唐揚げ1個の給食に「牛乳なくせば?」というリプが投げかけたもの
この回のトークテーマは、AWA(アワ)の公認配信者・リムさんから届いたお便りから始まります。
先日、どこかの自治体の小学校給食のおかずが唐揚げ一つだけで物議を醸しているX投稿を見ました。そのリプ欄を見ていたら「牛乳なくせばいいんじゃね?その分のコストがおかずに回るだろ」とあって。川上さんどう思いますか?
物価高で給食の量やメニューが減っている、という話題が広がるなかで出てきた問いです。それに対して川上さんは、はっきりと立場を示します。
本当に勘弁してくれって思いながら。これは酪農家だからとかじゃなくて、子供の成長を守るため、将来の子供たちのためにという視点でも、牛乳を減らすことはマイナスしかないんです。
川上さんはこの回を、酪農家のポジショントークで終わらせず、給食制度の歴史や海外事例まで含めて考えていこうと提案します。リサーチはAIにも手伝ってもらったとのことです。
給食に牛乳が出るのは、100年以上の歴史があった
まず川上さんが整理したのは、給食制度そのものの成り立ちです。今の「当たり前」には、長い背景があります。
給食の原点は明治時代、貧困児童への慈善事業でした。戦後の復興期にはアメリカやユニセフの支援で脱脂粉乳の給食が広まり、脱脂粉乳 ── 牛乳から脂肪分を取り除いて乾燥させた粉末。戦後の食糧難の時代に、栄養補給のため学校給食で溶かして提供されましたその後1954年に学校給食法が制定されて、教育の一環として制度化されていきます。
いまでは給食の役割は、食育や地域理解、健康格差の是正、子どもの貧困対策など、どんどん幅が広がっています。牛乳はその柱の一つとして位置づけられているんですね。
なぜ毎日、牛乳なのか
では、なぜ毎日のように牛乳が出るのか。川上さんは「栄養だけの問題じゃない」と言います。
まず栄養面では、成長期に不足しがちなカルシウムやビタミンB2を効率よくとれる点が大きいそうです。さらに牛乳は鮮度が大事なので、各都道府県の乳業メーカーから届く地産地消・国産国消の教材にもなります。国産国消 ── 国内で生産したものを国内で消費すること。「地産地消」の全国版のような考え方で、食料自給や国内産業の維持につながるとされます
もう一つが提供のしやすさです。冷蔵庫に入れてそのまま出せるので、人件費や手間の面でも効率がいいと川上さんは説明します。
牛乳1本で成長期に大切な栄養素をまるっと補えて、これを他の食材で代替しようとすると、調理の手間もコストも桁違いにかかってしまうんです。
牛乳をやめたら、本当におかずは増えるのか
ここでお便りの核心、「牛乳をやめればおかずが豪華になるのか」に踏み込みます。
牛乳のコストは1本あたり約50〜60円。今は値上がりで100円近くになることもあり、給食費の3分の1にあたると言われる自治体もあるそうです。
たしかにやめれば唐揚げ1個分くらいの食材費にはなるかもしれません。ただ現実には調理の手間や保存、衛生管理、人件費もかかるので、一概に豪華になるとは言えない、と川上さんは指摘します。
給食費は誰が負担してきたのか、という本質的な問い
話は「牛乳かおかずか」から、「そもそも給食費を誰が負担しているのか」へと移っていきます。
日本では、給食の食材費は保護者が負担するという原則が70年近く続いてきました。でも、その結果として起きてきた問題もあると川上さんは挙げます。
たとえば過去には、給食費の滞納が年間約24億円にのぼり、教職員が集金や催促に追われる、経済状況による食の格差が生まれる、子供が食べる権利を失う、といった課題があったそうです。今は改善されてきている部分もある、とも添えられています。
こうした課題を背景に、最近は給食を無償にして国が管理すべきではという意見も増えている、という流れです。
韓国は無償、日本は?海外事例から見える論点
川上さんは海外の事例も紹介します。給食のあり方は、国によってかなり違うんですね。
たとえば韓国では、ほぼ全ての児童に無償で「新環境給食」(日本でいうオーガニック)が提供され、それが地元の農業支援や地域振興にもつながっているそうです。アメリカやスウェーデン、フランスでも、無償化や所得に応じた負担が進んでいます。
ただし無償化にはメリットも懸念もある、と川上さんはバランスを取ります。日本で全員分を無償にすれば、年間4000〜5000億円規模の財源が必要になるといいます。
さらに、食材費が削られて質が落ちる、地域性が薄れて画一的な献立になる、保護者の関心が薄れる、といった議論もあるとのこと。まさに「量の平等か、質の多様性か」という難しいバランスの問題です。
牛乳は「余分」じゃない。酪農家が現場で見たもの
一通りの論点を並べたうえで、川上さんは読者(リスナー)に問いを投げかけます。
牛乳を外すか、給食を見直すか。食を切り詰める発想ではなく、子供の成長をどう守るかという視点で考えてほしいんです。
コストは浮くかもしれない。でも、それが教育的にも健康的にも将来的にも本当に子供のためになるかは、慎重に考える必要がある、というのが川上さんの立場です。
ここからは、川上さんが現場で実際に聞いた話が続きます。学校の栄養士さんと話したとき、「本当に牛乳に助けられている」と言われたそうです。
その栄養士さんは今、個人で子供食堂もやっているそうですが、学校を離れて子供食堂で栄養を賄おうとすると、乳製品が高くてコストがかさむ。だからこそ「学校給食ってすごいことなんだ」と改めて感じた、という話でした。
さらに川上さんは、学校給食の牛乳が値上がりしないよう、酪農家側が努力している現場も明かします。島根県では入札で1年間の価格を取り決め、その間に上がった分は酪農団体や乳業メーカーが負担しているそうです。
学校給食の牛乳は、値段を上げないように本当に努力してるんですよ。
「高い牛乳は既得権益だ」という声もあるけれど、そうではない、と川上さんは言います。児童数の多い学校ならまだしも、島根には隠岐島のような離島もあります。
運送費もかかり効率も悪い端の学校にまで、きちんと牛乳が届くように努力している。こういう部分も知ってもらえたら嬉しい、というのが現場からのメッセージです。
一方で、岡山県では自治体が給食費を負担する動きの中で、過疎地などでは牛乳が乳飲料に変わったり、牛乳をなくして給食費を減らそうという議論も出ているそうです。だからこそ、大人がしっかり考えてほしい、と締めくくります。
まとめ
「牛乳をなくせばおかずが増える」という一言の裏には、給食制度の歴史や財源、地域格差、そして酪農家の努力といった、いくつもの論点が重なっています。川上さんは酪農家として、でもそれ以上に「子供の成長をどう守るか」という視点から、この問いを一緒に考えてほしいと呼びかけていました。
- 給食の牛乳は栄養だけでなく、食育・地産地消・提供のしやすさなど複数の役割を担っている
- 牛乳をやめても調理・保存・衛生・人件費がかかり、単純に「おかずが豪華になる」とは言えない
- 論点は「牛乳かおかずか」ではなく、「給食費を誰がどう負担するか」という制度の話につながる
- 学校給食の牛乳は、値上げを抑えるため酪農団体や乳業メーカーが差額を負担して支えている
- 離島や過疎地にまで牛乳を届ける努力があり、給食は教育・栄養・社会保障が重なった仕組みだと川上さんは語る


