Geminiの電話代行はなぜ飲食店にとって悩ましいのか
GoogleがGeminiに電話代行の新機能を追加し、レストラン予約もAIに任せられるようになる、というニュースが出ました。CEOセオさんは、Googleが以前からこうした展開を水面下で進めてきたことに触れつつ、このニュースを深掘りしていきます。
CEOセオさんが気にしているのは、日本でもすでに問題になっている飲食店へのAI電話です。番組でも以前取り上げたように、仕込みなどの最中にAIから電話がかかってきて、トラブルが多発しているといいます。
便利ではあるんだけども、飲食店からするとね、仕込みの時間とかいろんなことやってる時に電話がかかってきて、しかもそれがAI電話であるということで、非常にトラブルが多発していると。
CEOセオさんは、Googleの新機能がこの問題をどう回避しようとしているのか、カスタムされた部分も含めて見ていきたいと話します。
そもそも電話予約自体が減りつつある、とCEOセオさんは指摘します。最近はネット予約が広がり、CEOセオさん自身もほぼネット予約になっているそうです。
「NOTELEPHONE」に込めた、電話は人の時間を奪うという考え
CEOセオさんは電話を正直めんどくさいと感じていて、7年ほど前には「NOTELEPHONE」という曲までリリースしています。
「NOTELEPHONE」の意味としては、電話というのは突然人の時間を強制的に奪うものであると、いうことから、「NOTELEPHONE」であるということを語ってるんですけど。
ただしCEOセオさんは、電話そのものを否定しているわけではありません。緊急性のあることや、テキストでは伝えづらいことは電話が必要だとしています。
迷惑なのは、今言わなくていい話やテキストで済む話を電話でされることです。飲食店の仕込みにはタイムラインがあり、そこで作業を突然断ち切られるのは嫌なものだとCEOセオさんは説明します。
Gemini電話代行で何ができるのか
ニュースの要約として、GoogleはモバイルアプリのGeminiに電話代行機能を追加すると発表しました。プロンプトに「@callforme」と入れるか、Geminiに電話を頼むと呼び出しができる仕組みです。
Geminiの電話代行は、店に電話して営業時間や在庫、サービスの見積もりを確認できます。予約やアポイントを取る、確認する、変更するところまで任せられるといいます。
さらにGeminiは、電話の自動音声メニューを操作し、保留中も待ってくれます。CEOセオさんはここに大きな利点を見ています。
飛行機のエアラインのサービスカウンターに電話して、1時間繋がんないことって結構あるじゃないですか。ああいうのって結構ほんと不便ですよね。
ネットでは変更できず電話しかない予約変更のように、伝えたいことが明確で待ち時間が長いケースでは、AIの電話代行は非常に便利だとCEOセオさんは評価します。一方で、相手が飲食店になると問題が出てくるとも付け加えています。
利用条件の厳しさが示す「テスト段階」
Geminiの電話代行は、現時点では日本では使えず、米国が中心です。CEOセオさんが挙げた利用条件は、ハードまで限定したかなり厳しいものでした。
- 18歳以上で米国に住んでいる
- 米国のSIMを入れたPixel11を使っている
- GoogleのAIサブスクリプションに加入している
- 端末の言語が英語で、発信先は米国の電話番号のみ
段階的な提供のため、条件を満たしても使えないケースがあると注意書きされているそうです。CEOセオさんは、Geminiの電話代行はあくまでも初期の段階だと見ています。
セキュリティと「受ける側」への配慮はどう設計されたか
Geminiの電話代行では、支払いや金融取引、クレジットカード番号は伝えられません。社会保障番号、パスワード、健康情報などのデリケートな個人情報も伝えない設計で、911のような緊急通報やテレマーケティングにも使えません。
通話の冒頭では、GoogleのAIアシスタントが、録音される回線でユーザーの代わりに電話していることを、ユーザー名とともに伝えます。そのため、受けた側は最初にAI電話だとわかります。
飲食店とかのお店によっては、もうその言った瞬間に切る可能性ありますよね。「あ、もうこれなし」っていうね。
CEOセオさんは、AIだと名乗った時点で切られることも含めて「いいこと」だと受け止めています。受ける側のスタンスまで考えたうえで設計されている、というのがCEOセオさんの印象です。
通話の様子はライブの文字起こしと音声で見守れ、「テイクオーバー」ボタンを押すとマイクがオンになり、人間に引き継げます。
AIでおかしなことやってゴチャゴチャやってる間に、飲食店側とか予約の受け元も、なんか嫌になっちゃって、もう余計トラブっちゃうみたいなね、ことがあってもよくないんで、ここは切り替えられるということが重要だと思いますね。
1日にかけられる回数にも上限があります。CEOセオさんは、上限がないと大量に電話されてコストや電力の状況が読めなくなるため、あえて上限を設けている点もうまく考えられていると話します。
通常の通話料は通話中にかかり、他のGeminiユーザーからの自動電話を受けたくない場合はオプトアウトもできます。AI電話が殺到するリスクも踏まえた設計だと、CEOセオさんは受け取っています。
冒頭で開示
AIアシスタントが録音回線でユーザーの代わりに電話していると、ユーザー名とともに伝える
AIが会話
文字起こしと音声でユーザーが様子を見守る
人間に交代
テイクオーバーボタンでマイクがオンになり引き継げる
受ける側の選択
途中で切る、またはオプトアウトで自動電話を受けない
AIリテラシーの低い店で起きる予約トラブル
一方でCEOセオさんは、飲食店などAIリテラシーが低い現場では、予約がきちんと受けられていないケースが結構起きているようだと話します。
AI電話に慣れてないから、もうなんかこれなんだ、間違い電話かなとか、あとはもう詐欺電話かなみたいな感じで、ちゃんと予約が取れてないみたいな。
店に行ってみたら予約が取れていなかった、ということもあるようで、CEOセオさんはこの点を非常にデリケートな問題だと見ています。
こうした状況を踏まえ、CEOセオさんは、AIが電話をかけるだけでなく、受ける側もAIにする「AI to AI」が重要になると考えています。
Duplexから続くGoogleのAI電話の蓄積
GoogleはGemini以前に、Duplex ── Googleが開発した、AIが人間の代わりに店へ電話して予約などを行う技術。自然な話し方で会話することで注目を集めましたというAI電話の機能をかなり前に発表していました。CEOセオさんによれば、今のAIとは仕組みが違うものの、Googleは水面下でずっと実績とノウハウを積み上げてきたといいます。
CEOセオさんは、Duplexの知識やノウハウを使ってGeminiの展開を進めているため、いろいろなことを考えたアップデートになっているという印象を受けています。
CEOセオさんが特に向いていると考えるのは、IVRのような自動音声で待たされる場面です。
「今回線がつながりにくくなっています。もうしばらくお待ちください」みたいなことをね、人間が待つ必要ない。だからそれをAIに待ってもらうってね。
逆に、飲食のような対人の電話を対象にすると、どうしても難しいモデルになるとCEOセオさんは見ています。
待ち時間が長く伝えたいことも明確。人間が待つ必要がなく、AIに待たせるのに向いている
仕込み中の電話が負担になり、AIに不慣れだと間違い電話や詐欺と誤解されて予約が成立しないことがある
OpenTableやAutoreserveも進めるAI予約の実績
AIを活用した予約はGoogleだけの取り組みではありません。OpenTable ── レストランのオンライン予約サービスを世界で展開する企業。飲食店向けの予約管理システムも提供していますやTablecheckといったグローバルな予約サービスも、すでにAIを活用した予約システムを手がけています。
日本でも、番組で先日紹介したAutoreserveが、利用者に代わって予約を代行するサービスを展開しています。
GoogleのDuplexは、サービス開始から予約を100万件以上こなしてきたといいます。発表時点では、Duplexがかける電話の99パーセントが完全自動だったそうです。
ただしCEOセオさんは、Duplexの実績は決まった処理をしていたもので、今回のGeminiの性能を示すものではないと補足しています。
Duplexは店舗情報の更新を8カ国に広げ、300万件以上を更新しています。OpenTableの音声AIも、世界で20社以上の音声AIパートナーと連携し、来店者の累計は300万人を突破したといいます。
こうした数字から、CEOセオさんはAI予約はすでに十分進んでいる領域だと捉えています。
AI電話代行は誰にとって割に合うのか
予約は変動が多く、人間が電話するのとAIに任せるのとでどちらが確実で安いのか、という議論があります。CEOセオさんは、テクノロジーでコストを下げるには大量に使われる必要があると指摘します。
自分が1ヶ月に、予約の電話を1件か2件かなみたいな人がわざわざこのサービスを使う必要はない。自分で電話した方がいいって。
世間では「面倒な電話から解放される」「内向的な人には朗報」という論調もあります。しかしCEOセオさんは、予約したはずの店が取れていなかったという失望が一度起きると、一気にサービスを使う気がなくなると見ています。
可能性として挙げたのは言語の壁です。翻訳機能もあるため、日本人がアメリカのレストランを電話で予約するようなクロスオーバーができれば、AI電話の可能性は広がるといいます。
ただ、最近は海外でもネット予約できる店が多く、Googleもさまざまなサービスとつなぎ込んでいます。そのため、AI電話にどれだけメリットがあるのかは一概に言えなくなってきている、とCEOセオさんは話しています。
最終形は店側にAIを入れる「AI to AI」
CEOセオさんが考えるAI電話の最終形は、IVRや「AI to AI」のように、テクノロジー同士でやり取りする形です。
プッシュ型、そのアウトバウンドする側だけがAIを活用しても、やっぱお店側がAIできてないと結局人が対応しなきゃいけない。
そのためCEOセオさんは、まず飲食店側にAIを導入して受け付けの入り口を作ることが重要だと考えています。店側に入り口を作ってからであれば、AI電話は非常によいサービスになりうるという見立てです。
かける側だけがAIを使い、受ける店舗は人が対応する。仕込み中の負担や予約の取りこぼしが起きる
店側にもAIを導入して入り口を作り、AI同士でやり取りする
CEOセオさんはDuplexの発表を2018年と訂正し、それでも10年近く取り組みが続いてきたと振り返ります。その間、人間による電話代行のテストなども行われ、開示が不十分だったことから取りやめたこともあったらしい、と話しています。
最後にCEOセオさんは、「瀬尾さんには電話しちゃいけないですね」と言われることもあるが、緊急性のあることや重要なことはいつでも電話してほしい、と締めくくっています。
まとめ
GoogleのGemini電話代行は、AIだと名乗る開示や人間への引き継ぎ、回数上限、オプトアウトなど、受ける側にも配慮した設計で始まった初期段階のサービスです。CEOセオさんは、かける側の便利さだけでなく受ける店舗の負担まで考え、最終的にはAI同士でやり取りできる形を目指すべきだと語っています。
- Gemini電話代行は米国中心の限定提供で、予約や問い合わせ、保留待ちまでAIが担う
- 冒頭のAI開示、テイクオーバー、回数上限、オプトアウトなど受ける側への配慮が組み込まれている
- AIに不慣れな飲食店では、間違い電話や詐欺と誤解され予約が成立しないトラブルもある
- 待ち時間の長いIVRなどには向くが、対人の飲食店予約は難しいモデルになりやすい
- 店側にAIの入り口を作り、自分と相手の両方の時短を考えることがサービス成功の鍵になる




