リスナーからの質問「牛舎で整えたい設備は?」
今回のお便りは、TikTokのプロペラファクトリーさんから届いた質問です。
牛舎で整えたい設備はありますか?高速のWi-Fiを設備したい、などありますか?
川上さんの答えは「めちゃめちゃあります」と、テンション高めです。Wi-Fiは先日AIを使って必要な機材を調べ、自分で設備したそうです。
ただ、川上さんが本当に困るのはWi-Fiではないと言います。
Wi-Fiはなくても、牛に餌もあげられますし、乳搾りもできます。一番困るのは、日常で使う設備なんですよね。
そこで今回は、設備投資できるお金があったら何から買いたいのかを、リサーチした現実的な金額とともに紹介していきます。
壊れたら仕事が止まる、優先順位トップ4
川上さんが挙げた優先順位は、次の4つです。
- 1位 自動給餌機(自動餌やり機)
- 2位 搾乳設備の更新
- 3位 ホイールローダー
- 4位 ダンプ
理由はシンプルで、この4つは壊れると毎日の仕事そのものが止まってしまうからです。牛は365日、餌を食べて水を飲み、搾乳も毎日あります。
機械が壊れたので今日は休みますか?できません。ここが酪農の設備投資の難しいところですね。
牧場の機械は「便利になるためだけの投資」ではない。そこを知ってほしい、というのがこの回の入り口です。
自動給餌機は「もう一人の働き手」を雇う感覚
まず1位の自動給餌機です。川上牧場のものは、廃業した酪農家から中古で購入したもので、すでに30年以上が経っています。
川上さんが公的資料を調べたところ、目安は300万円から850万円程度。別の資料では1000万円からというものもあったそうです。
さらにレールや電気工事、牛舎の改修まで含めると、ざっくり1000万円以上の投資になる可能性があると話します。
ただ、これは贅沢品ではないと言います。餌を運んで牛に配り、給与量を調整する作業を毎日こなすのは本当に大変だからです。
自動給餌機を入れると、給餌作業の90%が削減できるという試算も紹介されています。これは本当にそうだと思います。
一人で牧場を回している川上牧場にとっては、機械を買うというより「もう一人の働き手を雇う」感覚に近いそうです。
搾乳設備は「壊れたら終わり」、更新すべきか
続いて2位の搾乳設備です。こちらも先代のお父さんが入れたもので、やはり30年以上使っています。
メーカーはデラバルデラバル ── 搾乳機などを手がける酪農機器メーカー。話の中の「アルファラバル」はその前身にあたる会社として語られています。の前身にあたる会社のもの。ただ、つなぎ牛舎の設備はもうアフターメンテナンスを見ないと言われてしまったそうです。
パーツが壊れたら、もう買い替え時ですよと言われて。国内で残ってるものしかないんですよ。壊れたら終わりですよね。
更新にかかる費用も高額です。川上さんが紹介した事例では、金額感がこう整理されます。
どうせ更新するなら搾乳ロボットに、という話にもなりますが、ロボットだけでは済まず、牛舎の改修が必要ならさらに増えます。
もうこの辺から、電卓を叩くのが嫌になってきて。入れたとして返せるのか、という話になってきますね。
ホイールローダーとダンプ、「運ぶ」設備の話
3位はホイールローダーです。餌を動かしたり、堆肥を扱ったり、資材を運んだりと、牧場では本当によく使う設備です。
牧場にとっては、巨大な手みたいなものですね。
価格はサイズや新車・中古、アタッチメントで差が大きいため、川上さんは特定の額は断言しませんでした。ただ、小型・中型でも新車なら数百万円から1000万円前後まで視野に入るそうです。
川上牧場のものはお父さんの世代から使っていて、こちらも30年もの。毎年どんどんパーツが壊れてきていると言います。
4位はダンプです。牧場は堆肥や資材など、意外と運ぶ仕事が多いのだそうです。
ダンプも2トンクラスで、新車・中古や架装の内容で価格差が大きいものの、これも数百万円規模の投資になります。
この4つだけでも、簡単に数千万円の世界になってくるというわけです。
間乳舎に暑熱対策、「新しい牛舎を建てた方が…」
それでも川上さんの「欲」はまだ続きます。次に欲しいのが間乳舎です。
今の川上牧場には間乳牛舎がなく、つなぎ牛舎につないでいるため、その分だけ乳搾りできる場所が圧迫されてしまうそうです。
まだ搾れるのになぁと思いながら、間乳牛を次の牛が出ていったりする。だからちょっと欲しいなと思ってますね。
さらに今年の猛暑を受けて、暑熱対策の設備投資もしたいと言います。換気扇やミスト、給水ポンプに加え、川上さんが特に気になっているのが屋根からの熱対策です。
大阪万博で使われた、宇宙開発由来で日光の9割ほどを遮る遮熱シートを屋根につけてみたいのだとか。これも1000万円まではいかないものの、数百万円クラスになりそうだそうです。
こうして更新したい設備を並べていくと、川上さん自身がこう思ってしまいます。
もうこれは、新しい牛舎を建てた方がいいんじゃないかって思いません?
ただ、新築になると桁がさらに変わります。農畜産業振興機構が紹介する牧場では、ロータリーパーラー導入時に建物だけで2億2000万円、バルククーラー1000万円を投資しているそうです。
規模が違うのでそのまま当てはめられませんが、牛舎を建てるという投資は億単位になり得ることがわかります。
牛乳の値段には「明日の牛乳を作るお金」が入っている
ここまで聞くと、酪農がものすごく設備産業だとわかってきます。餌を作る・運ぶ設備、搾乳や冷却、糞尿処理、牛舎、車両、電気、水道。その上に牛乳生産が成り立っています。
しかも一度買えば終わりではなく、機械には寿命があり、修理も更新も必要です。だからこそ川上さんが伝えたいのは、利益の使い道の話です。
仮にもし今年儲かって利益が出ても、それを高級車や海外旅行に使うわけではない、と川上さんは言います。
10年後に搾乳設備を更新したり、牛舎を直したり、次の世代が働ける環境を作る。そのためのお金を残しておかないと、牧場そのものが続かないからです。
川上さんには子どもが3人いて、大学の費用も気がかりだと言います。それでもそれ以上に、次の設備に投資できる利益を残させてほしい、というのが本音です。
スーパーやコンビニで牛乳を見て、200円、300円を高いと感じる人もいるかもしれません。でもその中には、明日の牛乳を作るためのお金も入っている、と川上さんは話します。
牛にも設備にも人にも投資できて、10年後、20年後にも牛乳を作れる。そこまで含めて牛乳の価格なのではないか、と締めくくります。
さらに物価高で設備も資材費も燃料代も電気代も上がっている一方、牛乳の値段は変わっていない、という現実も語られました。この状態が続くと、酪農家はどんどん減ってしまうと川上さんは危機感を口にします。
まとめ
リスナーの「牛舎で整えたい設備は?」という質問から、酪農がいかに設備の上に成り立っているかが、具体的な金額とともに語られた回でした。牛乳一本の後ろにある設備を、ちょっと思い出してみたくなりますね。
- 欲しい設備の優先順位は、自動給餌機・搾乳設備・ホイールローダー・ダンプの4つ。壊れると毎日の仕事が止まる
- 川上牧場の主要設備はどれも30年以上使っていて、更新には1台で1000万〜3000万円規模の投資になる
- 間乳舎や暑熱対策まで含めると「新しい牛舎を建てた方が」となり、新築は億単位になり得る
- 牛乳の価格には「明日の牛乳を作る」再投資のお金も含まれている、というのが川上さんの願い
- 物価高で設備も燃料も上がる一方、牛乳の値段は変わらず、酪農の持続には応援が必要

