「ブリッジローン」は本当にわかって使えているか
今回のテーマは「ブリッジローンとは何か」です。つなぎ融資とも呼ばれ、スタートアップ界隈では「ブリッジ」という言葉が頻繁に飛び交います。
ただ、正しく理解できているかというと曖昧な人が多いようです。植野さんも、皆がブリッジローンと言うので同じように使っているだけだと打ち明けます。
私は完全に、皆さんがブリッジローンと言っていらっしゃるので、同じくブリッジローンと言って、エクイティとエクイティの間のブリッジ、そんな感じでしか使ったことはないですね。
司会の若林さんも自身が曖昧だと認めた上で、菅井さんにブリッジローンの定義から尋ねていきます。
ブリッジローンの定義は「次の調達までをつなぐ一時的な融資」
菅井さんは、曖昧なまま使っている感覚はむしろ間違っていないと言います。「つなぎ」という言葉に、この融資の本質がほぼ包含されているからです。
菅井さんによれば、ブリッジローンは、次に出されるローンや資金が前提としてあり、その検討期間の間だけをつなぐ一時的な融資です。次に決まったファイナンスが前提にあることがポイントになります。
そのローンを出すにあたって、次に何か出されるローンが前提となっていて、その検討期間の間だけをつないであげる臨時のというか、一時的な融資かなと思っています。
若林さんは、ブリッジは「橋」であり、決まった岸と岸があってそこを一旦つなぐ意味合いだと言い換えます。菅井さんも同意します。
現在
手元資金がいずれ尽きる
ブリッジローン
検討期間の間だけを一時的につなぐ
次のファイナンス
前提として決まっている調達・入金で返済する
ブリッジローンが使われる場面
ブリッジローンの「次のイベント」には、いくつかのパターンがあります。若林さんは、エクイティとエクイティの間、補助金の入金までの期間などを挙げます。
さらに菅井さんは、買収の場面も挙げます。LBOファイナンス ── Leveraged Buyoutの略。買収先の資産やキャッシュフローを担保・返済原資として資金を借り、企業を買収する手法ですでキャッシュフロー返済を伴う融資を組む前に、買収を成立させるための見せ金としてブリッジローンを引くケースもあるといいます。
「悪いブリッジローン」に要注意。成立の絶対条件
若林さんは、「つなぎ」という言葉に怖さも感じると言います。特に補助金の場面では、本当にちゃんとつながるのか危うい「危ない橋」もあり、いいブリッジローンと悪いブリッジローンが存在するのではないかと問いかけます。
菅井さんによれば、貸し手が最も見ているのは、ブリッジ後の実際のファイナンスに移る確度がどれくらい高いかです。企業の信用ももちろん見ますが、次の調達の確からしさが鍵になります。
借りる側もその前提で、次の調達の確度が確からしい、あるいは確からしいように持っていける自信があるという状態でないと、安易に手をつけちゃいけないものかなと思います。
若林さんは具体例で整理します。エクイティなら次の調達で返済できる蓋然性が相応に高いこと、補助金なら採択され交付決定が出て、いつ出るかがわかっている状態です。
逆に、次の調達がふわっとしている場合は、ブリッジローン自体が成立しにくくなります。仮に成立しても、多くの不確定要素が残ることは間違いないと菅井さんは言います。
そのため菅井さんは、確定しないリスク要素を初めから金融機関と共有しておくことが大事だと強調します。調達が後ろにずれたときにブリッジの期限を延ばせず、いわゆる死の谷 ── スタートアップが資金を使い果たし、次の調達や黒字化に到達する前に資金繰りに行き詰まる危険な局面を指す言葉ですを迎えてしまう状況を避けるためです。
次の調達の時期・金額が確定的で、リスク要素も金融機関と共有できている
次の調達がふわっとしていて、成立しても不確定要素が多く残る
つなぎにならない使い方。金額の割合と時期
若林さんは、ブリッジローンにならない局面として、次のファイナンスで調達できる金額に対して相応の割合であるべき点を挙げます。
補助金では、補助率が3分の2や2分の1のように、対象金額の全額が出るわけではありません。また完了報告が遅れると入金も遅れることがあります。
エクイティでも同様です。次回3億円の調達を見込んでいるのにブリッジで3億円借りてしまうと、返済して終わりになってしまうと若林さんは極端な例で説明します。一定の割合に収める必要があるということです。
既存のお付き合いと、緩い段階からのコミュニケーション
植野さんは、補助金やエクイティが固まってきた状態で金融機関に相談・審査を申し込む必要があるのか、確定が見えていることが大事なのかと尋ねます。
菅井さんは、最後にそこが大事になるのはその通りだとしつつ、これまでの回でも繰り返してきたように、最後はコミュニケーションだと答えます。緩い段階からしっかり進捗を示していくことが重要だといいます。
全くこれまで関係性のなかった金融機関にいきなり話を持っていっても、まず御社のことを詳しく知るところからみたいな形で始まってしまうので、少し長期化しちゃう部分があると思います。
そのため菅井さんは、既にお付き合いがあり、自社を理解している金融機関に相談するのが大事だと言います。この会社ならこの補助金は大丈夫そうだと理解している銀行かどうかで、進み方が変わるからです。
補助金ブリッジの論点。交付決定と経常的な売上
補助金のブリッジでは、まず交付決定が出ていることがマストだと若林さんは言います。対象事業をやりきれば後に補助金が出ると決まる、決定の通知です。
さらに最近の傾向として、補助金での入金以外の返済原資、つまり経常的な売上が全く見えないと貸してくれないケースがあるといいます。特にものづくり補助金 ── 中小企業などの設備投資や試作開発を支援する国の補助金制度。採択後に事業を実施し、完了報告を経て補助金が交付されますで見られる傾向です。
一方、NEDO ── 新エネルギー・産業技術総合開発機構。ディープテックなど先端技術の研究開発に補助金を出す国の機関ですなどディープテック向けの補助金は話が別だと若林さんは補足します。補助金の場合は経常的な売上が論点になり得る点を、起業家は覚えておくとよいといいます。
エクイティ間の資金は「ブリッジ」ではなく成長投資
VCからのエクイティファイナンスのブリッジになると、次のラウンドが1年後というケースもあり得ます。事業が成長しないと次のファイナンスも見えないため、明確にブリッジと言い切るのは難しいと若林さんは指摘します。
これに対し菅井さんは、ここでいうブリッジは明確なブリッジではないと考えていると答えます。見た目にはエクイティとエクイティの間をつなぐのでブリッジと言えても、この回で話してきたブリッジローンの定義とは少し違うといいます。
次のエクイティラウンドでのバリエーションを引き上げてもらうための成長投資のための資金を投じるっていうことを意識をしています。
菅井さんによれば、FlexCapitalは融資の返済原資を考えるとき、次のエクイティラウンドが回るかどうかを最も重視しています。融資したお金が成長投資に振り向けられ、成長の角度が上がってバリュエーションが上がり、次のラウンドを迎えられるかを見ているのです。
ここでの「確度」は、確からしさと、成長のアングルの2つを指すと菅井さんは説明します。だからこそ、この資金はブリッジというより成長投資のための資金提供だといいます。
エクイティとエクイティの間をつなぐ融資という見え方
バリュエーションを引き上げるための成長投資として資金を投じる
返済原資は「次のラウンドが回るか」。仕訳帳から確度を見る
この資金は、決まった次への架け橋というより、ランウェイを伸ばしていく資金だと若林さんは整理します。
その資金を出すにあたり、成長の確度と角度の両方を見るために、FlexCapitalはさまざまな会計データを見ています。菅井さんによれば、仕訳帳 ── 企業のすべての取引を発生順に記録した会計帳簿。売上や費用の中身を細かく確認できますのデータを見ており、赤字の企業でもユニットエコノミクス ── 顧客1人あたりの採算性を示す指標。1顧客から得られる利益と、その獲得・維持にかかるコストを比べて、事業モデルが成り立つかを見ますが出ているかどうかを確認するといいます。
なお、ここで出た「ランウェイ」という概念はスタートアップならではのものです。黒字経営の会社にはない考え方のため、次回は菅井さんがランウェイについて解説する予定です。
まとめ
ブリッジローンは、次に決まった調達・入金までを一時的につなぐ融資であり、成立の鍵は「次の調達の確度」と金融機関との継続的なコミュニケーションにあります。一方で、エクイティ間の資金はブリッジというより、バリュエーションを引き上げる成長投資として捉えるべきだと整理されました。
- ブリッジローンは、次のファイナンスが前提にあり、その手前までをつなぐ一時的な融資である
- 貸し手が最も見るのは次の調達の確度で、ふわっとした状態では成立しにくい
- リスク要素は初めから金融機関と共有し、後ろ倒しに備えて期限交渉をしておく
- 補助金では交付決定に加え、入金以外の経常的な売上が論点になり得る
- エクイティ間の資金は成長投資として捉え、次のラウンドが回るかを返済原資の軸に見る




