牛乳に「A5ランク」はあるの?
この日の配信で取り上げられたのは、配信アプリSPOONに届いた1つの質問でした。
黒毛和牛のA5ランクのように牛乳にも格付けはありますか?
A5ランクといえば高級なお肉の代名詞として、消費者にもすっかり浸透していますよね。でも、スーパーに並ぶ牛乳の美味しさに、ランク付けみたいなものはあるのでしょうか。
川上さんの答えは、まず結論からでした。
ただし、これで話が終わるわけではありません。成分や衛生指標、風味、生産方法といったいろんな評価軸で、品質の差は明確に存在しているとのことでした。
牛乳パックの裏を見るとわかること
まずわかりやすいのが成分の違いです。川上さんは、聞いている人に牛乳パックを手元に出してみるよう呼びかけます。
パックの裏の表示表には、乳脂肪分や無脂肪固形分がパーセントで書かれています。一般的な牛乳だと、乳脂肪が3.0%以上、無脂肪固形分が8.0%以上あたりが基準になっているそうです。
これが「特選牛乳」になると、乳脂肪3.5%以上、無脂肪固形分8.5%以上という表示に上がってきます。
ただし、ここには注意点があるとのこと。特選という表示は少し曖昧で、加工牛乳で成分を上げて「特選」と書かれているものもあるそうです。成分無調整牛乳で特選と書かれているものが、いわゆる本来の特選にあたる、という見方が紹介されました。
乳脂肪3.0%以上/無脂肪固形分8.0%以上あたりが基準
乳脂肪3.5%以上/無脂肪固形分8.5%以上に上がる
さらに上には「特別牛乳」というものがあります。ジャージー種など品種が違うものや、こだわりの酪農家から絞った牛乳を厳選してパック詰めしたものに付くことがあるそうです。
特別牛乳には、さらに高い成分と厳格な衛生基準が求められます。見た目やグラスに注いだ色ではあまり違いがわからなくても、飲んだときのコクや甘み、香りにしっかり差が表れる、と話されていました。
消費者には見えない「衛生レベル」の世界
続いて、なかなか消費者の目には触れない部分として、衛生レベルの話が出てきます。
牛乳の品質には、細菌数や体細胞数という数字があり、酪農家が牛乳を出荷・販売するときの価格にも影響するそうです。
これらの数字は、いろんな酪農家の牛乳が混ぜられてパックに詰められる過程で日々変化するため、表示表には書かれません。ただ、酪農家のバルク牛乳の定期検査などには記されているとのことです。
「細菌が入ってるの?」と驚く人もいるかもしれませんが、生き物である以上、少々の細菌はあるといいます。とはいえ、そこは安心してほしいと川上さんは言い添えます。
殺菌をして、加熱殺菌をして、限りなくゼロにして販売してありますんで、封を開けない限りはしっかりと衛生管理はされてます。
日本の基準では、細菌数が万単位以下という厳しい水準が求められているそうです。
ヨーロッパやアメリカでも体細胞数や細菌数で品質が区分されていますが、日本の衛生基準は世界と比べてもかなり厳しい状況にあると話されていました。
インバウンドで来日した外国人が「日本の牛乳は美味しくて安い」と買い占める、という話も、この高い衛生基準を背景にしたものだといいます。
A2ミルクやグラスフェッド、生産方法が生む個性
もう1つの評価軸が、生産方法の違いです。最近増えてきた特色ある牛乳が紹介されました。
代表的なのが、A2ミルク、放牧酪農によるグラスフェッド、有機農法によるオーガニックといったものです。飼料や育て方にこだわった牛乳が増えてきているそうです。
A2ベータカゼインを含み、お腹がゴロゴロしにくいと言われる牛乳
牧草だけを食べて育った牛の牛乳。あっさりした味わい
有機農法で育てられた、こだわりの生産方法による牛乳
A2ミルクは、A2ベータカゼインという成分を含み、お腹がゴロゴロしにくいと言われる牛乳です。グラスフェッドは牧草だけで育った牛の乳なので、あっさりとした味わいになるそうです。
こうした牛乳は各メーカーや地域の乳業メーカーが厳選して作っているので、ぜひ探して味の違いを確かめてみてほしい、と呼びかけていました。
訓練されたプロが行う「風味評価」
最後の評価軸は風味です。なかなかわかりにくいところですが、乳業メーカーには官能調査という風味チェックの仕組みがあります。
川上さんは、京都のメグミルクの工場見学でこの現場を見たときのことを振り返ります。検査員は、検査の2週間前からタバコやお酒を摂取しないなど、かなり厳しい制約のもとで臨むそうです。
検査の二週間前は摂取しないみたいな。それぐらいこう、その官能検査に影響があることは全くしないみたいな。
そうした訓練を受けた検査員には認証制度があり、一級・二級といった格付けもあるとのこと。工場には「こういう人たちが検査しました」という掲示もあったそうです。
大手乳業会社では、訓練された人が味・香り・口当たりなどをチェックする試験を何重にも実施している、と説明されました。
格付けはなくても、選ぶ楽しみはある
ここまでを川上さんはこうまとめます。牛肉のA5ランクにあたるものは牛乳にはありません。けれど、その役割はほかのかたちで担われている、という見方です。
特選や特別牛乳、A2ミルクや有機農法、そしてご当地ブランドの牛乳などが、それぞれの評価軸で品質や個性を示しているというわけですね。
これから夏休みに入るので、旅行先ではぜひご当地牛乳を飲んでみてほしい、と川上さん。地域によって味がかなり違うので、その違いも楽しんでほしいと締めくくりました。
まとめ
牛乳には牛肉のA5ランクのような単一の格付けはありません。でも、成分・衛生・生産方法・風味という複数の軸で、品質や個性の差はしっかり存在しています。パックの裏や産地に少し目を向けるだけで、牛乳選びはぐっと楽しくなりそうです。
- 牛乳に単一的な格付けはないが、成分・衛生・生産方法・風味など複数の評価軸で品質差は明確に存在する
- 成分は牛乳パックの裏で確認でき、特選は乳脂肪3.5%以上・無脂肪固形分8.5%以上が目安
- 細菌数や体細胞数といった衛生指標は表示されないが、日本の基準は世界的に見てもかなり厳しい
- A2ミルクやグラスフェッド、有機農法など、生産方法にこだわった個性的な牛乳も増えている
- 旅行先のご当地牛乳は味の違いが大きく、飲み比べる楽しみがある




