で、薬局の薬剤師の中には、無菌調剤と聞くと「難しそう」「経験がないので、いきなりは難しい」と話す人もいます。たいぞーさんは前の会社で人員配置や組織運営、人材採用にも関わっており、そうした声を実際に聞く場面があったそうです。
一包化や粉砕より、無菌調剤のほうが簡単?
たいぞーさんは、自分でも無菌調剤の業務を行いながら、この業務はそれほど難しいことなのかと、いつも感じているといいます。
もちろん注射薬は体の中に直接針を通して投与するため、調剤過誤や調剤事故が起きれば、患者さんの健康に大きな不具合を生むリスクがあります。その点で、無菌調剤が緊張感を伴う業務であることは、たいぞーさんも認めています。
難しい仕事かというと、正直難しくなくてですね。僕からすると、よっぽど一包化をしたり、粉砕の調剤をしたりという方が、作業の手間も多いです。
たいぞーさんの見方では、一包化 ── 服用時点ごとに複数の薬をひとつの袋にまとめる調剤方法。飲み間違いを防ぐ目的で、高齢者や在宅患者に多く用いられますや粉砕の調剤のほうが細かく難しい部分が多く、それらと比べると無菌調剤のほうが簡単ではないか、ということです。
体内に直接投与するため緊張感は伴うが、複雑な操作過程が必要な行為ではない
作業の手間が多く、細かいところで難しい部分がたくさんある
6年制の薬剤師は、すでに無菌調剤を経験している
これまでの薬学教育では、薬局で無菌調剤を積極的に行うことを想定した教育を受ける機会が少なかった、あるいはなかったという薬剤師も多いのではないか、とたいぞーさんは話します。
ただ、薬学教育が6年制になって10年以上が経とうとしています。6年制では長期実務実習が行われ、学生はOSCE ── 客観的臨床能力試験。薬学生が実務実習に出る前に受ける実技試験で、患者対応や調剤などの技能を評価しますという実技試験を経て実習に出ます。
OSCEの試験項目には無菌調製が含まれています。そのため、たいぞーさんは、6年制を卒業した薬剤師は試験対策を通して必ず無菌調剤を経験してから薬剤師になっているはずだと考えています。
卒業後に実際に注射薬を扱う機会に恵まれなかった人は多いだろう、とたいぞーさんも認めます。それでも、OSCEでそれなりに経験していれば、臨床現場ですぐに実践できるだけの土台は備わっていると考えて差し支えない、というのがたいぞーさんの見方です。
「OSCEでやったやろ」の一言で変わった後輩
たいぞーさんは前職で、「初めて無菌調剤をする」という6年制卒の薬剤師に出会った場面を紹介します。
「いやいやいや、初めてじゃなくて、学生の時にOSCEでやったやろ」って言ったら、「あ、確かに。」
「じゃあできるんじゃない?その時だってやれてたやん」っていう風に言うと、「あ、そうか」。
その薬剤師は、学生時代以降やっていないので自信があるわけではないと言いながらも、実際に無菌調剤をやってみたそうです。そして「全然普通にできました」という様子で無菌室から出てきたといいます。
その表情を見て、たいぞーさんは、6年制の薬剤師はすでに無菌調剤ができる能力を持ち、そうした教育を受けているのだと感じたと話しています。
「初めて無菌調剤をする」と思い込み、自信がない
OSCEでやったことを思い出し、実際にやってみて普通にできた
無菌調剤を正しく認識すると、何が生まれるのか
6年制卒の薬剤師が一定数増えてきた今、たいぞーさんは、無菌調剤は薬局の薬剤師にとっても決して特別な仕事ではなくなってきていると考えています。病院では日常業務の中でミキシングの機会がありますが、薬局でも同じように考えてよい、ということです。
だからこそ、学生のころに身につけた経験を忘れないよう定期的に思い返し、患者さんが助けを求めてきたときに自信を持って手を差し伸べられるよう準備しておくことも、薬剤師の大事な仕事だとたいぞーさんは話します。
たいぞーさんがもう一つ強調するのは、「薬学で患者を語る」という自身の仕事の軸との関係です。調剤の段階でつまずき、自信なく仕事をしていると、そこに精神的にも肉体的にも労力を取られてしまいます。
自信がないまま臨む
調剤の段階でつまずき、一歩踏み出せない
労力を取られる
精神的にも肉体的にも負担がかかる
専門性に力を注げない
本来薬剤師として考えるべきところに力が回らない
反対に、緊張感は持ちつつも難しい仕事ではないと正しく認識できれば、患者さんにもっと関わるための余力が生まれる、というのがたいぞーさんの結論です。
放送の最後には、12月8日のウェブセミナーと、2月14日に兵庫県姫路市で主催予定の講演会の告知もありました。ウェブセミナーでは薬学的アセスメントの実践例とコツを、講演会では専門性を活かす働き方が組織の価値や賃金として評価されていくための道筋を話す予定だといいます。
まとめ
たいぞーさんは、無菌調剤は緊張感こそ必要なものの、一包化や粉砕より難しい仕事ではなく、6年制の薬剤師ならOSCEを通してすでに土台を持っていると語りました。業務を正しく認識することが、薬剤師が本来の専門性を発揮して患者さんに関わる余力につながるという話です。
- 無菌調剤は体内に直接投与するため緊張感は伴うが、複雑な操作が必要な難しい仕事ではない
- 6年制の薬剤師はOSCEの試験対策で無菌調製を必ず経験している
- 「OSCEでやった」と思い出すだけで、実際に無菌調剤ができた後輩の例がある
- 無菌調剤を正しく認識することが、患者さんに関わるための余力を生む



