雨と高温、牛が餌を食べない日の牧場から
配信はまず、その日の天気と牛の様子から始まります。6月25日、雨続きで湿度が高く、気温は32度。川上さんいわく、こんな日は牛が餌をまったく食べないそうです。
生きてるだけでありがたいと話すほど、夏場の暑さは牛にとってこたえるようです。
お腹にガスが溜まるなど不調も出やすく、獣医さんに診てもらう予定だと語られます。この日は繁殖検診の対応や餌屋さんとの月1回のミーティング、液体窒素の受け取り、堆肥を動かす作業などが控えているとのことでした。
「牛乳が取れすぎて余ったら?」というリスナーの質問
今回の本題は、配信アプリ「SPOON」から届いた質問です。
牛乳が取れすぎて余ってしまった場合、どうしているのですか?
この質問を受けて川上さんは、酪農家ひとりひとりが自分で牛乳を売っているようなイメージを持たれているのかもしれない、と気づいたそうです。
牛乳が余るってどういうこと?っていうところから話していこうかなと思います
そこで、そもそも牛乳が余るとはどういう状況なのか、というところから話が始まります。
牛乳が余るのはどんなとき?
牛乳が余りやすいのは、需要がぐっと落ち込むタイミングです。代表例として挙げられたのが、学校給食が止まる長期休みと、コロナ禍でした。
冬休みや夏休みで学校給食がなくなると、その分の牛乳の行き先が減ります。コロナ禍では飲食店の営業が制限され、学校も止まったため、牛乳の需要が一気に落ち込んだと振り返ります。
需要が落ちて余ってしまった牛乳は、そのまま放置されるわけではありません。長く保存できる形に加工していく、というのが基本の対応です。
余った牛乳は加工して保存、でもコストの壁がある
余った牛乳は、脱脂粉乳やバターなど長期保存できる形に加工されます。保存がきくのは大きなメリットです。
一方で、加工にはひと手間かかるため、加工賃としての費用が発生します。
この費用が重く、中小の乳業メーカーだと赤字になる可能性もあると川上さんは話します。在庫を抱えれば倉庫も圧迫するため、そこもデメリットになるそうです。
生産調整と、過去に起きた牛乳廃棄
コロナ禍では、余りすぎた牛乳への対応として国が補助金を出したり、酪農家が自主的に牛を減らしたりしたと語られます。こうした需要に合わせて生産量を減らす動きは「生産調整」と呼ばれます。
そして、かなり過去の話として北海道での牛乳廃棄のニュースにも触れます。売り先がなく、出荷した牛乳をほ場に撒いたり、処理施設で処理したりしたケースです。
ただ、これは赤字になるだけでなく、流通の信頼も落ちてしまうため、本当に避けなければいけないことだと強調されます。
これ以降、全然牛乳は、あの酪農団体の牛乳は捨てることはないですね。全て出荷されたものは商品になって売られているような感じですね
酪農家はひとりで牛乳を売っていない
ここから話は流通のしくみへ。川上さんは、酪農家ひとりひとりが自分で牛乳を販売しているわけではない、と明かします。
各地区にある「生乳販連」という組織が、需要と供給のバランスを見ながら牛乳を流通させているそうです。
例えば関東は人口が多く消費も多い一方、生産量が多いのは北海道です。北海道の牛乳は道内だけでは処理しきれないため、関東へと運ばれます。
その運搬に使われるのが、牛乳をタンクで運ぶ専用の船です。川上さんは「ほくれん丸」という名前を挙げ、検索して見てみてほしいと紹介します。
生産が多い地域
北海道など。道内だけでは処理しきれない量の牛乳が搾られる
専用の船・輸送で運ぶ
ほくれん丸などで、牛乳を消費地へ運ぶ
消費が多い地域
関東や大阪などの都市部。酪農家は少ないが消費が多い
24時間365日、どこでも牛乳が買える理由
都市部は酪農家が少なくても消費が多いため、各都道府県から牛乳を運んで需要を満たしています。つまり牛乳の流通は、個人ではなく全国団体で図られているというわけです。
この全国のつながりは、災害時にも力を発揮します。地震や水害、台風などで道路が通れず、その地域の酪農家が出荷できないときは、別の地域から牛乳を運んで補うそうです。
コロナや学校給食の停止のように全国的に需要が変わったときも、九州から西日本、西日本から関東、関東から東北へと、ピストンで押し出すように全国で牛乳を流通させることがあると説明されます。
だからこそ、消費者側の飲み方も大切だと川上さんは話します。夏は消費が伸び、冬は落ちる傾向があるそうです。
そこで、冬は成分無調整牛乳をしっかり飲み、夏は牛乳に加えて脱脂粉乳など加工されたものも飲んでもらえるとありがたい、と提案されます。
消費者にできること、そしてお知らせ
家に余ったスペースがあれば、ロングライフ牛乳やスキムミルクを保存食として買っておくのもおすすめだといいます。
そうすることで牛乳の需給バランスが取りやすくなり、酪農家の利益につながり、結果として税金で負担している補助金の額が減るかもしれない、という流れが語られます。
消費者一人一人が協力していただけたら、牛乳のことも考えて飲んでいただけたら嬉しいなというところですけども
とはいえ、川上さんが一番に挙げるのはやっぱりシンプルな願いでした。
最後に、全国団体に所属しない「アウトサイダー」と呼ばれる動きにも触れます。独自のルートで牛乳を売る組織のことで、プライベートブランドの安い牛乳などがこれにあたるそうです。業界内では問題にもなっていると、率直に語られました。
配信の締めくくりには、いくつかのお知らせが紹介されます。ハッシュタグ「牛乳で歌おう」の投稿キャンペーンや、6月30日発売の川上牧場初のKindle本「酪農未経験者のために」です。
このKindle本は、酪農を夢見ていた子どもの頃の自分に向けて「こんな本があったらよかったな」という思いで作った1冊だと語られました。
まとめ
リスナーの素朴な質問から、牛乳が余ったときの加工や生産調整、そして全国でつながる流通のしくみまでが、島根の牧場から語られた回でした。飲み方をちょっと意識するだけでも、酪農を支える一歩になるようです。
- 牛乳が余るのは、学校給食の長期休みやコロナ禍など需要が落ち込むときで、脱脂粉乳やバターに加工して保存する
- 加工には費用がかかり、中小の乳業メーカーは赤字になることもある
- 酪農家はひとりで牛乳を売らず、生乳販連などが全国規模で需給を調整している
- 北海道から関東へ運ぶ専用船「ほくれん丸」など、地域間で牛乳を運び合い、災害時も補い合う
- 冬は成分無調整牛乳、夏は加工品もあわせて飲むと需給バランスを支えやすく、何より継続して楽しく飲むことが一番




