そもそもゲノミック検査ってなに?
今回の配信は、Instagramに届いた酪農家仲間からのDMがきっかけです。川上さんいわく、名前まで実名で送られてきたガチの質問だったそうです。
ゲノム検査、国内と国外どっちがいいの?
まずは前提として、ゲノミック検査そのものの説明から入ります。牛の毛根や耳の細胞を取って、その牛のDNAを調べる検査です。
DNAを調べることで、その牛が将来どれくらい乳を出すのか、健康状態はどうかといった能力を予測できます。つまり、より効率的な品種改良ができるようになるというのが最大の狙いです。
検査をすると、どの子牛が優秀でどの牛がそうでもないかがわかります。そのため「次の後継牛はどの牛から取るか」といった判断に使えるわけです。
さらに、乳量が多い牛が欲しい、繁殖性がいい牛がいい、体が大きい牛・小さい牛がいい、といった希望に合わせて、自分で品種改良の方向を選べるのも特徴です。
日本でやるとどうなる?家畜改良事業団の検査
ここからは具体的なサービスの比較です。国内で提供しているのは、家畜改良事業団の1社だけだと川上さんは話します。
これは日本国内で飼われている牛の群れを基準にしたゲノム評価です。海外はもともと母数がとても大きいのですが、日本は日本の牛のデータや、海外から買ったデータで母数を増やしている状況とのこと。
検査費用は1頭あたりおよそ1万円から2万円ほど。ただし、地域や県によっては補助が出て半額や無料になることもあるそうです。
気になる人は、自分が住んでいる地域の登録協会や牛群検定協会などに問い合わせてほしい、と川上さんは案内しています。
国内検査のポイントは、データが積み上がっていくところです。育成牛や未経産牛の段階でデータが出て、その牛が出産すると検定成績が出ます。
そこにゲノムの数値も加わることで、産んだ後もデータが残り続け、その牛の「信頼度」という正確性を示す数字にも活用されます。若い牛のデータを中心に、日本国内でデータが蓄積されて信頼度が上がっていくという流れです。
一方で、海外の検査だと組める「メイティングシステム」という交配プログラムについては、国内にはボスシステムというものくらいしかない、と川上さんは指摘します。
ボスシステムは、牛群検定に加入している農家なら無料で使えるサービスとのこと。こちらも家畜改良事業団に問い合わせるとよさそうです。
川上さんが使う海外検査「ABS」の強みは近交係数
ここからは海外の検査サービスの話です。川上さん自身が使っているのが、ABS(オールジャパンブリーダーズサービス)のものです。
ABSはGMSという交配プログラムと連携できて、ゲノムデータをもとに最適な交配計画が立てられます。
川上さんが一番メリットに感じているのが「ゲノム近交係数」です。ふつうの近交係数は父母や祖父母の血統から計算しますが、ゲノム近交係数は実際のゲノム配列から計算されるので、より正確な数字になるといいます。
血統だけで見ると、受精卵から生まれた子や兄弟牛は同じような近交係数になります。ところがゲノムで調べると、同じ兄弟でも高い牛と低い牛が出てくるそうです。
だからこそ、より細かく交配を決められるというわけです。
費用はABSだと1万円いかないくらいで、地域によって差はあるものの1万円前後が目安。そこにプラス150円から200円ほどでGMSの交配システムも使えるので、川上さんは「お得だ」と話しています。
費用はですね、今ABSが1万いかないところだと思いますね。そこにプラス150円、200円ぐらいで交配システムのサービスに利用可能だったりするので、僕はお得だなと思っております。
海外で今販売されているゲノムヤング(若い種雄牛)も交配に入れられるため、川上さんはずっとこのGMSを使い続けているそうです。
アルタジャパンと野沢組、それぞれの特徴
海外系の検査はほかにもあります。ひとつがアルタジャパンで、こちらはネオジェン系の、日本ではエリートジェネティックスが扱っているアメリカのゲノム検査です。
費用は、A2の遺伝子など詳細な項目を入れると1万5000円から2万円ほど。アルタにも「アルタGPS」という繁殖プログラムがあり、ABSのGMSと同じように交配プログラムが組めます。
ここで川上さんが面白いことを話しています。アルタでやってもABSでやっても、検査自体はネオジェンという同じ場所で行うため、出てくるデータは同じだそうです。
アルタでやろうが、ABSでやろうが、検査するところはネオジェンっていうところでやるので、出てくるデータは一緒なので、これがその交配プログラムをどっちを使うかってとこですね。
つまり選ぶ基準は「どの交配プログラムを使うか」。自分がふだん使っている精液がABS系ならABS、アルタ系ならアルタ、と選べばいい、という考え方です。
もうひとつが野沢組のサービスです。カナダ・北米の手法を導入し、ゾエティスのクラリファイドプラスを使っているとのこと。費用は同じく1万円から2万円前後です。
クラリファイドプラスは、乳房炎や繁殖障害などの疾病リスクも出るのが特徴です。免疫力なども調べられると聞いたことがある、と川上さんは話していました。ただ自身は使っていないため詳細まではわからないとのことです。
野沢組も交配プログラムを組んでくれて、自分の好きな重み付け(カスタムインデックス)で設計してもらえます。地域に営業マンがよく来てくれて説明が親切、といった場合は野沢組が選択肢になりそうです。
結局どっちがいい?国内と海外の選び方
最後に川上さんが全体をまとめています。まず国内でやる場合のメリットです。事業で使えたり補助金があったりするほか、これまでのNTPという日本のものさしがそのまま使えます。
日本国内でずっと使われ続けるデータなので、誰でも使いやすく親しみやすい数値になっているのが強みです。一方でデメリットは、交配プログラムがボスシステムくらいしかなく、より詳細なメイティングが難しい点だといいます。
反対に海外の検査は、検査項目が豊富です。DWP・ネットメリット・チーズメリットなど、いろんな重み付け(カスタムインデックス)があるので、自分が作りたい牛群に合わせて設計しやすいのが魅力です。
販売会社に相談すればすぐに交配プログラムを作ってくれるので、頼みやすいところに依頼するのがおすすめ、とのこと。料金はどれもほとんど差がなく、あっても数千円前後だそうです。
ただし海外検査の注意点として、TPIなどの重み付けや総合評価が国内とは違い、母数もアメリカやカナダの牛を対象にしている点が挙げられます。日本とは少し違うものさしになるので、判断基準としてどうかを考えて選んでほしい、という話でした。
NTPという日本のものさしが使え、補助金が出ることも。データが国内に蓄積されて親しみやすい反面、交配プログラムはボスシステムくらいに限られる
検査項目が豊富で、重み付けを選んで作りたい牛群を設計しやすい。ただし総合評価や母数が海外基準で、日本とは物差しが少し違う
川上さんは「10分、15分で説明するのはとても難しい」と前置きしつつ、わからなければまたDMしてほしいと締めくくっています。
各販売会社に聞くとですね、うちのやつが一番ですよって、それは言いますから、どこも。まあいろんなやつ見て、使ってみてどうなのかっていうのはお話しできるかなと思います。
まとめ
ゲノミック検査は、牛のDNAから将来の能力を予測して品種改良に活かす技術です。国内と海外では検査の中身は近くても、使える指標や交配プログラム、価格の細部が異なります。自分の牧場がどんな牛群を目指すか、どの精液会社と付き合っているかで選ぶのが現実的、というのが川上さんの結論でした。
- ゲノミック検査は毛根や細胞から牛のDNAを調べ、乳量や健康、繁殖能力などを予測する技術
- 国内は家畜改良事業団の1社で、NTPという日本の物差しと補助金が強み。ただし交配プログラムはボスシステムほぼ一択
- 海外はABS・アルタ・野沢組などがあり、検査項目や重み付けが豊富で作りたい牛群を設計しやすい
- ABSのゲノム近交係数は血統だけより正確で、兄弟でも差が見えるのが川上さんお気に入りのポイント
- 費用はどれも1万〜2万円前後で大きな差はなく、精液会社や営業対応で選ぶのが現実的




