絵本喫茶によもやまに集まった3人は何者なのか
番組は「絵本喫茶よもやま」という架空の喫茶店に3人が集まっているという体で進みます。まず片寄さんが、その設定と出演者を紹介します。
これからポッドキャストを毎週やっていこうということになりました。この喫茶店には私、片寄と絵本の編集をされている沖本敦子さん、書籍のPRをされている黒田剛さん、この3人が四方山の雑談をするという体で行っていきます。
沖本さんは絵本の編集者です。ブロンズ新社で絵本編集者としてキャリアを始め、いまはフリーで活動しています。
かがくいひろしさんのだるまさんがシリーズとか、ヨシタケシンスケさんのりんごかもしれないとか、鈴木のりたけさんの仕事場とか、そういうものを作ってきました。今はフリーでいろいろなところで自由に絵本作りをしています。
黒田さんは書籍PRの仕事をしています。実家が本屋で、書店勤務を経てPRの道に進みました。
出版社さんから依頼を受けて、テレビ番組、例えば徹子の部屋とかめざましテレビとか、そういうところで紹介してもらって、たくさんの人に本を知ってもらうという仕事をしています。
片寄さんは、地方新聞社とテレビ局で事件記者を務めた後、いまの出版社に移りました。キャリアの半分がノンフィクション、半分が子どもの本だと話します。
下北沢の本屋で見た光景から番組が動き出す
番組のきっかけは黒田さんでした。下北沢の本屋B&Bで開かれた、芸人が本をプレゼンするイベントを見たことが始まりでした。
衝撃的に芸人さんの本の紹介が上手くて、さらに本をこんなに愛してくれる人たちがいて、それを見に来てる人たちがいてっていう、すごい幸せな空間だったんですよね。
黒田さんはその足で片寄さんのもとへ向かい、絵本でこれをやろうと持ちかけました。沖本さんが必要だとも伝えたと言います。
めちゃくちゃ面白いじゃないですかっていう話で。
当初は動画を想定していましたが、講談社内で話を聞くうちに動画のハードルが見えてきました。そこで音声メディアであるポッドキャストにたどり着きます。
話すのが苦手な沖本さんが、それでもやりたかった理由
沖本さんは、動画や絵本紹介に強い苦手意識を持っていました。芸人のように面白いところを瞬発的に出すことが最も苦手だと言います。
最も苦手とするやつだと思って。早いとか、芸人さんみたいに話をギュッて面白いところを瞬発的に出すとかが最も苦手で怯えている部分なので、それはちょっと難しいなって思ってたんです。
いいことを言おうとして苦しくなり、崩れるのが目に見えていた、とも振り返ります。
一方で、ポッドキャスト自体は元々やりたかったと言います。理由は、インターネット上に絵本の情報が極端に少ないという危機感でした。
今後時代が変わらざるを得ないから、AIが子供が喜びそうなイベントを10個考えてっていったときに、この絵本の情報がなければ、そもそも絵本のイベントが企画として上がってこないってなってくる。
沖本さんは音声を残すことで、絵本の情報をインターネットに積み上げていけると考えました。音声メディアで絵本の話をすれば、それをインターネットの海に流すことができるという一点が、大きな動機になったと語ります。
長尺メディアだからこそ出てくる本音と自己開示
片寄さんには、この番組でやりたい夢がありました。社会に貢献している大物を呼んで、その気持ちの源を聞いてみたいと言います。
社会にすごく貢献されている方だけど、どうしてそんな気持ちになれるのかって聞いてみたいなって思いますね。
黒田さんは、ポッドキャストの魅力を長尺にあると見ています。3時間の動画は厳しくても、聴くことはできる。だからこそ本音が出せる場になると考えます。
本音が出せる場みたいな場所にすれば、夢の方も来ていただいて、あそこだったら本音を話してもいいかなみたいな場になるといいかも。
沖本さんも、長尺のポッドキャストでは1時間を超えたあたりからパーソナリティが思わぬ自己開示を始める回があり、それが面白いと話します。
中年が本音を出しにくい理由をめぐって
3人は同世代の中年です。話題は、中年がなぜ本音を出しにくいのかという方向へ進みます。
キャリアはある程度仕事できて当たり前でしょっていう。失敗しちゃったら恥ずかしいし、自分の恥ずかしいところをさらけ出す人もみんな忙しそうだから気づけばあまりいない。
片寄さんは、明るく飲んでいる中年の男性はあまりいないと言います。集まると仕事の話になりがちだと指摘します。
「こんくらいのことをやってるけどそっちは?」「これ繋げられる?」みたいな。前向きっちゃ前向きなんだけど、「他の話ないの?」みたいな。
沖本さんは、男性の会話では有益な情報の交換が多く、そうでない話は恥ずかしいと思われがちだと分析します。片寄さんも、安く見られたくない気持ちがあると認めます。
一方で黒田さんは、愚痴を言いたい場でもポジティブなことを言いすぎて、呼ばれなくなることがあると打ち明けます。
希望に満ちたことを言っちゃう。「これからでしょう」みたいなことを言うと、そういう話をしたいわけじゃないというか、その集まりはね。
黒田さんは、周りに「もうこんなもんだろう」という人が多く、新しいことに挑戦する人が少ないと感じています。この番組は、その中で新しいことに踏み出す試みでもあります。
材料を50個ためて、ようやく動き出す沖本流
沖本さんは新しいことが苦手で、心の負担を軽くするために、面白くなる材料を自分の中にためて熟成させると言います。
動機の一つは、絵本村が消滅しないように音声をテキストにしてインターネットに送り込むこと。もう一つは、長期実験ができることです。
半年、1年、1年半みたいな時間を経過していくと、何か友情まで行かないけど、ちょっと不思議なものが出現するのかしないのかとか、どんな変化が自分に生じるのかとかをウォッチするのがすごい楽しみで。
こうした動機を50個ほどためて、ようやく動けるのが沖本さんのやり方です。片寄さんは、沖本さんが用意した企画書に100や200の話題プランがあったと明かします。
週刊誌の速さと、絵本のゆっくりした時間
話題は、それぞれの仕事のスタート地点の違いに移ります。片寄さんは雑誌で始まり、3日ほどで消える情報のために毎週入稿を繰り返してきました。
その3日4日のために、もう血道をあげて、毎週毎週「入稿入稿入稿」みたいな感じでやっていく。
最初はいまでいうパワハラのような環境だったと言いますが、それが鍛えてくれたとも振り返ります。
情報が取れて記事になるまで帰ってくるなとは言われました。でもそれが鍛えてくれて、ノーじゃなくて半イエスみたいな答え方は随分学んだ気がします。
沖本さんは、質を大事にして時間をかける絵本の世界とは順番が違うのではないかと問いかけます。片寄さんは、週刊誌ではその時みんなが知りたがる情報が優先されると答えます。
3日ほどで消える情報のために、毎週入稿を繰り返す。速さと鮮度が優先される
質が良いことを大事に、時間をかけて磨き上げる。何十刷りと読み継がれる可能性がある
片寄さんは書籍をやりたいと希望を出し続け、5、6年後に児童書へ異動しました。ノンフィクションから児童書へ移ることに、抵抗はなかったと言います。
コンビニとかキオスクで3日で消える情報よりは、面白いな、残るしなぁとかって思っていて、こっちこっちと思ってたんです。
本が時空を超えるという魔法
黒田さんは、本が残ることの意味に触れます。最近、本がなぜ必要かという話でよく聞くのが、残る、時空を超えるという点だと言います。
もう僕らはいないのに、作った著者がいないのに、50年後、100年後に見られている。本が物体であることがすごく大事らしいんですよね。
黒田さんは、著者が想定していなかった人にも本が届くことも面白いと語ります。旅館にあった一冊と偶然出会うようなことが起きる、と表現します。
片寄さんは、児童書に移って担当作家を持つようになると、記者経験が重宝された経験を語ります。和菓子屋のあんこの練り方を調べてほしいと頼まれ、ルートを使って手書きの資料を手に入れたことを嬉しかったと振り返ります。
物怖じしないで何でも聞かないと編集長にドヤされるという、背中に火がついている感覚で聞きに行くというのはすごい大事ですよね。
ほころびを前提にした番組にしたい
沖本さんは、絵本が好きな理由を、間口が広く怖くないところだと言います。版元の垣根を越えて仲が良く、精鋭化していないと感じています。
海外のブックフェアでも、国籍が違っても絵本に関わる人はレイヤーが似ていると言います。困っている人に声をかけそうな、感じの良い人が多いと表現します。
道で困っていたら「大丈夫ですか」とか言いそうな感じの良い人で、やや地味。
そこから沖本さんは、この番組の方向性を語ります。スタイリッシュに旬の情報をバシッと入れるよりは、ほころびがあって、どなたでもどうぞという感じにしたいと言います。
こんなんでもいいんですかっていうような、絵本の世界が持ってるような、どなたでもどうぞっていう感じになるといいかな。
片寄さんも、絵本喫茶に来ているはずなのに週刊誌の話をしていた自分を挙げ、綻びだらけだと笑います。番組名「よもやま」は制作の遠藤さんが名づけたものです。
始めることが大事。そよぎと無様ポイント
黒田さんが大切にしているのは、始めることです。やって失敗するよりも、やらなかった後悔の方が残ると言います。
沖本さんには「そよぐ」という独自の基準があります。心が3回動けば、その仕事はペイだと考えています。
一つ目のそよぎは、片寄さんが家で話す練習をしていたと奥様から聞いたこと。二つ目は、制作の遠藤さんが会議を楽しかったと語ってくれたことでした。
むしろちょっとやりたいっていうのが分かった段階でもうそよぐから、そもそもツーペイなの。
黒田さんは、瞬発的に飛び込む成功体験があると言い、沖本さんは磨き上げて出す成功体験があると整理されます。互いに補い合ってチームで進むことの良さも語られます。
さらに沖本さんは、中年こそ「無様ポイント」をためるべきだと話します。中年になると失敗を避けて器用にこなせるようになりますが、そのぶんコケた時の痛みが大きいと言います。
ワクチン的に日々無様を取っていった方が良い、積極的に無様ポイントを稼いでいった方がいいと思ってて。ポッドキャストで変テコのことを言って落ち込む、でもそれは無様ポイントが30ポイント貯まっているみたいな感じになっている。
片寄さんは酔って転んで眼鏡を失くした話を、黒田さんは断られる仕事に慣れているという話を、それぞれ無様体験として持ち寄ります。互いの傷つきを笑いに変えていくやり取りが続きます。
次回からは絵本紹介も。まだ何者でもない番組
番組では毎回、出演者が持ち回りで絵本を1冊紹介することが決まっています。基本は自分の心が動いた本です。
必ずこのポッドキャストでは1冊絵本を、たまに児童書になるかもしれませんけど、基本絵本をご紹介します。それは各人持ち回りで、一人が1冊を必ず紹介するということが決まりとしてあります。
継続の話にもなり、片寄さんも沖本さんも継続は苦手だと明かします。それでも片寄さんは、泣きながらでも続けてきたと言います。
当初の1回分のつもりが3回分ほどの時間になっていました。片寄さんは、次回から絵本喫茶よもやまで3人が雑談する体で届けていくと締めくくります。
まとめ
この回は、属性も性格もばらばらな中年3人が、絵本を語るポッドキャストを始めるまでの動機と迷いを雑談として明かすプレオープンでした。速さと質、慎重さと即行動、そうした違いを抱えたまま、まず始めてみることに意味を置いた回でした。
- 下北沢の本屋で芸人が本をプレゼンする光景が、番組の出発点になった
- インターネットに絵本の情報が少ないという危機感が、沖本さんの大きな動機になっている
- 長尺の音声メディアだからこそ、本音や自己開示が出てくると3人は考えている
- 週刊誌の速さと絵本のゆっくりした時間という、対照的な仕事観が語られた
- 次回からは絵本紹介も始まり、3人の雑談という体で続いていく






