たまごっち風の端末「MuseCharm」とは何か
Metaが、たまごっちのような手のひらサイズのAI端末を発表しました。CEOセオさんは今回、FacebookやInstagram ── Metaが運営する写真・動画共有SNS。2012年にFacebook(現Meta)が買収しましたを運営するMetaのこのニュースを深掘りしています。
Metaはこれまでも、AIグラスなどのハードウェアを作ってきました。CEOセオさんは、Ray-Banと組んだサングラス型はまあまあうまくいっているとしつつ、ビジネスとしての規模はまだ小さく、Metaはあくまで広告がメインの会社だと前置きします。
発表の場は、Metaの年次イベント「MetaConnect2026」です。すでにリリース済みのAIエージェント「Muse」専用の端末として、「MuseCharm」がサプライズで発表されました。
MuseCharmには、2インチの有機ELタッチ画面、専用OS、5Gモデムが搭載されています。Wi-Fiがなくても通信でき、画面中央のMuseのキャラクターは見た目や衣装、声をカスタマイズできるといいます。
一方で、MuseCharmは音声通話やビデオ通話には対応していません。ただし、Charm同士を近づけるとお互いを認識し、やりとりができる仕組みです。
Meta自身はMuseCharmをウェアラブルではなく「手に持つ端末」と位置づけています。CEOセオさんは、スマートフォンに近いポジションでありながら、サイズも使い方も違う「AIファーストのプロダクト」だと捉えています。
MuseCharmは12月のホリデーシーズンまでの出荷を目指しており、価格は未発表です。関係者によると、当初は2027年発売の予定だったものを、マーク・ザッカーバーグ氏の指示で前倒ししたといいます。
おそらく年内にここまで急いだのは、OpenAIとかが出す端末も、おそらく近いタイミングで出てくるんじゃないかなというふうに予想されますよね。
CEOセオさんは、Appleも含め、今年の年末から来年にかけてAIファーストのプロダクトが多数リリースされると見ています。MetaのCTOであるボズワース氏は、MuseCharmを「こんなものは他にない」試験的な取り組みで、「バージョンゼロ」だと語っています。
AIエージェントMuseはどう稼ぐのか
MuseCharmの中核にあるAIエージェント「Muse」は、9月8日に公開されました。メールの送信、旅行の予約、フォームの入力、さらには交渉までを代行してくれるといいます。
Museは日本ではまだ利用できませんが、一気にダウンロードが進み注目を集めています。CEOセオさんは、公開から約2週間で専用端末まで出てきたスピードに驚き、AIエージェントはPCの中ではなく専用端末から動かしていくという方向性を読み取っています。
Metaは同時にVRグラスなども発表していますが、基本は広告メディアの会社です。今回のMuseCharmは、広告で利益を上げてきたMetaが、プロダクトやハードウェアへ展開する動きでもあります。
Museのビジネスモデルは、トークンの利用は無料で提供し、Museを通じた売買の取引に手数料をかけるというものです。料金プランは無料プランのほか、月額約20ドル(約3160円)と約100ドル(1万6000円弱)の有料プランが用意されるといいます。
Museの提携先としては、Shopify ── ネットショップを簡単に開設できるEC構築プラットフォーム。中小から大手まで多くの事業者が利用していますの全カタログや、Walmart、BestBuy、Gapなどが挙げられています。
依頼
ユーザーがMuseに「〇〇して」と頼む
代行
Museが買い物などの取引を代わりに行う
手数料
代行した取引に対してMetaが少額の手数料を回収する
CEOセオさんは、Museのこの収益構造をアフィリエイトに似たものと説明し、さらに本質はクレジットカードに近いと指摘します。
だからクレジットカードなんですよ、本当にやってることはね。だからクレジットカードのポジションを取りに行くと。
広告に頼るMetaが広告を捨てる矛盾
Metaがなぜ専用端末に乗り出したのか。CEOセオさんによると、Metaは年間9兆円ほどの売上がありながら、スマホのOSや物理的なプロダクトをほとんど持っていません。
Metaの売上の97.6%は広告です。CEOセオさんは、Metaがさらに稼ぐには、ユーザーとの「入り口」を変えていく必要があると見ています。
ただし、MuseCharmのような端末では広告を出すことができません。CEOセオさんは、広告が崩壊するというより、まったく違うビジネスモデルを投入する試みとして、非常に新しい展開だと評価しています。
MuseCharmの影響はすでに表れています。Amazonは9月20日の夜から、Museによる自社サイトでの購入をブロックしました。
一方で、Shopify側はMuseと連携し、エージェント経由の購入や決済を可能にするとしています。CEOセオさんは、AmazonとShopifyの対応の違いを、それぞれの立場の違いから説明します。
顧客データを自社で持つため、自分が介在しない外部エージェントの購入をブロック
中小ECを束ねる立場で、Museは便利機能になるため連携を歓迎
CEOセオさんは、Amazonが2014年に出したAmazonEchoにも触れます。話しかけて物を買う仕組みでしたが、当時はAIがなかったため、自分で買いに行ったほうが早いという状況だったといいます。AI時代の今だからこそ、Metaはよいタイミングで投入したのかもしれない、とCEOセオさんは話しています。
巨額投資とMuseの急成長、株価への波紋
Metaの数字を見ると、四半期で約9兆6000億円を売り上げ、営業利益率は31%です。毎日使う人は36億人にのぼり、Metaは巨大なインフラになっています。
一方で、Metaの設備投資は4兆9100億円にのぼり、フリーキャッシュフローは約1200億円しかありません。2026年通期の設備投資の見通しは約20兆円とされ、そのほとんどがAIへの投資だといいます。
端末部門のRealityLabは、売上681億円に対して営業損失が7300億円です。CEOセオさんは、Metaは端末で儲けるつもりはなく、端末を大量に配って取引から稼ぐための先行投資だと解説します。
Museのアプリは公開から約2週間で累計250万ダウンロードを超えました。iOSで150万、Androidで110万です。同じ13日間で他のAIアプリと比べると、その勢いがわかります。
| サービス | ダウンロード数 |
|---|---|
| Muse | 250万 |
| ChatGPT | 310万 |
| Claude | 40万 |
| Grok | 20万 |
Museは9月19日に米国iOSの無料アプリで1位となり、ChatGPTを抜きました。この影響でMetaの株価は、9月21日の月曜日に11%上昇したといいます。
逆に株価が下がった企業もあります。保険会社、Expedia、Booking.com、Verizon、フィットネス会社などです。
理由は、Museが保険の乗り換えや不要なサブスクリプションの自動解約をするのではないかと見られたためです。CEOセオさんは、使われていない「幽霊会員」がAIエージェントに切られていけば、「乗り換えが面倒だから続ける」というロジックが通用しなくなると指摘します。
Metaは同じ発表で、重さ100グラムのMetaVRグラスも20万円で発表しました。2027年春の発売予定で、常用できるかもしれない軽さが注目されています。
後発でも勝てる「〇〇ファースト」とは
MuseCharmには「チープなスマホでしょ」という論調もあります。音声通話もビデオ通話もできず、頼むだけならスマホでできる、という見方です。
これに対しCEOセオさんは、重要なのは「〇〇ファースト」であること、つまりMuseCharmがAIファーストのプロダクトである点だと語ります。その例として挙げるのが、ヤフオクとメルカリです。
当時のヤフオクは断トツの一強で、乗り換えは誰もが不可能だと思っていました。それでも後発のメルカリが、リセール市場を塗り替えていきました。
ヤフオク:写真を撮り、それをオンラインにアップロードして出品
メルカリ:スマホで撮ったまますぐに出品できる
CEOセオさんによると、中古品は価格さえ合えば基本的に売れるため、出品者をどう集めるかが最も重要でした。メルカリはスマホファーストで出品を簡単にし、爆発的に商品量を増やしたといいます。
確かに同じことできるんですよ、別にスマホでも。できるんだけど、やっぱこのたまごっちみたいな、ちょっと可愛いもので声をかけて、
(エージェント機能を頼むという)この行動自体がですね、やっぱ違うんですよね。
CEOセオさんは、Xで話題になっていた「最初に参入した会社が必ず勝つわけではない」という事例も紹介します。
| 企業 | 市場 | 参入順 |
|---|---|---|
| Apple | スマートフォンメーカー | 15番目 |
| Spotify | 音楽プラットフォーム | 10番目 |
| 検索エンジン | 21番目 | |
| ソーシャルネットワーク | 10番目 | |
| Netflix | ストリーミングプロバイダー | 7番目 |
| Uber | ライドシェアリングサービス | 4番目 |
| TikTok | ショートビデオアプリ | 8番目 |
| Zoom | ビデオ通話アプリ | 11番目 |
CEOセオさんは、参入の順番よりも「〇〇ファースト」であることと、やりきる力が重要だと話します。Metaは売上の97%が広告で、広告を飛ばしてエージェントへ向かうのは諸刃の剣でもあります。
MetaはInstagramやWhatsAppの買収では成功してきたものの、そこから新しい芽は出ていません。CEOセオさんは、巨額の投資をかけたMuseCharmがどうなっていくか、追いかけていきたいと語ります。
最後にCEOセオさんは、自社の事業についても「過去にやってダメだったから」にとらわれず、何のファーストで作るのかを改めて考えてみるとよいと呼びかけています。
まとめ
MetaのMuseCharmは、広告に97%以上を頼る会社が、広告を出せない端末と取引手数料モデルに巨額を投じる大きな賭けです。CEOセオさんは、スマホでもできることでもAIファーストで作られていることに意味があり、後発でも市場を変えうると見ています。
- MuseCharmはAIエージェントMuse専用の手のひらサイズ端末で、12月のホリデーシーズンまでの出荷を目指している
- Museは取引に手数料をかける仕組みで、CEOセオさんはクレジットカードのポジションを狙う動きと解説している
- Amazonはブロック、Shopifyは連携と、立場によって対応が分かれ、サブスク関連銘柄の株価も下がった
- メルカリや後発の巨大企業の例から、参入順より「〇〇ファースト」とやりきる力が重要だと語られている




